黙ってayuを聞け

浜崎あゆみさんの歌 とりわけ歌詞の魅力を語るブログ

3rdミニアルバム『LOVE』

デビュー15周年記念の5ヵ月連続リリース第1弾。

新曲3曲とリミックスで構成されたミニアルバム。時にドラマティックに、時にセンチメンタルに、時に優しくやわらかく、と、様々な系統の楽曲が並ぶ。

DVD付属盤、CDのみ盤、タイアップ盤の3形態でリリース。DVD付属盤及びCDのみ盤のジャケットはあゆの顔を正面からアップで撮ったもので、DVD付属盤はこちらを見つめ、CDのみ盤は目を伏せている。ナチュラルでどこか儚げなイメージだ。タイアップ盤はゲームのイラストである。

 

 

Song 4 U

作曲:HINATAspring、中野雄太

編曲:中野雄太

 

悠々とした出だしから大サビで幕を閉じる構成で、壮大なファンタジーを思わせるサウンドの楽曲。

「また明日ね」という、よく考えていなくても口をつく当たり前の挨拶。けれどその当たり前は「君が居てくれる」事で成り立っているのを「僕」は実感している。当たり前の貴重さを大切な人との関係で再確認する描写がここにも表れている。「光の向こうに 願ってる未来」がある「僕」の、「泣いたままで 君のままで」伝える声を「哀しみごと 抱きしめるよ」という覚悟は、並大抵のものではないだろう。

何の不安もない、という訳ではない。「今だってそんなに 自信はないよ 踏み出せない時もあるよ」と素直に口にする。単に強気一辺倒ではなく、弱い部分も見せるからこそ、その弱さを乗り越える想いの強さが分かる表現だ。それは「月も太陽も輝けないね」「空だって 飛べる気がする」という広々として大きなイメージにまでつながっていく。だからこそ、その広大さから最後の「ただひとり 君のためなら」とミニマムに焦点を絞った時に、途方もない覚悟が胸に迫るのだ。「2 U」「4 U」という表記に何となくプライベートな印象を受けるが、「君のための歌」を、あゆは誰を想って歌うのか。たった一人に伝えたい想いを強く持つ事が、逆説的に多くの人を惹きつけるのかも知れない。

PVは、黒い衣装と白い衣装を何種類かずつ来たあゆが同時に登場し、チェスのごとくゲームを進めていく。最後に黒と白が一つずつ残り、向かい合う場面は爽快だ。メイキング映像では、盤上で緻密に組まれたそれぞれの駒の動きをごく僅かなミスでこなすあゆの姿が見られる。

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ Song 4 u 歌詞 - 歌ネット

 

 

Missing

作曲:原一博

編曲:中野雄太

 

「逢いたい時に 逢いたいって」「寂しい時に 寂しいって」素直に言えたのはかつての話。その切なさを、繊細にセンチメンタルに響くピアノの高音が煽る。

この歌も「私」から「あなた」への強い想いが感じられるが、その表現は張り詰めた悲愴感に満ち、裏に一筋縄ではいかない事情を伺わせる。例えば、互いに信じあっている事を綴ってもいいものなのに、「私があなたの事を 信じられなくなる時 あなたも私の事を信じられなくなってる」と、わざわざ「信じられなくなる時」にフォーカスを当てているのだ。「あなたの強がりの中に 隠されている痛み」を見つけたことについても「抱きしめたくなっている」と感じるが、何故「あなた」は痛みを隠そうとしたのだろうか。

他方、「でも真っ直ぐに進んで行く」「この両手が 塞がっても 諦めない」という強い意志も見せる。しかしそれもまた「もう戻れない」という悲しい決意から来るものらしい。「逢いたい」「寂しい」という気持ちを素直に表そうにも、「自分の都合以外」「誰かの願い」があるためになかなか出来ないという。二人の関係は周囲から歓迎されないものなのだろうか。しがらみに苦しみながら、もがくように共に歩もうとする姿が見て取れ、胸が痛む。

PVは、ススキの茂る野原で、悲しみを堪え切れない様子のあゆが歌う。後ろで人が次々にゆっくりと浮かび上がっていく不思議な演出が、現実と幻の境を曖昧にさせている。

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ Missing 歌詞 - 歌ネット

 

 

Melody

作曲:星野靖彦

編曲:中野雄太

 

この上なく優しい空気に包まれたバラード。ギターとストリングスの柔らかい音が耳に心地よい。あゆはどんなメロディーを届けたいと思っているのか。この作品では激情を叫ぶのではなく、そっと寄り添うように語られる。

「陽が暮れる瞬間の 空が苦手だった あまりに綺麗すぎて まるで全ての終わりみたいで」という心情がまず語られる。「綺麗すぎる」事が苦手な理由になる独特な繊細さが、「その時間」を共に過ごした「君」が「ただ黙って」「涙拭ってくれてた」事の愛おしさに説得力を持たせるのだ。そうして「僕」は、「ありのままでいられる」心地よさを知り、自分もまた「悲しいメロディーしか聴こえない」日の「君」でも「変わらずに愛おしいよ」と受け止める。「君の左側から見える景色が指定席で」あることが「空気のように 風が流れるように」と表現されているのを見るに、心安らぐ関係性なのだろう。「君」が大切な人となり、共に過ごすことがごく自然になっていく実感が、飾らない優しい言葉の連なりにも表れている。

「君に送る僕からのメロディー いつの日か2人で奏でられたらと」。優しく語り掛けるようにあゆは歌う。「僕らだけのペースで」「2人で育てて」と、丁寧に慈しむ様子が描写される。メロディーとはもしかしたら、2人の間にある愛そのもののことかもしれない。「最後のメロディー」は「どうか穏やかで優しい音でありますように」という「僕」の願いが叶うように、聞き手もまた2人を見守っていたくなる。

PVは『LOVE again』に収録。当該記事を参照。

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ Melody 歌詞 - 歌ネット