ℳ
作曲:CREA
編曲:HΛL
冬を歌ったあゆ作品の中でも、そしてあゆ作品全体でも、代表格として君臨する楽曲。「M」の文字はロゴ表記。
作曲者の「CREA」はあゆが作曲を手掛ける際の名義であり、「CREA」としてはこの作品がデビュー作になる。美しさが際立つ穏やかな始まりから、徐々に激しさを増し、感情が昂るロックへと変わっていく。サビが終盤に集中する変則的な構成は、『For My Dear...』『vogue』『SURREAL』などこれまでにもいくつかあるが、それを初めての作曲で挑戦しているところがすごい。その上最後の最後はAメロで締め、独特な余韻を残している。「MARIA」で始まる特徴的なサビ、HΛLさんの持ち味である音を輝かせるようなアレンジ、ジャケット及びPVでの白いドレスの神々しいあゆの姿、全てが最高の組み合わせで鮮烈な世界観を作り上げている。
あゆの歌には、個人的なエピソードから「きっと誰もがそうだ」と世の中全体に広げるレトリックが多く登場するが、『M』は逆に自分個人の事は陰に隠れ、どこかにある普遍的な出会いと別れを歌う。さながら聖母マリアが人々を見守る視点そのもののように。恋が始まったり終わったりなんて俗っぽい事と、「聖母」のイメージとを見事に融合させたあゆのセンスが光る。どれほど孤独を感じ傷付きながらも想いは止められず、「これが最後の恋であるように」とマリアに祈る人々の姿が、ありありと聞き手に見えるだろう。
前述したようにこの曲はAメロで終わる。その歌詞は「理由(ワケ)なく始まりは訪れ 終わりはいつだって理由をもつ…」。すっきりしたハッピーエンドではない、あえて引っ掛かりを残す終わり方だ。この恋は理由ある終わりを迎えてほしくない、という祈りを、聖母は聞き届けてくれるだろうか。
歌詞リンク:浜崎あゆみ M 歌詞 - 歌ネット