黙ってayuを聞け

浜崎あゆみさんの歌 とりわけ歌詞の魅力を語るブログ

リミックス・アルバム『A Classical』

デビュー15周年記念の5ヵ月連続リリース第3弾。

MY STORY Classical』以来となる、クラシカルアレンジのアルバム。今作は一つのアルバムに限らず、シングル曲もアルバム曲も関係なく、この時点までのリリースから様々な名曲が選抜されている。強いて言えば『You & Me』『Song 4 U』『Missing』がリリース間もないところから選曲されており、ジャケットはミニアルバム『LOVE』のDVD付属盤のジャケット写真を鉛筆描きのイラストにしたものとなっている。

あゆのリミックス作品において元々オーケストラアレンジやクラシカルアレンジは多いが、今作の収録曲はオリジナルのメロディーやコード進行を概ねなぞっていることと、楽器の編成や展開によって壮大さが際立つことが特徴だ。他のオーケストラアレンジや、使う楽器によるイメージの違いを聞き比べるのも楽しい。

 

 

編曲:山下康介

 

高貴なイメージがあり、聖母マリアの生涯を描いた叙事詩を見ているかのよう。楽曲の後半に集中するサビに向けてゆっくりと激情を高めていくのは基本的に原曲に沿っているが、最初のサビで拍数の少ない力強いリズムを刻み、2回目のサビでは一度ストリングス中心に音量を落としてから、最後のサビで最高潮に達する。

 

 

Love song

編曲:山下康介

 

これから戦いに挑むかのような勇壮さに満ち溢れ、歌詞に込められた「ゆずれない想い」を力強く印象付ける。鋭く刺すような金管を中心に重々しく繰り返すリズムが心を駆り立て、鐘の音が厳かに響く。

 

 

SEASONS

編曲:石川洋

 

少し切ないイントロや、しんみりするAメロBメロと、一気に音量を上げるサビとの起伏の大きさから、これまで過ごしてきたいくつもの季節の重みが感じられる。『絶望三部作』の3作目である作品だが、サビで高らかに鳴る金管は過去を抱きしめ、未来を祝福しているのかもしれない。

 

 

You & Me

編曲:萩森英明

 

同じメロディーやコード進行、テンポでも、EDMの原曲とまるで印象が変わることに驚かされる。サビ前の木管の軽やかさ、サビのティンパニの力強さなどが、原曲とはまた違う高揚感を奏でる。破局を描いた歌ではあるが、これからの未来や、もしかすると新しい恋に向かって希望を持てるような明るさだ。

 

 

BLUE BIRD

編曲:森 悠也

 

さながら童話の『青い鳥』のような冒険に出たくなる、ドラマティックさとファンタジックさ。イントロはAメロとサビのメロディーを組み合わせてゆったりと幕開けを演出し、2番後の間奏は冒険の紆余曲折を表すかのようにくるくる表情を変え、最後は飛び立つ青い鳥を見送る朝の空を思わせる穏やかさで締めくくる。

 

 

Days

編曲:萩森英明

 

原曲の持つ優しくほっとするイメージそのままに、木管の温かさとストリングスのやわらかさが全体を包み込んでいる。このアルバムの中では比較的起伏は大きくなく終始穏やかで、歌詞の「君を想う」慎ましさをよく感じられる。

 

 

Voyage

編曲:山本清香

 

原曲がオーケストラサウンドを使っているので、オーケストラアレンジとの相性は言わずもがな。ストリングス中心に奏でるメロディーも引き継がれているが、Aメロ前の間奏には元々のやや劇的なイメージよりもやわらかさがある。コーラスをシンプルにした上で様々な楽器が奏でるメロディーを重厚に重ね、「長い旅路」の遥か先まで思いを馳せる。

 

 

Song 4 U

編曲:亀岡夏海

 

元々壮大でファンタジックな楽曲だが、このアレンジでは原曲の駆り立てる疾走感あるリズムとは違い、景色を俯瞰で見わたすような感覚がある。AメロBメロはストリングスの美しいメロディーに合わせつつ静かに流れ、サビは金管の掛け合うような重厚なハーモニーで解放感をもたらす。大作映画のクライマックスに合わせたくなる一曲。

 

 

Missing

編曲:山下康介

 

物語の悲劇的な場面を思わせる。原曲は畳みかけるようなリズムで哀切と激情とを表す曲調だが、このアレンジではゆったりとしたリズムの上に幾層にも重なるストリングスが、募っていく悲しみを淡々と、しかし確実に刻んでゆく。

 

 

Dearest

編曲:Yuhei Kobayashi

 

Dearest』にはPVも作られ頻繁に披露もされた「Acoustic Piano Version」や、そのアレンジ違いである「Acoustic Orchestra Version」が存在するが、このアレンジでは原曲のメロディーとヴォーカルを採用している。全体は穏やかながら、終わりの転調するサビに向かってゆっくりと盛り上げてゆく展開も原曲に沿っている。

 

 

※『again』の『Ivy』について、少し書き足しました。

また、「5thアルバム『RAINBOW』(中編)」の『Over』の編曲者、「4thアルバム『I am...』(中編)」の『Daybreak』の作曲者の表記を変えました。

それと、「再考:『Trust』」で何故か全て大文字で「TRUST」と表記していた事に今更気付いたので修正しました。