黙ってayuを聞け

浜崎あゆみさんの歌 とりわけ歌詞の魅力を語るブログ

6thアルバム『MY STORY』(中編)

〔『MY STORY』の記事 【前編】 【中編】 【後編】

 

Liar

作曲:池本雷太

編曲:CMJK + イズタニタカヒロ

 

インストゥルメンタルを挟んでここから3曲、ダークで悲しげな曲が続く。どれも失恋を思わせる内容だが、同じ出来事を違う角度で描いたのか、それともそれぞれが全く別の恋だったのか。後には更に『Moments』という深い絶望が待ち受けるので、アルバムのこの辺りでは、悲しみの影を楽曲ごとにくっきりと形作るあゆの世界を堪能しよう。

この『Liar』はミディアムテンポのロックで、曲調の起伏が大きく、激しい部分と息を潜める部分とがはっきりと分かれている。まるで嘘と真実を交互に見せるかのように。メロディーラインも掴みどころがなく、感情に振り回される感覚だ。

歌詞には「非生産な日々」「滑稽な感覚だけに陶酔する」「普遍的なもの」など、堅いイメージの言葉が目立つ。簡潔な言い方が多い分、「私」と「君」の間に何があったのか、想像する余地は十分に広い。複雑な心情がそのまま出たと言うよりも、言葉の上では整理された印象を受ける。

それだけに、「一体どのくらい経てば解放されるの」という未練が際立つ。どれほど平静を装っても、断ち切れない想いが渦巻いているかのようだ。「精一杯愛に背を向ける事」しか出来なかったという「私」、「最後に見送った背中」に囚われたままだという。「嘘つき」なのは主人公だろうか?「」で括られた歌詞が「君」を突き放したセリフのようだが、その言葉は本心ではなかったのかもしれない。主人公の選択とその背景に想像が巡る歌である。

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ Liar 歌詞 - 歌ネット

 

 

HOPE or PAIN

作曲:湯汲哲也

編曲:CMJK

 

ロックサウンドに乗せて、可愛らしい音が、切なく物悲しいメロディーを奏でるバラード。

感傷的な曲調に相応しく、歌詞も痛切な感情を表現しており、前曲とはまた違う個性がある。「一体何を期待してるというの」「いつまで信じてるつもり」「忘れてしまえばいい」と、自分に言い聞かせるような言葉もあれば、「あの日突然言い出してごめんね」「君に何かを 残してあげる事が出来たかな」と、もうここにはいない相手に話しかける言葉もある。サビの初めに必ずある「ねぇ」という呼びかけと合わせ、想いをそのまま吐き出すような表現だ。

ひょっとして「君」がまた連絡をくれるんじゃないかと、つい期待してしまう「私」。奇跡が起きないことなど本当は分かっている。思い出すのは「最後に見た涙」、取り戻せない後悔が巡る。「私」に残るのは奇跡を願う心か、傷跡か――。いずれにしても、主人公が悲しみから抜け出すのはまだまだ先になりそうだ。

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ HOPE or PAIN 歌詞 - 歌ネット

 

 

HAPPY ENDING

作曲:湯汲哲也

編曲:CMJK

 

「幸福な結末」を描いた作品……ではない。「私には幸福な結末など似合わない」と、絶望的に悲しい結論に達してしまう歌である。『Endless sorrow』が、タイトルに「悲しみ」を入れながらも希望の見える本編だったのとは、ちょうど反対の構図だ。

歌詞は、「星達がせめぎ合う」のような詩情に溢れた描写、「人間(ヒト)でなくなる」「仮面に笑顔貼りつける」と意味深な比喩など、物語的な雰囲気だ。曲調は独特な浮遊感のある、おとなしいイメージのバラードとなっており、夜を描いた歌詞がぴったり合う。

主人公の「私」にとって「あなた」は、「人を愛する意味」を教えてくれた人。「あなた」のいない夜がどれほど淋しいかを、「私」は噛み締めている。主人公は自分に罪があると自覚しており、償いきれる日、許される日を想像してみるけれど、「幸福な結末」は思い描けない。「私」の持つ罪悪感の原因は何だったのだろう? 愛に気付いた時には、愛しい人は既にそこにいない。幸福どころか、とても残酷な結末である。

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ HAPPY ENDING 歌詞 - 歌ネット

 

 

Moments

32ndシングル。当該記事を参照。

 

 

walking proud

作曲:湯汲哲也

編曲:HIKARI

 

作曲者・編曲者共に同じであることもあってか、前曲の『Moments』からの流れのまま入って行ける、メロディアスなロックバラード。『Moments』と違うのは、全体的に前向きな雰囲気であることだろう。サビののびやかに上昇するメロディーは特に強い印象を残す。

前向きと言っても、自省的な内容も多く含んではいる。愚かな自分を守るために嘘をつき、やがてその嘘のせいで動けなくなる。言い訳しながら、現実逃避を繰り返してしまう。そんな自分の弱さを「私」は曝け出していく。そんなときに見上げた空の、なんと綺麗なことか。その綺麗さが想起させるのは、強く前向きな「君」。

「君」が遠くにいるように感じるのは、物理的に離れているからとは限らない。もしかしたら、憧れを抱いたり、人としての成熟度が自分よりも早いと感じたりする、心理的な距離かもしれない。ともかく「君」は「私」にとって、弱い自分が生きて行く上で道しるべとなる存在なのだ。「君の事を 想いました」「君の胸へ 響きますか」と、「君」が登場するサビの歌詞は丁寧な言い回しとなっており、「君」への真っすぐな敬意を表現すると共に、楽曲全体の美しさを一層引き立たせる。

PVでは、自然の造形と人工物が混ざった、箱庭のような不思議な空間で、あゆが歌っている。奇妙な行動を繰り返す人々や、別の空間にいるもう一人のあゆが謎を深める。

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ walking proud 歌詞 - 歌ネット

 

 

CAROLS

34thシングル。当該記事を参照。

 

 

 

 

今日、4月8日はあゆのデビュー日です🎤

この日からあゆの素晴らしい言葉たちが、世界に放たれていきました。

これからもあゆの歌を楽しんでいきたいものですね🎶

 

ところで、私がこのブログを始めたのはあゆの誕生日の直前ですが、作品のことを書いてくのなら、デビュー日からにした方がいいのでは、とも考えました。

しかし、ブログを書いてみようと思った頃はデビュー日からかなり過ぎてしまっていたし、次を待つのも長い、ということで、あゆの誕生日にデビュー曲『poker face』の記事を上げました。

そこから本当にあゆのデビュー日に記事を上げるまで、あっと言う間でした。

今後ともどうぞよろしくお願いします😊

 

4月8日と言えば、花祭りです。

あゆのファンかつ仏教徒という方にとっては忙しい日なのでしょうか?

あゆの作品には、『M』のようにキリスト教のモチーフを使ったものもありますが、例えば儚さを強調した「花」の描写に、無常観を漂わせていますね。

単に日本人的な美意識というだけでなく、そこにあゆの経験や感情、言葉のセンスが加わり、独特の繊細な表現となっています。

花祭りあゆの歌を合わせてみる……というのも、素敵でいいかもしれません🌸