黙ってayuを聞け

浜崎あゆみさんの歌 とりわけ歌詞の魅力を語るブログ

10thシングル『A』

4曲A面の豪華なシングル。アルバム収録の際にはかすかにアレンジが加わることも多いので、このシングルでの音源は是非ともチェックしたい。スローテンポ、ミディアムテンポ、アップテンポが全て聞ける作品だが、4曲とも一貫して陰のある歌詞になっている。また「A」はロゴ表記だが、この時点では少し違う形をしている。

発売形態は最終的に7種類ある。ここでは通常盤を含めた一番多いパターンの曲順で記事を書く。

 

 

全曲

作曲:D・A・I

編曲:鈴木直人、D・A・I

 

 

monochrome

 

「街の景色」という言葉や、都会的な空気のあるミディアムテンポの曲調の一方で、「ガラスの靴」「お姫さま」といったおとぎ話をモチーフにした歌詞も登場する。浮かれた理想と、本当に望んでいたもの、「君」はもういないという現実の交差する構成が本当に素晴らしい。いかにも感傷的な言葉は使わず、モノクロ写真のように淡々とした色合いの、抑制的な作品である。

終わり頃になると「どこかでまた出会える」「大丈夫だって頷いた」と納得したような歌詞が並ぶが、「私はとても強いから」という最後の言葉が突然ぶつっと遮られる。見え透いた強がりが伝わってくる演出だ。

前作『Boys & Girls』の高揚感とは対照的だが、「夏の匂い」とあり、夏を描写した歌でもある。

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ monochrome 歌詞 - 歌ネット

 

 

too late

 

気付けばものすごい速さで、恐ろしい場所まで来てしまっていた。もう引き返すには遅すぎる。「世界の果てでも」「生き急ぐとしても」進むしかない。前作『Boys & Girls』辺りで勢いに乗ったあゆが、そんな自分に戸惑っているように見える1曲。アップテンポなメロディーは『Boys & Girls』とよく似ているところもあるのに、ここまで内容が違う。「お金なんかじゃ 終わりは見えてる」「栄光もたかが知れてる」という歌詞には、自分に対する冷静な視線、ともすれば冷ややかさもあるようだ。

前作からの流れの中で4曲全てをダークな内容でまとめたこともそうだが、勢いだけで押さず常に自分を見つめ続けて作品を作るのがあゆの強みだろう。

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ too late 歌詞 - 歌ネット

 

 

Trauma

 

こちらもアップテンポな1曲。あゆはファンにダンスを伝授してライブを盛り上げているが、「トラウマ」というタイトルからして実は深刻な歌だ。

弱かった自分、強い自分。うれしかった顔、悲しかった顔。相反するものが歌詞に多く登場する。基本的にはネガティヴな方に比重が置かれていて、ポジティヴな方は強がりというか、こうありたいという理想のようにも思える。痛む傷から目をそらさず、いかに自分と向き合うか。そんな苦しみも含めて誰に打ち明けるか。痛みを包み隠さずに痛みとして書いている。

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ Trauma 歌詞 - 歌ネット

再考:『LOVEppears』(前編) 

 

End roll

 

映画の本編の後、余韻に浸りながらぼんやりとエンドロールを眺めるように、別れてしまった人との思い出を静かな悲しみと共に振り返る。スローテンポでおとなしい印象だが、歌詞においては、淡々とした『monochrome』よりももう少し感情的だ。「君はどこにいるの 君はどこへ行ったのか」「泣いても欲しがる子供のようにはなれなくて」など、言葉そのものに未練を映している。大人になると「サヨナラ」をするのが「精一杯」になり、子供のように欲しがることにこそ勇気が要るようになる――別れの悲しみが浮き彫りになる心情だ。

とはいえ、長いエンドロールもいずれ終わり、席を立って映画館を出なくてはならない。「人はうれしいもの」と信じたい主人公は、「歩いて行く」と心に決めている。強がりと言うよりは、未練や思い出は残るけれど前に進もうとするのが、この歌の歌詞に描かれた姿なのだ。

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ End roll 歌詞 - 歌ネット