黙ってayuを聞け

浜崎あゆみさんの歌 とりわけ歌詞の魅力を語るブログ

1stミニアルバム『Memorial address』

これまであゆのリリースのペースは、1年の間に数枚のシングルとフルアルバム1枚といった速度で、4thアルバム『I am...』の頃に至っては凄まじいスケジュールだったことは既に書いた通りである。その後5thアルバム『RAINBOW』は先行シングル3枚でリリースされたが、結局はその分アルバムのリリースが早まっており、シングルもよく見れば『H』は3曲入りであったし、更に『A BALLADS』も発表したので、忙しさが緩和されたわけではないだろう。多彩な作品をそんなペースで世に出してきた事実に驚くべきだ。

今作『Memorial address』はミニアルバムである。シングル収録の曲は『&』のカップリング『theme of a-nation '03』を除いて全て収録されているため、アルバム曲の割合は少ないのだが、その内容の濃さはこれまでのアルバムと変わらない。

歌詞カードは、ゴールドの豪奢な家具を写しつつも、どこか物憂げな雰囲気を漂わせており、ページごとに違う色の衣装を来たあゆが現れる。ジャケットはあゆがこちらを見ている顔のアップで、やはり画面が金色がかっている。アルバムでは初めてDVD付き盤がリリースされた。DVDには8曲目の『Memorial address (take 2 version)』以外の楽曲のPVと、シングル30枚を記念したライブ「A museum ~30th single collection live~」のダイジェストが収録されている。

 

 

ANGEL’S SONG

作曲:湯汲哲也

編曲:HΛL

 

冒険が始まるかのような、期待感と勇壮さを持った幕開けから、アップテンポのポップスとなる。終始明るい雰囲気で、突き抜けた開放感を持った作品だ。PVは狼人間と化したあゆが悪者をなぎ倒すアクションコメディーとなっており、人間モードのあゆが平然とキュートに歌っている様子との対比がおかしみを誘う。

主人公の「私」は孤独を感じ、不安を覚えている。「ひとりぼっちなんかじゃないんだ」と無理に言い聞かせても、かえって孤独が浮き彫りになるだけ……。そんな淋しかった「私」の元に現れたのは「君」。そして「私」は「強くなりたいと願」うようになり、「守って行きたいものが出来た」と確信する。「暗闇に光射し」、「私」を安心させてくれる「君」、時に無防備にぶつかって来る姿が眩しい。「私」の目に映る「君」は、天使の羽を持っている。

孤独感をあらわにする描写は細やかで胸に迫るが、曲調が明るいため、重い気持ちにはならない。むしろ、「君」に会えたことで主人公が抱いた希望や前向きな心を感じさせる。

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ ANGEL'S SONG 歌詞 - 歌ネット

 

 

Greatful Days

29thシングル。当該記事を参照。

 

 

Because of You

作曲:BOUNCEBACK

編曲:HΛL

 

不穏なピアノが響く出だしから、ソリッドかつ重々しいハードロックに突入する。PVはあゆと女性達がハードロッカー然と激しいパフォーマンスを見せ、合い間に男性との悲惨な恋模様が描かれる。ジャケットにしろPVにしろ、あゆは肌を見せても不思議と過激にならないのだが、このPVは珍しいほどセクシャルなイメージを持ち、見る者の胸をざわつかせるだろう。時折流れる、レトロな少女漫画風のセピアのアニメーションは不釣り合いなほど可愛らしい。

「風がもう冷たくなったね 笑い声が白く滲む」という冬の描写があるが、まるで寒さが身を切るように、歌詞から痛みが伝わってくる。胸の高鳴りをいなしたつもりでも、「君」への想いは否応なく募り、手に負えなくなっていく。「君を知らなかった頃に戻れなくなりそうで」という予感から、「戻れなくなっていた」と気付き、「戻れなくなっている」現実に向き合わされる――次第にニュアンスを変えるフレーズが見事だ。最後に転調したサビの「どうして時々~」の繰り返しが激情を煽り、「どうしていつでもこんなに愛しい」と最高潮に達し、「君じゃなきゃだめで」でトドメを刺す。

あゆ作品でこれまでに綴られてきた、恋愛感情も含めた「誰かへの想い」は、温かく優しいもの、切ないものや悲しいもの、相手に対して何かを決意するものといった趣だった。今作は切なくもあるが、それ以上に激しさが際立つ。楽曲面では既にハードロック路線をものにしたあゆが、歌詞の上でも激しさを強調したのがこの作品の特徴だ。荒れ狂うサウンドと歌詞のぶつかり合いに心を揺さぶられてみよう。

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ Because of You 歌詞 - 歌ネット

 

 

ourselves

29thシングル。当該記事を参照。

 

 

HANABI ~episode II~

29th シングル。当該記事を参照。

 

 

No way to say

31stシングル。当該記事を参照。

 

 

forgiveness

30thシングル。当該記事を参照。

 

 

Memorial address (take 2 version)

作曲:湯汲哲也

編曲:tasuku

 

ボーナストラックとして収録された今作は、歌詞が表記されていない。

タイトルは「追悼の言葉」、つまりは「弔辞」を意味し、聞こえてくる歌詞は確かに亡くなった人へ向けられたものだ。丁寧に言葉を拾うと、「あなた」を亡くしてから少し時間が経っており、過去を振り返っている形である。

同じく人の死を歌った『ever free』では、主人公が「忘れない」と心に決めるくらいの余地はあった。今作の描写では、「あなた」は亡くなった際、「あたし」の側にいる人ではなかったらしく、突然訃報が来たことに「あたし」はただただ呆然とするほかなかった。「永遠の別れの冷たさ」に否応なく襲われ、まだ「夢の続きの物語」と思いたい心境で、悲痛な未練を吐き出している。「あたし」は、「あなた」に愛されていたのだと聞かせてほしかった。「嘘で構わないから」「たった一度でいいから」とまで願うけれど、もう叶わない。「あたし」と「あなた」はどのような関係だったのだろう? ひしひしと伝わる悲しみの一方で、様々な想像を掻き立てる。

タイトルのかっこ書きは、スタジオで直接通しで演奏した形で収録されていることを示す。感傷的なメロディーの楽曲は、1番ではピアノがシンプルに響き、2番の途中から唐突にハードロックに転じ、最後はまたピアノで儚げに終わる。あゆのヴォーカルも曲調に起伏を合わせ、ハードな場面では叫ぶように歌っている。いずれも「さよならね」と始まるサビは、その時によって切なくも激しく突き刺すようにも聞こえ、印象的だ。