黙ってayuを聞け

浜崎あゆみさんの歌 とりわけ歌詞の魅力を語るブログ

12thアルバム『Love songs』(後編)

〔『Love songs』の記事 【前編】 【中編】 【後編】 〕

 

Sweet Season

50thシングル。当該記事を参照。

 

 

overture

作曲・編曲:中野雄太

 

インストゥルメンタル。穏やかで、時に感傷的なメロディーを奏でつつも、徐々に湧き上がる気持ちを抱いて飛び立つかのよう。アルバム終盤でありながら「始まり」「序曲」を意味するタイトルのこの曲の次には、「もう一度繰り返す」歌が控える。

 

 

do it again

作曲:小室哲哉

編曲:中野雄太

 

「dance dance dance do it again」「sing sing sing do it again」という歌詞が幾度となく繰り返されるのが最大の特徴である。Bメロで焦りが募るかのようにリズムの刻みが早くなるが、全体的には淡々と続いていく印象だ。

歌詞は「君」に呼びかける形で書かれている。「君がいつかに描いた 夢をまだ覚えてるかな」「それは君の心ふっと 温めてくれるのかな」。そんな問いと共に語られるのは、夢と現実を巡る葛藤である。夢を諦めるのは悲しいと思いつつも、それだけじゃない事も増えてゆく。一方、手放すのも勇気と知っていても、やはり簡単ではない。そんなせめぎ合いは、「夢だけじゃ、、、 夢だけが、、、」という曖昧に言い残す一節にこそ、最も強烈に表れている。「君」との間には距離があるようだが、その人に向けて問う形なのはひょっとして、主人公にとって届かない、けれど手放せもしない夢の一つが「君」だからなのかもしれない。

そんな主人公が「dance」と「sing」を延々と繰り返す。あゆが歌うのも踊るのも何もおかしくはないが、この無感情にも聞こえる反復は一体何だろうか。運命に導かれて歌手になり、地位を確立し、様々な挑戦をものにしてきたように見えるあゆは、その過程でどんな夢をどのくらい描き、叶えてきたのだろう。目に見えるものだけで、全てを叶えた人だと決めつけるのは第三者の視点でしかない。そしてその取捨選択がどうであろうと、あゆは何度でも歌うのだ。

PVは、災害の後なのか荒廃した町を、あゆが大型犬2頭を連れてひたすらに歩いていく。周りの景色や物の方に視点を置いて画面が動くカメラワークが独特である。

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ do it again 歌詞 - 歌ネット

 

 

November

作曲:小室哲哉

編曲:CMJK

 

そこはかとなく冷たい秋風のように、切ない予感のあるバラード。ハーモニカの音がノスタルジックで感傷的な印象を見せている。2番の後からラストサビにかけては転調を含むドラマティックな展開もある。

歌詞にあるのは、どこか儚さが漂う情景だ。夜、「あなた」の「長いまつ毛」や「少し長く伸びた前髪」を愛しげに見つめながら、「私」は「運命の相手」について思いを巡らせる。誰しもにとって必ずいるはずの「運命の相手」は、しかしほとんどの人は見つけられないという。

ここで注目すべきは、「私」と「あなた」は互いの「運命の相手」である、とは言っていない事だ。「信じて傷つくのを 怖がっているそのうちに 通り過ぎて行く」ことすらままある中で、その確証を持つ事は難しい。そもそも、あゆ作品の中で「運命」がどう語られてきたかも忘れてはならないだろう。『LOVE ~Destiny~』や『fated』で別離を、『HEAVEN』で死別を「運命」と呼んだように、「運命の相手」とは巡り合わせの末に出会った大切な人ではあるが、ハッピーエンドまでは保証されていない。だから例え「私」と「あなた」が運命の相手同士でも、この先どうなるかは分からないのだ。

「私」は自分に「もうひとつの翼が生えて(中略)空をはばたけたなら」という想像をする。「もうひとつ」というのは、今の時点では片翼だという事だが、「私」はもう飛び立てなくなるほどの傷を過去に負ったのだろうか。そして、もしはばたけたなら、「あなた」の肩に優しく舞い降りたいと願うけれど、最後には「どちらもあなたへ捧げたい」とも思う。「好きな所へ飛んで行けるように」と。『Endless sorrow』のように「一緒に...」という境地ではなく、『Moments』にも似た自己犠牲がある。

「運命の相手」と感じたら手をはなさないで、失うことに慣れた人はきっと居ない、と「私」は言うけれど、「私」の手をはなさないで、とは言わない。「あなた」が「運命」を確信するのが自分でなかったとしたら、飛び去って構わない、と言いたいのかもしれない。これが、飛び立てない身で「もうひとつの翼」を仮定した上での話に過ぎない事が、ますます物悲しい。

11月の風はやがて、厳しい冬を連れてくる。「私」の静かな愛はどこへ向かうのだろうか。

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ November 歌詞 - 歌ネット

 

 

Virgin Road

50thシングル。当該記事を参照。

  

 

SEVEN DAYS WAR

 

49thシングルのカップリング曲。当該記事を参照。

初回盤と数量限定盤には「Live at Yoyogi on Oct.11.2010」のライブ音源を収録。ライブ音源では、歌声からだけでもあゆが感極まる様子が伝わって来る。