黙ってayuを聞け

浜崎あゆみさんの歌 とりわけ歌詞の魅力を語るブログ

7thアルバム『(miss)understood』(前編)

あゆの持つ“あゆらしさ”は、それが世に広く知られるものであれ、あるいは熱心なファンこそ知っているものであれ、作品を重ね、変化や進化、挑戦を繰り返すうちに研ぎ澄まされたものである。例えばハードロック路線という一つの軸にしても、初めから前面に出していた訳ではない。だから新しい要素が見えたときには、“あゆらしい”かどうか、なんてあまり考えすぎない方がいいだろう。

その上での話だが、この『(miss)understood』は、あゆの歴史上、はっきりと異質であり、奇抜である。『RAINBOW』で初めて英語詞が出てきたことすら吹き飛ばすほどのインパクトだ。“あゆっぽい”仕上がりだった前のアルバム『MY STORY』と比べると、その奇抜さは更に際立つ。

作曲家は38thシングルの『Bold & Delicious』『Pride』を提供したGEO of SWEETBOXが中心であり、ジャケットや歌詞カードの写真がこの2曲のPV撮影時のものであるらしいことや、1曲目に『Bold & Delicious』を持ってきたことを見るに、やはりこのシングルが当時のあゆに何かヒントを与えたのかもしれない。J-popとは雰囲気を異にする洋楽の趣や、歌詞にもメロディーにも難解さを含む楽曲群は、それまでのあゆの作風とは一線を画す。ずっとあゆ作品を追ってきた聞き手ほど戸惑うかもしれないが、あゆが新しいアイディアを捕まえたのなら、共に楽しまない手はないはずだ。

「誤解」と「理解した女性」の二つの意味を込めたというアルバムタイトルは、『LOVEppears』を思い出させる。歌詞カードのあゆの写真には、白地に赤いハートマークがあしらわれている。DVD付属盤のDVDには、9曲分のPVとメイキング映像などを収録。初回特典には写真集が付き、DVD付属盤は『on my way』、CDのみ盤は『off my day』と、それぞれ内容が違う。

 

〔『(miss)understood』の記事 【前編】 【中編】 【後編】

 

Bold & Delicious

38thシングル。当該記事を参照。

DVDにはPVの他、『Bold & Delicious -SIDE STORY- (album ver.)』という映像を収録。元のPVとメイキングやオフショットの映像を織り込んだと思われる構成で、もう一つのPVと言える内容だ。

 

 

STEP you

35thシングル。当該記事を参照。

 

 

Ladies Night

作曲:GEO of SWEETBOX

編曲:CMJK

 

シンセの音が軽快に、しかしどこかミステリアスに響く。Aメロが丸ごとラップ調で畳みかけてくる構成は珍しい。

主人公の「私」にかかってきた電話。向こうの「彼女」は、「彼」とのことを打ち明けると泣き出してしまった。「私」は「彼女」をすぐさま迎えに行く。何とも心強い友情だ。友情とは言っても、『FRIEND』や『FRIEND Ⅱ』に比べれば何処かコミカルな作品である。そう言えば『FRIEND Ⅱ』では「君の辛さを知らずにごめんね」と歌われていた。今回は友達に寄り添えたようで何よりである。

「私」曰く、彼女の身の上は「他人事に思えない」のだそうだ。本当は「彼との戦い」ではなく「自分との戦い」だということも分かっている。夜が明けるまで、いや夜が明けても、ひたすら騒いでしまおう。『girlish』は女子会のような描写だったが、こちらは二人きりで盛り上がるらしい。

場面設定もさることながら、「付き合うわ」「思えないわ」という極端な女性言葉が、新しい個性を放つ。「女性」を歌った『Real me』や『my name’s WOMEN』にも、こういう言葉遣いは登場しなかった。ただ、冗談めかしているとは言え「私達は清くて 美しくて賢い」と大胆な肯定を表現し、現実を共に乗り切って行こうとする二人の姿からは、それら2曲とアプローチは違っていても、「女性」のパワーを強く感じる。

PVは、クレイジーな人々が潜むホテルの廊下を歩くあゆと、独裁者のごとく演説をするあゆとが交錯する構成。根源的な恐怖を呼び起こす描写の数々は、トラウマになること間違いなし。

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ Ladies Night 歌詞 - 歌ネット

 

 

is this LOVE?

35thシングル。当該記事を参照。

 

 

(miss)understood

作曲:湯汲哲也

編曲:tasuku

 

アップテンポの楽曲が続いた後で初めて登場するバラード。ロックナンバーで、サビはヘヴィーな印象もあるが、全体的には淡々としている。曲調も歌詞もどこか気怠く、やるせない。アルバムはここからシリアスさを増していく。

開き直ったように作り笑いをする主人公。しかし「同情がさむすぎる」と言い、中途半端な温もりよりは「見ないフリ」の方を望んでいる。「痛みは増える一方だろう ならば受け止めて行くまでさ」という歌詞は、表面的には力強くもある言葉に、虚しさや諦観、悲しみが潜んでいるようだ。

「親切そうなあの人々は 本当は何を知りたいのだろう」という部分は、やはりスターの孤独を思わずにはいられない。「好奇という名のナイフ」で、あゆは一体何度切り刻まれてきたのだろう。

ただ、歌の後半では「君は一体何が欲しいの」など質問を重ね、たった一度の人生で「君だけの道を描けばいい」と背中を押す。この「君」は誰だろう?仮に我々聞き手だとすれば、この歌の主人公は、自分のような道はお勧めしないと言っているのか?それとも、開き直るのと誇るのと半々で、これもまた一つの生き方だと言っているのか?「誤解」と「理解した女性」を同時に表すアルバムタイトルを冠したその意味も含め、考えてみたい。

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ (miss)understood 歌詞 - 歌ネット