黙ってayuを聞け

浜崎あゆみさんの歌 とりわけ歌詞の魅力を語るブログ

42ndシングル『talkin’ 2 myself』

talkin’ 2 myself

作曲:中野雄太

編曲:HΛL

 

低く重量感のある響きを持ったハードロック。ソリッドなギターと、危機感を煽るかのようなストリングスが特徴。ジャケットは赤を背景に黒い衣装をまとったあゆで、CDのみ盤はほぼ上半身、DVD付属盤はバストアップの、いずれも強烈な印象だ。

「何を求めて 彷徨うのか」「旅路の果てに 何が見たい?」と、人生の大きな目的を問う歌詞が冒頭から登場する。そして怯えている「君」に「心の声を聞くんだ」と力強い言葉を掛ける。「僕達」を振り回す現実の中にも、「君だけの答えがそう隠れてる」のだと。

情報や誘惑が溢れている時代に、自分の選択をしていく大切さを説く姿勢は、『everywhere nowhere』で「自由過ぎて何処へも行けない」という心情を描いていたことを思い出させる。膨大な選択肢は身を竦ませ、正解は誰も教えてくれない。だからこそ、現実に振り回されるのではなく、自分の答えを現実に見出す、自分の選択を現実にしていくのだ。

タイトルから分かるように、主人公が「君」と呼ぶのは内なる自分自身。「to」ではなく「2」としたのは、進もうとする自分と躊躇する自分の二面性をも表しているのかも知れない。もちろん聞き手は、あゆが励ましてくれていると受け取ってもいいだろう。「破壊する事により 創造は生まれる」という歌詞に、アーティストの創作にかけるエネルギー、あゆがひとところに立ち止まらずに前進してきたことを実感する。

PVでは、ダンサーと共に集団で踊るあゆが見られる。泥まみれになりながら強い視線を投げかけてくるのが印象的だ。時折出てくる子供たちの様子も興味深い。

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ talkin' 2 myself 歌詞 - 歌ネット

 

 

decision

作曲・編曲:中野雄太

 

カップリングもシングルタイトルに負けず劣らず、激しいロックナンバーとなった。不穏に響くピアノの音や、動と静の起伏の激しさは『Because of You』に曲調が似ている。PVはバンドと共に演奏するあゆが映され、激しく頭を振りながら歌う姿が目に焼き付く。

「僕」が呼びかける「君」とは、大切な人、周りの人、ファンや聞き手……様々な人が当てはまるかもしれない。とはいえ、「言葉は時にとても無力」との歌詞の通り、実は多くは語っていない。「そう僕は行く この先がたとえ どんなにも 理不尽な 場所だったとしても」という強い「決意」を示すのみで、「君」に対しては「いつか 解ってくれるだろう」と淡い期待はあるものの、積極的にあれこれ説明はしないのだ。他人に語ることで、自分に言い聞かせ奮い立たせている面もあるのだろうか。

かつて「二度とは引き返せない道」を「最初で最後の覚悟」をもって選んだ「僕」。「僕はもう僕で あり続けるしかない」と悲壮さを滲ませる。あゆは様々な挑戦を選び乗り越えてきたが、良くも悪くも自分の考えとは違う結果を生むこともあっただろう。「強い向かい風」「冷たさ」が表すように、決して温かく安定した道ではない。それでもアーティストとしての道を「僕は行く」と言い切るのである。アルバム『Secret』では『until that Day...』で「まだまだ終われない 止まってられない」と前向きな意志を見せる一方、『Secret』で「飛ぶ事に疲れても 羽下ろす勇気もない」と自分の道から逃れられない悲哀も描いていたが、この曲は言わばその両方だ。この道を進みたいと思う勇敢さも、この道を行くほかになくなってしまった悲しみも、「僕であり続ける」ために引き受けていくのである。

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ decision 歌詞 - 歌ネット