Trust
「赤い糸」を信じず、「運命はつかむものだと思った」という主人公の「私」はなかなかシビアなイメージだ。現実を見ているからこそ、取り巻く世界に疲れてしまうし、「周りばかり気にする」。「あなた」を心から信頼できる人だと思えたとき、それはどれほどの救いになっただろう。私が見つけた、のではなく、「あなたから見つけてもらえた」と書き表したところにやはり鍵がある。自分が赤い糸を信じ辿ったわけではないのなら、「あなた」の方から見つけたということになる。この後、あゆは「世界が逆に周り始めてる」状況を目にすることになるが、そのときも「あなた」を信じることは何か助けになったのだろうか。
出だしの「赤い糸」はもちろん、「口びるにすこし近付き始める」という表現に、色づく恋心が見えるようだ。このときめきから「自分を誇ること」という大きな命題までつながる歌が、飾らない言葉で出来上がっている。どちらかと言えば切なげでシリアスな曲調とあいまって、その偽りない信頼が聞き手まで届く。
PVは、車を運転したり、海辺を歩いたりする場面と、部屋の中にいる場面、そしてマイクの前で歌う場面で構成される。前作の『YOU』に比べるとより外に飛び出していく印象だ。白い建物に掲げられた鐘は、どこか清らかな空気に包まれている。