前作からわずか一週間後にリリースされ、遂に50枚目に到達したシングル。トリプルA面。DVD付属盤とCDのみ盤が2種類ずつの計4形態で、収録された曲順やリミックス、PVのメイキング映像に違いがある。ジャケットは自分の顔の仮面を持つあゆで、仮面の方は目を閉じている。DVD付属盤はほぼ顔のアップ、CDのみ盤はピンクのチュチュ姿で座っており、やはりそれぞれの形態で違う写真を使っている。
Virgin Road
作曲:小室哲哉
編曲:中野雄太
DVD付属盤の1つはこれが1曲目。
ピアノとストリングスがゆったりと美しく、終盤のオルガンは神々しく、全体にそこはかとない切なさのあるバラード。あゆの言葉によってウェディングソングへと仕上がった。
歌詞から分かるのは、これは結婚する相手についてではなく、自分を育てた母への感謝を歌った作品であるということ。冒頭、「愛」に辿り着くまでに「孤独や痛みや罪」があるが、「その全てに心からありがとう」と言っている。そして更に「この命をありがとう」とも歌う。命あってこそ出会う愛、その道程にあったものは、「孤独や痛みや罪」にすら感謝するのである。
「自分を大事に出来なかったあの日 傷ついたのは私なんかじゃなかった」という回想から、どれだけ母が「私」を愛し、そしてどれだけ「私」がその愛を感じてきたかが伝わってくる。これから共に歩き出す、愛する人との誓いはそのまま、「誰よりも理解してきてくれた」母への誓いでもあるのだ。「これからもずっとありがとう」と、感謝はこれから先にも続いていく。
聞き手の胸を最も締め付ける一節は「貴女がいつかのその昔 出逢い愛したあの人と 私が愛している人は どこか似てる様な気がします」であろう。「私」と「貴女」、そして「あの人」という距離の関係性。愛する人と「あの人」が似ていると気付いたときの涙は、一体どれほどの想いが込み上げたものなのだろうか。母に見守られ、感謝を忘れず、「私」は愛する人と新たな道を行く。
PVではウェディングドレスをまとったあゆと相手役の男性が登場する。ただし穏やかな内容ではなく、二人は新郎新婦の姿で銃を乱射し、白昼堂々強盗を働く。『Last angel』、アルバム『Love songs』収録の『Love song』のPVと繋がっているが、時系列はぼかしてある。
歌詞リンク:浜崎あゆみ Virgin Road 歌詞 - 歌ネット
Sweet Season
作曲:槇原敬之
編曲:小林信吾
DVD付属盤の1つはこれが1曲目。
温かな日向にいるように心地良い楽曲は、槇原敬之さんから提供されたものである。歌詞もその曲調に寄り添い、優しくやわらかい言葉で満ちたものとなった。
綴られた春夏秋冬は、どれも「僕ら」の思い出をその季節らしく飾っている。それもただ美しいだけではない。桜は儚く、太陽は刹那に照り付ける。落ち葉が舞い散る様子は切なく、寒さには指先が震える。どの表現にも、過ぎてしまえば一瞬だったその時間のなかに、どれほど様々な想いと経験があったのかが描かれているのだ。振り返ると「あなた」とどんな風に一緒だったのか、噛み締めるほどしみじみと感じるものである。
「あなた」の涙も笑顔も、主人公は「光っている」と言い表している。何もかもが上手くいっていたから「光っている」のではない。良いことでもそうでないことでも、それぞれの季節の表現にあったような全ての経験が今の「あなた」を光らせているのだ。そして主人公は、そんな「あなた」が歩き出すのを見送ろうとしている。懐かしむ想いがありながらも、未来に向かっていく「あなた」への眼差しは優しいものに違いない。『Virgin Road』で旅立つ側の心境を描いたのと、ちょうど対象的な作品と言えるだろう。サビの終わりの「きらきらきら」が、あゆの丁寧なヴォーカルで彩るように余韻を残してくれる。
PVでは、あゆは大家族のお母さん。たくさんの子供達と、豊かで幸せな時を過ごす様子が、温かくやわらかな光の中で描かれる。海外にルーツを持つと思われる子供達が日本語の歌詞を揃って歌うシーンは印象的だ。ただし、ラストに意外な展開が残されているので、最後まで目を離さずにいよう。
歌詞リンク:浜崎あゆみ Sweet Season 歌詞 - 歌ネット
Last angel
作曲:小室哲哉
編曲:CMJK
CDのみ盤の1つはこれが1曲目(もう1つはリミックスが1曲目)。
ストリングスの静かで流麗な始まりから、緊迫したリズムを刻む曲調へと変わり、螺旋階段を下ったり上ったりするかのようなメロディーを繰り返す。そのメロディーに合わせるように、「~から」や「~ね」など、語尾を揃えた言い回しで畳みかける歌詞が乗っている。言葉は断片的な印象があり、聞けば聞くほど、主人公を駆り立てるものの正体を知りたくなる。
冒頭から主人公は「あなた」に「聴こえているよね」「伝えておきたい」と呼びかける。鳴り響いている「鐘の音」は終わりを告げるものだと言うが、それでも「悲しい音色 なんかじゃない」らしい。「泣いていたね 叫んでいたね 声になってなかったね」と感情の迸った経験を語り、「夢じゃないから」と確かめる。かつての後ろめたい恋、その相手こそ「あなた」なのだろうか。「間に合うかな」と焦りながらも、主人公は振り返らず「前に進むしかない」と言う。「二度と逢えなくても」という覚悟を携えて。
「たったひとつ 最後のひとつ」の愛。それは二度と逢えないから失われてしまうものではなく、むしろ今でも「見てて欲しい」「逃げないから」「側にいるよ」と思えるほど確かに息づいているものである。だからこそ主人公は、終わりの鐘さえ合図にして、振り返らずに前に進めるのかもしれない。「天使が笑った」とはどういう意味だろう? 自分の行くべき道――天命が分かるような体験だったのだろうか。分かってしまったがために後ろめたい恋を終わらせ、「あなた」と別離することになったのなら、何と切ない道だろう。それでも「あなた」が諦めないでいてくれると信じ、突き進んでゆくのである。
PVはアルバム『Love songs』に収録されている。
歌詞リンク: 浜崎あゆみ Last angel 歌詞 - 歌ネット
皆さん、あけましておめでとうございます。
……と、1月も過ぎて言っているのはおかしいのですが、これが今年の初投稿なので、そう言わせて下さい💦
今日は2月2日ですが、124年ぶりにこの日付が節分になったそうですね。未だ続いている不安な日々が早く終わるように、そしてたくさんの幸福がやってくるように祈りましょう。
出来れば私の遅筆癖も外にぶっ飛ばしたいです……。