黙ってayuを聞け

浜崎あゆみさんの歌 とりわけ歌詞の魅力を語るブログ

40thシングル『BLUE BIRD』

BLUE BIRD

作曲:D・A・I

編曲:HΛL

 

爽やかさ、明るさ、そして一抹の切なさを込めた、“夏歌”の名作である。ダンサブルなポップスの曲調は同じく夏を歌った『fairyland』にも通じるが、『fairyland』が過去と現在の歌なら、『BLUE BIRD』は行く先をより見据えた歌だ。

「グレーな雲が流れたら この空が泣き止んだら」という冒頭の歌詞は、恐らく言葉通りの意味に留まらない。「ちょっと長めの眠り」から目を覚まし、「君」が見守ってくれた「翼」を広げようとしている「僕」は、ようやく何かを乗り越えたのだろう。「居場所はいつもここにあった」という一文は、例えば「居場所がなかった」と歌った『A Song for ××』や、数々の作品に漂っていた孤独感を思うと感慨深いものがある。

「君」は「僕」に「君が笑ってくれればいい」と言い、「僕」が傷を負えば自分の翼をあげるつもりでいる。翼を差し出す描写は『Endless sorrow』や『Moments』にもあったが、この2曲のような悲劇性はあまり感じられない。「青い空を共に行こうよ」と歌う胸躍るサビは、「君」が「僕」に語った言葉で出来ている。

笑う描写と泣く描写があるが、どちらかと言えば泣く方の比重が大きい。主人公本人に関しては泣く場面しかなく、中盤でこらえていた涙を最後には流してしまう。そうして「僕」も「君」も泣いてしまったところで歌が終わる。ほとんど影のない曲調に乗せて描かれた涙は、簡単に言い表せるものではない、お互いを想う感情が溢れたものなのだろう。「青い鳥」は言うまでもなく幸せの象徴である。二人の行く先には幸福な未来が待っているに違いない。

なお、 “僕”という一人称の使用は既にあゆ作品に定着した特徴だが、この歌は実は「君」も“僕”と使っており、二人とも「僕」という初めてのパターンである。

PVでは、船の上や海辺で仲間と楽しむあゆと、対照的に砂浜でひとり佇むあゆが入り混じる。後者は潮の満ち引きでわずかな時間しか現れないという島で撮影され、「青い空」と「白い砂浜」、そして青い海という絶景が広がる。歌の爽快感をそのまま体感しているかのようだ。

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ BLUE BIRD 歌詞 - 歌ネット

 

 

Beautiful Fighters

作曲:菊池一仁

編曲:CMJK

 

チアリーディングの元気いっぱいな掛け声と足音、ホイッスルが鳴り響く、「乙女達」への応援歌。“女性”を描いたあゆ作品も、テーマは多様化しているようだ。

「おとぎ話はおとぎ話でしかない」「白い馬に乗ってなんかないあなた」というように、おとぎ話をモチーフにした表現は『monochrome』でも見られた。『monochrome』では悲しい現実を噛み締めていたが、今回は現実の中で頑張ろうとする意志が見られる。「ガラスの靴はきっと繊細すぎて この時代を駆け抜けるには ちょっと向いてない気がする」というウィットに富んだ言い回しも、おとぎ話の中で生きられないことを嘆くのではなく、強く生きていくためのヒントを示しているのだろう。

「癒されない傷口」や「欲望達は完全には満たされない」という、一見繊細な言葉も、この歌においては影や悲しみなどをそれほど感じない。「やってられないって日」があっても諦めない、「ほんの少し泣いたり」しても戦い続ける、自分を含めたそんな「乙女達」を、「we are Beautiful Fighters」とこの歌は讃えるのだ。

PVでは、あゆを含む女性達がそれぞれの仕事で奮闘する様子を描いている。上手く行くばかりではない現実を乗り切る彼女達は、夜、レーシングカーの華やかなショーで自らを解放させる。迷惑をかけてしまった相手との関係も微笑ましい。

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ Beautiful Fighters 歌詞 - 歌ネット