黙ってayuを聞け

浜崎あゆみさんの歌 とりわけ歌詞の魅力を語るブログ

13thアルバム『Party Queen』(後編)

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a cup of tea

作曲・編曲:CMJK

 

インストゥルメンタル。軽やかに弾む音が楽しく、どこかコミカル。もうお酒はやめにして、お茶を飲む事にしたらしい。あゆにお茶を勧められたら、是非とも頂きたいものである。

 

 

the next LOVE

作曲:Timothy Wellard

編曲:中野雄太

 

ここからは今までのあゆ作品にはないタイプの曲が続く。パーティーが終わり、現実に戻った後で、新しいアイディアが生まれたのだろうか。この作品はムーディーで気怠げなブルースで、途中に一度テンポの速いジャズを挟み、まるでミュージカルの一場面を観たような気分にさせられる。

歌は幼少期の「アタシ」の「ママ」との思い出と、現在の「アタシ」からの問い掛けで構成される。かつて「アタシ」は、「ママ」の鏡の前の「とびっきり魅力的」な「何か」に夢中になった。そして「ママ」は「アタシ」を、「あなたは美しい」と褒めていた。レディー・ガガの『Born This Way』にも似たような描写があるが、ここだけ見ればとても微笑ましい。しかしそんな「ママ」の元で育った現在の「アタシ」は、目に見えるものしか信じず、自分の事を恨んでいるという。『Born This Way』の主人公が自分の生き方を誇らしく歌うのとは全く逆の結果となったのだ。

「ママ」は「アタシ」を「美しい」と褒める際、その美しさのお陰で「王子様が眠りから覚ませる キスをしに来る」と帰結させていた。裏を返せば、王子様とやらが来るまではただ美しい姿で眠っていれば良い、という事であり、顔を上げて自分の道を歩むように、とは教えていないのである。「ママ」の言う「美しい」とは、例えば『Beautiful Fighters』の「乙女達」や、ここから3曲先に収録された『how beautiful you are』の「あなた」の生き方とは違う、表面的なものに過ぎなかったのだろうか。

「アタシ」が憧れるからには、「ママ」も「美しい」人なのだろう。それこそ待っているだけで「王子様」が寄って来たのかもしれない。そんな「ママ」に「アタシ」は、「愛」について「いくらで売っているの?」「ねぇ貴女はどこで買ったの?」と問う。愛を売り物だと認識している事からして暗澹たる気持ちになるが、ここで改めて楽曲タイトルを見てほしい。「次の愛」を主人公が探しているのなら、最初の愛は何だろう? 自分をいたずらに褒めそやした「ママ」に対するものなのか。あるいは一度、「王子様」らしき人に出会ったが、上手く愛を見つけられなかったのかもしれない。

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ the next LOVE 歌詞 - 歌ネット

 

 

Eyes, Smoke, Magic

作曲:Timothy Wellard

編曲:中野雄太

 

ブラスの音とコーラスが華やかなジャズテイストの楽曲で、やはりミュージカルのような雰囲気を漂わせている。電話のけたたましいコール音や笑い声が入り交じり、テンポを速めたり遅くしたり極端に揺らす様は何処かコミカルだ。

そんな曲調に載せて歌われる歌詞もまたおかしみを誘う……と思いきや、おどけた言い回しに騙されずによくよく読み解くと、なかなか辛辣な内容である。『the next LOVE』に続いてこの曲にも「ママ」が登場し、更に新しく「パパ」もいるのだが、二人の関係があまりよろしくないらしい。

テレビを見るばかりで他に関心を向けない「パパ」、そのせいで不機嫌になるものの直接不満をぶつける訳でもない「ママ」。主人公の「あたし」はそんな家庭の様子を「見て見ない」ふりをしてやり過ごしている。「そうあたしのベストフレンドは ダイヤモンドとローズ達」という歌詞を見るに、そういうゴージャスなものを持てるような家なのかもしれないが、「ママ」に「それ以上に価値があるモノ」を教わっていない「あたし」は、満ち足りていると言えるだろうか。この辺りの表面的な価値判断は『the next LOVE』にも共通する。

タイトルでもある「Eyes, Smoke, Magic」とはどういう意味だろうか。スラング的な意味があるとすればどなたか私に教えてほしいのだが、何にせよ、主人公の「あたし」が家庭の様子から目を背け、「ひっそりいくわ」という時の合言葉である。なるべく家の中の事に触れない術を身に着けてしまった「あたし」。この環境が気掛かりだ。

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ Eyes, Smoke, Magic 歌詞 - 歌ネット

 

 

Serenade in A minor

作曲・編曲:中野雄太

 

 

ストリングスのみで構成されたインストゥルメンタル。感傷的で、時に堪え切れない感情を吐露するかのようなメロディーを、タイトル通りAマイナーで奏でる。このシンプルなインスト曲の後、アルバムは『how beautiful you are』で感動的にパーティーの幕を下ろす。

 

 

how beautiful you are

 

3rdデジタル・ダウンロードシングル。当該記事を参照。

 

 

 

 

※「13thアルバム『Party Queen』(中編)」の『Letter』について、加筆修正しました。ニュアンスは少し変わっています。以前の書き方だと、解釈がかなり狭まってしまうからです。