黙ってayuを聞け

浜崎あゆみさんの歌 とりわけ歌詞の魅力を語るブログ

2ndアルバム『LOVEppears』(後編)

〔『LOVEppears』の記事 【前編】 【後編】

 

P.S II

作曲:桑原秀明

編曲:HΛL

 

1stアルバム『A Song for ××』収録『POWDER SNOW』のリアレンジ。タイトルは「POWDER SNOW」と「追伸」が掛かっているのだろう。

POWDER SNOW』の繊細さとは全く違い、ずっしりとヘヴィーで、曇天を思わせるような曲調だ。実際、雪が降るということは空は雲ばかりなはずで、晴れているわけがない。粉雪の美しさよりも、雲の重苦しさに目を向けたということだろうか。

歌詞もそんな曲に同調して、『POWDER SNOW』とはまた違うダークさがあり、謎めいて輪郭がはっきりしない。「過去へ向かう旅」とは何か? なぜ「記憶力と想像力」が必要なのか? 「紙きれ」や「いつかの破片」は何を指すのか? まさに想像力を必要とする。

ただ一点、「泣いてもいい」「叫んでもいい」という歌詞は、『POWDER SNOW』と違って疑問形ではなく、泣くことや叫ぶことを肯定しているらしい。この辺りがヒントになりそうだ。

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ P.S II 歌詞 - 歌ネット

 

 

WHATEVER “Dub's 1999 Club Remix”

編曲:Izumi“D・M・X”Miyazaki

6thシングル。当該記事を参照。

シングルの“Version M”をより長くしたアレンジ。

 

 

too late

10thシングル。当該記事を参照。

シングルと比べると、イントロなどにわずかな違いがある。

 

 

appears “Album Version”

編曲:HΛL

 

同時発売の11thシングル。当該記事を参照。

シングルと比べると、鈴のような音が少なくよりクールなイメージだが、全体的な印象はほぼ変わらない。このアルバムのタイトル、そしてコンセプトから言っても、中心になる作品であろう。

 

 

monochrome

10thシングル。当該記事を参照。

シングルと比べると、ギターの音が強かったり、最後のヴォーカルが遮られた後の声や音がカットされたりするなど、アレンジにわずかな違いがある。

 

 

Interlude

作曲・編曲:鈴木直人

 

インストゥルメンタル。トンネルに迷い込み、やがてすっと抜けるよう。この後、ほっとする歌が続く。

 

 

LOVE ~refrain~

編曲:鈴木直人

 

7thシングルの『LOVE ~Destiny~』の歌詞違い及びアレンジ違いで、内容は「Destiny」から少し進んだようなものとなっている(どちらを先に作ったかは別として)。過去を受け入れ「忘れない」と綴ったところから更に一歩踏み出し、「ありがとう」と感謝できるようにまでなった。「生きて行く証にすればいい」という部分は変わらず残してあり、やはりこのフレーズは核なのだと感じる。アレンジは、ピアノを利かせた切ない雰囲気の「Destiny」と比べ、ふわふわと漂うようなしゃれた雰囲気だ。

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ LOVE ~refrain~ 歌詞 - 歌ネット

 

 

Who...

作曲:菊池一仁

編曲:鈴木直人

 

子守歌のように優しい一曲。ファンの間でも人気が高い。

折に触れて自分の存在を支えてきたのは、一体誰だったのか? 思い出していく描写がとても丁寧で胸に響く。「月が泣いてた」という表現も素晴らしく、直接言わなくとも「さびしさ」、あるいは、本当は自分が泣いていたということを想像させられる。

そして「これからもずっとこの歌声が あなたに届きます様にと」という祈りは、『A Song for ××』の『Present』で見せたストレートな感謝とはまた方向性の違う、ファンへの想いを感じる。離れていても歌声が届いてほしい――メロディーもヴォーカルも声高に叫ぶと言うよりはむしろ静かだが、確実に聞き手に染み渡るだろう。

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ Who... 歌詞 - 歌ネット

 

 

kanariya

作曲:星野靖彦

編曲:CPM-Marvin

 

『Who...』が終わった後、再生を続けていると流れるシークレットトラック。

R & B調の曲は、この頃のあゆ作品としては珍しい。メランコリックなギターと重厚なコーラスが絡み合うサウンドとなっている。カナリヤの美しい声は有名だが、この歌は西條八十の「かなりや」のように、歌えないカナリヤがテーマだ。もっとも、西條のカナリヤは「唄を忘れた」のであって、あゆの「声を押し殺した」のとはかなり事情が違う。

「なけない」のではなく「泣かないと決めただけだったのかもしれない」……「なく」を組み合わせたレトリックが意味深である。泣かないために、鳴けなくなって(歌えなくなって)しまったということだろうか。歌詞を書き、懸命に歌っているはずのあゆが、よりにもよって声を押し殺すカナリヤの姿を描いたのはなぜ? 2曲穏やかに続いた上で、それも直前まで「この歌声があなたに届きます様に」と歌った上で、最後にダークな作品を隠しておいたあゆの胸中とは? 「早く 気付いて いたなら もっと…」という終わりが不穏な謎を残す。

後に12thシングルとして発売。

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ kanariya 歌詞 - 歌ネット

 

 

再考:『LOVEppears』(後編)