黙ってayuを聞け

浜崎あゆみさんの歌 とりわけ歌詞の魅力を語るブログ

リミックス・アルバム『Winter diary ~A7 Classical~』

冬をイメージしたクラシカルアレンジのアルバム。『A ONE』と『sixxxxxx』の収録曲から選曲されている。

今回のクラシカルアレンジは、荘厳なサウンドが特徴だ。いわゆる「Acoustic Version」のような優しく物静かな雰囲気とも、一つ前のクラシカルアルバム『LOVE CLASSICS』のような親しみやすさとも違う。壮大さは『A Classical』のアレンジにもあったが、今作は過去一番ではないかというほど音が重厚である。冬という季節の厳しさを感じたり、はたまた、クリスマスを始めとしたイベントを豪華に彩ったりと、様々な想像が出来そうだ。

ジャケットは、黒をバックにやや上を見つめるあゆの顔のアップ。

 

 

WARNING

編曲:大間々昂

 

「警告」どころか、最早逃れようのない断罪をされているかのような、厳しさと緊迫感。時折響く鐘の音や、駆け下りてくるストリングスなどが特徴で、1曲目から猛吹雪のごとき勢いである。

 

 

Step by step

編曲:門脇大輔

 

音は分厚く重なってはいるが、ストリングスが軽やかに跳ねてリズムを刻んでいる。わくわくと心を浮き立たせながら、「あと一歩」が少しずつ積み重なっていく様子が伝わってくるようだ。

 

 

Sorrows

編曲:石坂慶彦

 

出だしが静かだった原曲と違い、初めから劇的な音とメロディーが展開される。「多くの悲しみ」が折り重なるかのように全体が終始激しい。原曲ではか細く繊細に鳴っていたピアノがこちらでは力強い音で鬼気迫るメロディーを奏でており、ラフマニノフのピアノ協奏曲のような雰囲気がある。

 

 

Last minute

編曲:田渕夏海

 

こちらは元々持っている感情の起伏を生かし、原曲と同じく2番から曲調が激しくなる。砕け散った主人公の心が嵐に巻き上げられて消えてゆくかのよう。1番の後の間奏は原曲のメロディーが拍を長くして用いられている。

 

 

Summer diary

編曲:中村巴奈重

 

夏の一時を彩る歌がオーケストラサウンドにより、リゾートでの優雅なバカンスといった風情を醸し出している。ヴィヴァルディやヘンデルを思わせる上品さも感じられ、分厚い音は荘厳さと言うより、ラグジュアリーな気分を演出する。寒い季節にこそ焦がれる、暑い季節の想い出だろうか。

 

 

Sky high

編曲:やまだ豊

 

空高く、虹の向こう側に未知なる世界を見つけられそうな、壮大さと明るさを併せ持つアレンジ。ティンパニやシンバルなどの音が力強く響くが重々しさはなく、冒険ファンタジーを体感したような気分になる。

 

 

NO FUTURE

編曲:羽深由理

 

ハープシコードやオルガンがバロック音楽のような雰囲気を醸し出して始まり、スリリングなストリングスと不穏なまでに重たいティンパニが鳴り響く。容赦なく責め立てるような曲調が、主人公の余裕のなさと、行き詰まった二人の関係を強く印象付ける。

 

 

Out of control

編曲:田渕夏海

 

原曲にあるどうにもならない感情の激しさが強調されているが、金管の高らかな響きやウィンドチャイムのキラキラした音が、何処か解放感をもたらしている印象もある。いずれ主人公の孤独が報われる事を願う気持ちが湧いてくる。

 

 

The GIFT

編曲:中村巴奈重

 

ピアノが印象的なオリジナルに対し、チェロの低音が心地良い弦楽合奏とハープの音の優しさが手を取り合う、アルバムの中では穏やかで落ち着いたアレンジ。幸せに満ちたウェディングソングに、暖炉のような温もりが加わっている。

 

 

The Show Must Go On

編曲:兼松衆

 

理想のステージを目指して駆け上がっていくような疾走感あるオリジナルと比べ、今まさに威風堂々とステージに踏み出していく趣だ。サビは繰り返すごとに少しずつ印象を変え、強い意志を畳みかける。凜としたヴァイオリンソロが「wow wow yeah yeah」というコーラスと絡み合う場面も耳に残る。

 

 

Winter diary

作曲:小室哲哉

編曲:中野雄太

 

収録曲で唯一、既存作のアレンジではない新曲。とはいえ、クラシカルアレンジのアルバムによく似合う曲調で出来ている。

讃美歌のようなコーラスと、「Silent night, holy night」というクリスマスを讃える言葉。街の喧騒と、クリスマスに心を躍らせる人々が浮かんできそうな、温もりときらめきに満ちた曲調。しかし主人公の「私」は、そんな幸福感の真ん中にいる訳ではない。会える見込みのない相手を待っているのだ。

「私」の想いはひたすらに健気だ。「心のダイアリー」は「今も続いてる ずっと続いてる」と歌っている。現実は「逢えない夜が増えてく」「友達のままで ずっとこのままで いようねって離れたあの日」と、「君」は遠ざかっているのに。本当は「私」も、「もうきっと君は現れない 約束の場所には私ひとりで いるんだろう」と気付いている。今はただ、「これまでの愛しい 2人はダイアリーの中で 永遠になるよ」と、大切な思い出を見つめるしかない。やはり「永遠」は過去にあるもののようだ。「永遠になるよ」という歌詞には、どんな想いが、どのくらい含まれているのか。会えない現実に対する強がり、かつては確かにあった幸せを記憶の中で守り続ける純情……様々な想像が出来る。

何より悲しいのは、この楽曲が『Summer diary』の続編として位置付けられていることである。あんなに一途に可愛らしく願っていた日々は、結局叶わなかったという事なのか。唯一、「言えなかった言葉を今こそ 伝えに行こうか」と、待つだけではない歌詞があるところには、わずかな希望も感じられるのだが……。曲調があくまでも優しく温かいのは、ダイアリーの中の永遠を抱きしめているのか、まだ望みはあると思っているからなのか。

PVは『M(A)DE IN JAPAN』に収録。

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ Winter diary 歌詞 - 歌ネット