黙ってayuを聞け

浜崎あゆみさんの歌 とりわけ歌詞の魅力を語るブログ

41stシングル『glitter/fated』

両A面シングル。カップリングとして、8thアルバム『Secret』収録の『Secret』を再録。

ジャケットは、夜の都市を背景に水に足を浸して立つあゆで、DVD付属盤ではバストアップで映っている。DVDには、『glitter』と『fated』の両方を使用したショートフィルム『距愛 ~Distance Love~』を収録。撮影は香港で行われ、あゆと香港の俳優の余文楽さんが共演した。

 

glitter

作曲:原一博

編曲:HΛL

 

「この夏 僕達は より強く輝きを増す」……ワクワクするサビから始まる今回の“夏歌”は、スパークリングのようにキラキラと弾ける、華やかさに満ちたパーティーチューン。

「去年の今頃」、そして「遠い昔の 今頃」を振り返る主人公の「僕」は、「結局 欲しいものは 変わってない」と思い当たる。「涙してた夜」があっても「後悔」せずに進んできた「僕」には、信じる愛があるのだ。「君の笑顔」が大切で、大人になるごとに例え変わったものがあったとしても、側にいたいと願う。「僕達の未来が どこへ向かってるとしても 今をただ 大事にして」という歌詞に、見えない先を怖がらず、今を積み重ねて夢見た未来にしていこうという意志が見える。

過ぎてきた夏を思い返す歌詞から、これまでの夏歌も思い出してみよう。「輝きを増す」様子は、「輝きだした 僕達(ぼくら)」と歌っていた『Boys & Girls』から進化している。「大人になった?」という問いかけには、「大人になって行く事の意味」を考えていた『fariyland』が思い浮かぶ。「泣けなくなった事」と「泣かなくなった事」の対比は、『HANABI』の「泣けない弱い心も 泣かない強さも」という歌詞に似ている。「君の笑顔」が大事で、「そのためには空も 飛べるはず」と言う主人公に、「去年の今頃」歌っていた『BLUE BIRD』の「青い空を共に行こうよ」「君が笑ってくれればいい」という歌詞が重なる。サビから入る構成の夏歌は『UNITE!』以来で、皆で集まるのにぴったりな雰囲気は『Greatful days』のようだ。直近のアルバム『Secret』でこれからも歩み続けるという姿勢が示されたように、過去を踏まえてより前へ、加速をつけて進んでいく意気込みが感じられ、その意味でもファンは高揚せずにいられない。

ショートフィルムの前半は、この曲と共に、歌姫あゆとボディーガードが次第に惹かれ合う様子が描かれる。

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ glitter 歌詞 - 歌ネット

 

 

fated

作曲:萩原慎太郎松浦晃久

編曲:CMJK

 

あゆ作品の「運命の恋」の描き方は独特だ。タイトルに「運命」を冠した『LOVE ~Destiny~』は破局の歌だし、「どんな結末が待っていても 運命と呼ぶ以外他にはない」と歌う『HEAVEN』は死別を描いている。「運命の恋」と聞くとロマンティックなハッピーエンドを想像しがちだが、あゆは厳しい現実も含めて「運命」と呼ぶのだ。

もっとも、これら2曲はその悲しい最後より、二人が確かに想い合っていたことを讃える視点で書かれたものだった。比較して今作は、中盤まで上手くいっているかのような描写だったのが、最後に悲しい終わりを迎えたと分かる構成で、未練を引き立たせている。元より「fate」は「不幸な運命」を表す言葉であり、「fated」は避けようのない不幸を「運命づけられた」という意味である。静かな夜のようにひんやりとした、ひずんだロックバラードは、『HANABI ~episode Ⅱ~』を思わせる曲調だ。

主人公の「僕」は、「それまでの何もかも全て 変えていってしまう様な 一瞬の出会い」を「運命」と呼ぶ。そして目の前の「君」に、確かにそれを感じた。だが「足がすく」み、どこに続くか分からない道を前に、「強くありたいと思う程に心は 反比例する様に弱くなっていく 気がして」……。「今をただ 大事にして」未来に向かっていく『glitter』とは逆の心境だ。最終的に「僕」は、二人の愛を諦めてしまう。

「頬を打つ風」で「リアルさ」を感じる場面が、前半と終盤の2回登場する。運命を感じたこと、そして幻であってほしい悲劇が起きたこと、どちらも現実だ。「君」との出会いは運命だった。けれど「僕」はその運命を信じ切ることができなかった。「僕」は運命を逃したのか? それともこの結末こそ、強くはなれない自身に運命づけられたものだったのか?「ねぇ僕の目の前にいたのは 本当の君だったのに」という終わりが、拭えない悲しみを余韻に残す。

ショートフィルムでは後半をこの曲が彩る。想いを深める二人に待っていた運命は……。

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ fated 歌詞 - 歌ネット