黙ってayuを聞け

浜崎あゆみさんの歌 とりわけ歌詞の魅力を語るブログ

11thアルバム『Rock’n’Roll Circus』(前編)

アルバム曲をロンドンで録音したという今作は、「ロックンロール」や「サーカス」という楽しげな単語とは裏腹に、沈み込むような重さが目立つ。その重さは『GUILTY』にも近いものがあるが、『GUILTY』が曲順に従って明確に雰囲気が明るくなっていったのに比べると、こちらは楽曲の個性がもう少しばらけて配置されている。その展開の振れ幅は「サーカス」と言うのにふさわしい。賑やかな都市である一方、霧や曇天のイメージもあるロンドンという地の空気もアルバムに染み込んでいるのだろうか。光も影もある、それがあゆのサーカスであり、ロックンロールだ。

CDのみ盤、DVD付属盤、限定盤の「SPECIAL LIMITED BOX SET」の3形態でリリース。DVDにはシングルとアルバム曲合わせて8曲分のPVと、その全てのメイキング、そしてライブ「ayumi hamasaki ARENA TOUR 2009 A 〜NEXT LEVEL〜」のダイジェストを収録。限定盤はDVD付属盤と、紅茶、マグカップ、ライブDVD「ayumi hamasaki ARENA TOUR 2009 A 〜NEXT LEVEL〜」をセットにした内容である。DVD付属盤と限定盤の初回特典にはフォトブックが付き、更に12枚限定で直筆の歌詞原本がランダム封入された。

歌詞カードとフォトブックはロンドンで撮影されており、ロッカーかつサーカスの団長と呼ぶべき、ハードでカッコいい衣装の数々を着こなしたあゆが登場する。ジャケットは、CDのみ盤はバストアップ、DVD付属盤は顔のアップ。

 

 

〔『Rock’n’Roll Circus』の記事 【前編】 【中編】 後編】〕 

 

 

THE introduction

作曲・編曲:CMJK

 

電子音で構成されたインストゥルメンタル。潜んでいた何者かが満を持して登場するような、ゾクゾクする期待感を煽り、サーカスの幕開けを告げる。

 

Microphone

作曲・編曲:中野雄太

 

重量感を持ったギターに、荘厳なオルガンと鋭いストリングスが織り交ぜられたシンフォニック・ロック。楽曲のハードなサウンドと劇的な展開はもちろん、綴られた歌詞が激しく聞き手の心を揺さぶる。

この歌の「あなた」とは誰か?歌詞の中のヒントをきちんと拾えば、PVメイキング映像でのあゆの発言を確かめるまでもなく、「音楽」であることが分かる。1曲を通す大胆なレトリックだ。

「変化はとても素敵な事だけど 自分を失くすって意味じゃない」。確かに、デビュー曲や1stアルバム『A Song for ××』を聴くと、この歌や『Rock’n’Roll Circus』を生み出したのと同一人物とはにわかには信じがたい。だがその間にあった挑戦と積み重ねを知っていれば、あゆがその都度変化し、しかしどの瞬間もあゆであったことに疑う余地はないのである。

「あたし」は「あなた」との出会いを、「運命」であり「必然」だったと語る。「憎たらしい日もある」けれど「結局どんな時も一番側に居て欲しい」相手であり、「あたしである意味を教えてくれる」「あなたなしのあたしは あたしじゃない」とまで言い切る。あゆは元々歌手を目指していたわけではなかったが、そこから「音楽」にこんな確信を持つに至った道程に感じ入らずにはいられない。「tell me why」(どうしてなのか教えて)「I don’t know」(分からないの)という問いへの答えは、「I won’t tell u why」(教えるつもりなんかないよ)。理由など分かるはずがない、それがまさに運命の出会いなのだろう。

極めつきは「もし完璧なメロディーがあるなら あたしはまだ出会いたくない」。あゆは歌詞の中で、言葉は難しいけれどそれでも伝えたいという姿勢を幾度となく見せてきたが、音楽においてもまだ高みを目指したい、満足して終わらせたくないと宣言しているのだ。歌い手としてマイクに向かう覚悟の前には、聞き手も「敬服するしかない」。

PVでは大きな絵のある厳かな場所で、黒い豪奢なドレスのあゆがバンドと共にパフォーマンスをする。合間には、自分を解放し狂気を見せるかのような人々が登場する。画面を破ったりスクロールしたりするような演出が面白い。『Sexy little things』のPVと繋がっている。

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ Microphone 歌詞 - 歌ネット

 

 

count down

作曲:湯汲哲也

編曲:CMJK

 

ずんと重く、硬質でどこかひんやりとした音を響かせるグランジ・ロックのバラード。全体的には虚しさや寂しさが漂い、AメロやBメロではピアノが心細い様子で響く。音量が上がるサビでさえ引きずるような雰囲気である。

冒頭、「桃源郷」という言葉が目を引く。桃源郷とは、求めても辿り着けない楽園のような世界を指すが、この歌の主人公が行き着いたそこは、「強くてとても冷たい風」が吹いていたという。そして「私/あたし」がその風に目覚めさせられるような思いをすると、消えてしまった。2番では、「奈落の底」という一見正反対の言葉が出てくるが、やっとのことで見つけたかに思えた理想の真の姿とは、そんなのものなのだろうか。あるいは、理想だけでできた楽園などどこにもない、という逆説かもしれない。「私/あたし」はその状況に、絶望さえ通り過ぎて「無になってしまっ」ている。「終わりが始まる」ことを告げるカウントダウンが遠くから聞こえ、「後は上がるだけだ」と迷いなく言い切る「あなた」には、「最期まで見届けるふりして」と望む。「左側」という単語も意味深だ。噛み締めるように歌うヴォーカルが胸を掴んで離さない。

かつて『POWDER SNOW』では、後悔なく生きた結果「逃げたいの」「明日はいらないの」という燃え尽きた心境だった。この歌では、やはり明るい希望の気配はないが、「真っ直ぐに受けとめていくわ」「他には何にもいらないわ」と、まだ軸を持って立っているような印象がある。あゆは『SURREAL』で「どこにもない場所」に立ち、『Mirrorcle World』で「始まりなのかって? 終焉なのかって?」と問いかけ、『Rollin’』で急速に終わりに向かう世界を描いたが、楽園など存在しない現実世界を受け止めながら、聞こえる終わりに良いも悪いもなく自ら向かい、人生を果たそうとしているのかもしれない。

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ count down 歌詞 - 歌ネット

 

 

Sunset ~LOVE is ALL~

46thシングル。当該記事を参照。

DVDにはPVのメイキングが初収録されている。

 

 

BALLAD

47thシングル。当該記事を参照。

 

 

 

 

浜崎あゆみさん、お誕生日おめでとうございます🎊

災難に見舞われ、世界が変わってしまったかのような毎日ですが、そんな中でも嬉しい話題が多々あることに感謝しています。

 

そして当ブログは、昨日で開設から3年目に入りました!

おうち時間が増えたのに投稿は滞りがちですが💧💧💧、書き続けることに変わりはないので、これからもどうぞよろしくお願いします。

 

※『Together When...』の記事をわずかに修正しました。