黙ってayuを聞け

浜崎あゆみさんの歌 とりわけ歌詞の魅力を語るブログ

12thアルバム『Love songs』(前編)

収録曲の多くを小室哲哉さんが手がけたアルバム。前作『Rock’n’Roll Circus』のダークなハードロックとはがらりと雰囲気が変わり、軽快なシンセポップの色合いが強い。そうした曲調から言えば、48thシングルの『MOON』『blossom』が星野靖彦さんからの久しぶりの提供だったことも含め、初期のあゆを思い起こさせるアルバムである。とは言え、歌詞も合わせて表現されるのは紛れもなく今のあゆだ。印象的なフレーズを何度も繰り返す楽曲ばかりなので、気が付けば口ずさんでしまう歌が必ず見つかるだろう。

DVD付属盤、CDのみ盤、USBとmicroSDとDVDがセットの数量限定生産盤の3形態でリリース。DVDにはシングル含む8曲分のPVと、7曲分のメイキングを収録。USBには日本人アーティストとして初めてCDよりも高音質なデータで楽曲が収録された。microSDにはPVのみを収録。ジャケットは、柔らかなコーラルピンクの光に包まれたあゆの顔のアップで、形態によって視線の方向が違う。

コラボレーション・シングル『Dream ON』と同時発売。

 

 

〔『Love songs』の記事 【前編】 【中編】 【後編】

 

Love song

作曲:小室哲哉

編曲:中野雄太

 

実質的なアルバムタイトル曲であるこの作品には、11thアルバム『Rock’n’Roll Circus』のリード曲『Microphone』に続いて、あゆの歌い手としての矜持が表現されている。ラブソングと言えば普通は恋愛の歌だが、ここで歌われるのは恋愛には留まらない、「ゆずれない想い」だ。

「愛のない 人生なんて そんなの 生きる自信ない」。冒頭からストレートで力強い歌詞が心をぐっと掴む。何を大切に生きていくのか、その迷いのなさが二重否定の文に現れているのだ。ここで注目すべきはやはり、人生に必要なものとして「愛」、「夢」と同列に語られるのが「歌」であること。「歌のない 人生なんて そんなの 見当もつかない」と、あゆは声を張り上げて歌う。かつては歌手になるとは思っていなかったあゆにとって、今や歌は人生になくてはならないものになったのである。

大切なものを大切にしながら生きてゆくことは、簡単ではない。そんなことは分かっている。諦めた方が楽だ。それでも、「ゆずれない想い」のない人生は意味がない――きっぱり言い切る姿勢はこの上なく感動的で、思わずこちらも背筋が伸びる。更には「守りたいものがありますか?」「失ったものはありますか?」という問い掛けに立て続けに揺さぶられ、決して気が抜けない。

繊細なピアノと切なげなギターが絡むサウンドに乗せる歌の旋律は2種類だけ、その2種類に当てた歌詞が二重否定と問い掛けで出来ているというシンプルな構成だが、豪奢な『Microphone』とはまた違ったドラマと説得力がある。同じ言い回しで畳みかけながら、ストリングスが更に盛り上げ最高潮へと引き上げる。壮絶な決意が強い印象を残す作品となった。

PVでは、あゆはパートナーの男性と言い争いをし、部屋を出て行く。一方、その男性と共に強盗を働くもう一人のあゆも登場する。どちらが現実か分からないまま二組は交錯し、歌っているあゆだけが独立した場面として出てくる。『Virgin Road』、『Last angel』のPVと繋がっているが、時系列はぼかしてある。

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ Love song 歌詞 - 歌ネット

 

 

crossroad

49thシングル。当該記事を参照。

 

 

 

MOON

48thシングル。当該記事を参照。

 

 

 

sending mail

作曲・編曲:小室哲哉

 

メールやメッセージのように、文字情報を即座にやり取りすることは一般に気軽な手段と思われている。けれど、相手に過不足なく想いを伝えること、やはりそれは手段を問わず難しいものなのではないか。「ためらって 溜め息ついて 消去して 最初から打ち直して だけど 結局送信押せなくて」。言葉は難しいとたびたび歌うあゆは、メールを送るにもこれほどの苦しみを味わう。

太陽に置いていかれて「闇に投げ込まれた」と感じる時間帯。「私」は「あなた」へのメールを綴り始めるが、自己嫌悪に陥っていく。優しい月明かりでさえ淋しさを隠すことはできない。

本当なら「目と目合わせて 伝えたい」ところ、メールを送るしかない状況だ。けれど遠回しな言葉を選ぶほど、まっすぐで飾らない「あなた」の側に居られる日が来る確信が持てなくなっていく。かと言って声を聞いてしまって逢いたくなるのもこわい。「私」はメールを書き直し続け、時間は過ぎていく……。

美しいピアノで始まったと思いきや、スリリングなリズムに変わる楽曲は、サビでは同じメロディーと同じ歌詞を4度、被せ気味に繰り返す。それは主人公の逡巡を表すかのようで、聞き手は駆り立てられていく。伝えたい想いと伝えられない弱さが渦巻いた末に、どんな文面が出来上がったのか。メールの行方、二人の行方。気になるところである。

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ sending mail 歌詞 - 歌ネット

 

 

Last angel

 

50thシングル。楽曲については当該記事を参照。

初収録となったPVでは、あゆと恋人の男性が仲睦まじくしているが、あゆが時々別な女性にすり替わる。そして状況を俯瞰するかのようなもう一人のあゆがいる。どこかサスペンスの雰囲気が漂い不安感が煽られそう。『Virgin Road』、『Love song』のPVと繋がっているが、時系列はぼかしてある。

 

 

 

 

 

今日はバレンタインデー💘。その日に『Love songs』の記事を上げることが出来ました。

日付が変わる直前に大きな地震がありましたが、皆さんは大丈夫でしたか?せっかくのバレンタインが台無しになってしまい、甘いどころか苦い想いをした方もいらっしゃるかも知れません。

それでも生きる限りは愛を持ち続けましょう。