黙ってayuを聞け

浜崎あゆみさんの歌 とりわけ歌詞の魅力を語るブログ

43rdシングル『Mirrorcle World』

デビュー10周年記念シングルとしてリリース。タイトル曲は9thアルバム『GUILTY』収録の『Mirror』をフルコーラス版にアレンジしたもの。

2ndシングル『YOU』と5thシングル『Depend on you』のどちらかをリアレンジ・新録ヴォーカルしたものを「10th Anniversary version」として収録し、更にそれぞれがCDのみとDVD付属盤があり、計4形態となった。あゆが10年を経て確立した歌い回しで初期の楽曲を聴けるのが面白い。DVD付属盤の初回盤は縦長スリーブケース仕様。ジャケットはバストアップで肌を見せ、色とりどりの蝶を誘うあゆ。それぞれの形態で少しずつポーズが違う。

 

 

Mirrorcle World

作曲・編曲:中野雄太

 

大元の『Mirror』自体、ワンコーラスながら様々な展開を見せる作品だったが、フルコーラスになったことで更にドラマを見せる、プログレッシヴ・ロックの趣のある大作となった。ストリングスのたゆたうシンフォニックな始まりから、『Mirror』の出だしと同じ部分が登場し、軍靴のような独特の緊迫したリズムを刻む。2番の後には縦横無尽のギターのパート、鏡に乱反射する光のように幻想的なパートがあり、何かが割れる音と共にまた緊迫したリズムに戻る。そして『Mirror』のラストへと繋がるのだ。

「現在(いま)のこんな未来を僕は想像してただろうか? 現在のこんな未来を君は想像してただろうか?」。この歌詞が、10周年記念シングルとして歌われる意味を考えたい。このときのあゆの立ち位置は、駆け出したときには想像もしていなかったものなのだろう。では、それをあゆはどう捉えているのか? 『Mirror』でも書いたように、これが自分との対話だとすれば、「君」は過去の自分? 今の自分の内面? 「始まりなのかって? 終焉なのかって?」「身を任せんのかって? 食い止めたいのかって?」と逡巡する様子に胸がざわつく。

「このまま加速度だけが 増し続けたら.....」という歌詞に、『too late』の「世界が逆に周り始めてる 加速度ばかりが増してる」という戸惑いを思い出す。あれから年月を経ても、あゆは目まぐるしく変わる世界への危機感を拭い去ることが出来なかったのだろうか? 「ただ前に進め」と言ってくる「あなた」の期待を、「僕」は痛いほど感じている。「泣かないでいられるのは 強くなったから それとも.....」と、答えの出ない問いを残して歌は終わる。タイトルは「mirror」と「miracle」を合わせた造語と思われるが、鏡にはどんな世界が映っているのだろう? 「奇跡」のように素晴らしいのか、やはり鏡像ゆえに現実味に欠けるのか。そもそも、目で見た世界と鏡の世界、どちらが本当の姿なのか?

PVはパリを舞台に、謎の男達に追われるあゆを描く。豪奢な真紅のドレス姿や、真っ黒なアイメイク、電話ボックスから鋭い眼光で睨みつける場面など、目まぐるしい曲調に相応しく見どころが盛りだくさんだ。

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ Mirrorcle World 歌詞 - 歌ネット

 

 

Life

作曲:湯汲哲也

編曲:中野雄太

 

展開に次ぐ展開のタイトル曲と打って変わって、やや感傷的で哀愁の漂うロックバラード。2番の後の間奏で一度3拍子になるという特徴がある。

突然の出来事に襲われた「僕」。受け止められず、「誰か笑ってよ」と思ってしまう。何が起きたかは明言されていないが、悲劇であることは伝わってくるだろう。当たり前の日常が崩れ去ってしまった実感とは裏腹に、「街は今日もまたまわり続け」る。「ねぇ僕には一体何が出来る」「ねぇ君にはどんな風に映ってる」という主人公の問いは心許なげだ。しかし当たり前にあると思っているものが「在って当然なんかじゃない」ということを「君」に教えられたと感じ、「奇跡を起こすんだ」と強い決意で結ぶ。

平穏な日々にあるとき、それが当たり前に続くと思いがちな我々の胸を、この作品はついてくる。一つの命、一度の人生を生きるとは、本当はかけがえのないことなのだ。残念ながら「当たり前」を失ってやっと、それに気付くことも多い。だからこそ悲劇の向こうの「奇跡」を求める主人公の姿に、光射すようなイメージを湧き起こされるだろう。

アルバム収録も未だされたことのないカップリングという、ささやかな立ち位置のこの作品だが、歌番組で披露されたことがある。東日本大震災からひと月も経たないその日、被災地へのメッセージを多くのアーティストが歌った。あゆはいつもの華やかな衣装ではなく、ラフな服装と裸足で登場した。「あまりにも突然すぎた」「ねぇ僕には一体何が出来る」「当たり前の様にいつもあると 思っているものは決して 在って当然なんかじゃないんだ」……状況に寄り添うような歌詞に、視聴者も心打たれたのではないだろうか。「奇跡を起こすんだ」という最後の一文が希望と共に響いた。

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ Life 歌詞 - 歌ネット

 

 

YOU (10th Anniversary version)

編曲:中野雄太

 

2ndシングルをリアレンジ、ヴォーカルを新録。

原曲のきらめくようなサウンドを大切にしつつ、どこかノスタルジックなアレンジとなっている。

 

 

Depend on you (10th Anniversary version)

編曲:CMJK

 

5thシングルをリアレンジ、ヴォーカルを新録。

原曲のシンセサウンドはやや抑えられ、アグレッシヴなギターを強調したバンドサウンドに寄っている。