黙ってayuを聞け

浜崎あゆみさんの歌 とりわけ歌詞の魅力を語るブログ

43rdシングル『Mirrorcle World』

デビュー10周年記念シングルとしてリリース。タイトル曲は9thアルバム『GUILTY』収録の『Mirror』をフルコーラス版にアレンジしたもの。

2ndシングル『YOU』と5thシングル『Depend on you』のどちらかをリアレンジ・新録ヴォーカルしたものを「10th Anniversary version」として収録し、更にそれぞれがCDのみとDVD付属盤があり、計4形態となった。あゆが10年を経て確立した歌い回しで初期の楽曲を聴けるのが面白い。DVD付属盤の初回盤は縦長スリーブケース仕様。ジャケットはバストアップで肌を見せ、色とりどりの蝶を誘うあゆ。それぞれの形態で少しずつポーズが違う。

 

 

Mirrorcle World

作曲・編曲:中野雄太

 

大元の『Mirror』自体、ワンコーラスながら様々な展開を見せる作品だったが、フルコーラスになったことで更にドラマを見せる、プログレッシヴ・ロックの趣のある大作となった。ストリングスのたゆたうシンフォニックな始まりから、『Mirror』の出だしと同じ部分が登場し、軍靴のような独特の緊迫したリズムを刻む。2番の後には縦横無尽のギターのパート、鏡に乱反射する光のように幻想的なパートがあり、何かが割れる音と共にまた緊迫したリズムに戻る。そして『Mirror』のラストへと繋がるのだ。

「現在(いま)のこんな未来を僕は想像してただろうか? 現在のこんな未来を君は想像してただろうか?」。この歌詞が、10周年記念シングルとして歌われる意味を考えたい。このときのあゆの立ち位置は、駆け出したときには想像もしていなかったものなのだろう。では、それをあゆはどう捉えているのか? 『Mirror』でも書いたように、これが自分との対話だとすれば、「君」は過去の自分? 今の自分の内面? 「始まりなのかって? 終焉なのかって?」「身を任せんのかって? 食い止めたいのかって?」と逡巡する様子に胸がざわつく。

「このまま加速度だけが 増し続けたら.....」という歌詞に、『too late』の「世界が逆に周り始めてる 加速度ばかりが増してる」という戸惑いを思い出す。あれから年月を経ても、あゆは目まぐるしく変わる世界への危機感を拭い去ることが出来なかったのだろうか? 「ただ前に進め」と言ってくる「あなた」の期待を、「僕」は痛いほど感じている。「泣かないでいられるのは 強くなったから それとも.....」と、答えの出ない問いを残して歌は終わる。タイトルは「mirror」と「miracle」を合わせた造語と思われるが、鏡にはどんな世界が映っているのだろう? 「奇跡」のように素晴らしいのか、やはり鏡像ゆえに現実味に欠けるのか。そもそも、目で見た世界と鏡の世界、どちらが本当の姿なのか?

PVはパリを舞台に、謎の男達に追われるあゆを描く。豪奢な真紅のドレス姿や、真っ黒なアイメイク、電話ボックスから鋭い眼光で睨みつける場面など、目まぐるしい曲調に相応しく見どころが盛りだくさんだ。

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ Mirrorcle World 歌詞 - 歌ネット

 

 

Life

作曲:湯汲哲也

編曲:中野雄太

 

展開に次ぐ展開のタイトル曲と打って変わって、やや感傷的で哀愁の漂うロックバラード。2番の後の間奏で一度3拍子になるという特徴がある。

突然の出来事に襲われた「僕」。受け止められず、「誰か笑ってよ」と思ってしまう。何が起きたかは明言されていないが、悲劇であることは伝わってくるだろう。当たり前の日常が崩れ去ってしまった実感とは裏腹に、「街は今日もまたまわり続け」る。「ねぇ僕には一体何が出来る」「ねぇ君にはどんな風に映ってる」という主人公の問いは心許なげだ。しかし当たり前にあると思っているものが「在って当然なんかじゃない」ということを「君」に教えられたと感じ、「奇跡を起こすんだ」と強い決意で結ぶ。

平穏な日々にあるとき、それが当たり前に続くと思いがちな我々の胸を、この作品はついてくる。一つの命、一度の人生を生きるとは、本当はかけがえのないことなのだ。残念ながら「当たり前」を失ってやっと、それに気付くことも多い。だからこそ悲劇の向こうの「奇跡」を求める主人公の姿に、光射すようなイメージを湧き起こされるだろう。

アルバム収録も未だされたことのないカップリングという、ささやかな立ち位置のこの作品だが、歌番組で披露されたことがある。東日本大震災からひと月も経たないその日、被災地へのメッセージを多くのアーティストが歌った。あゆはいつもの華やかな衣装ではなく、ラフな服装と裸足で登場した。「あまりにも突然すぎた」「ねぇ僕には一体何が出来る」「当たり前の様にいつもあると 思っているものは決して 在って当然なんかじゃないんだ」……状況に寄り添うような歌詞に、視聴者も心打たれたのではないだろうか。「奇跡を起こすんだ」という最後の一文が希望と共に響いた。

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ Life 歌詞 - 歌ネット

 

 

YOU (10th Anniversary version)

編曲:中野雄太

 

2ndシングルをリアレンジ、ヴォーカルを新録。

原曲のきらめくようなサウンドを大切にしつつ、どこかノスタルジックなアレンジとなっている。

 

 

Depend on you (10th Anniversary version)

編曲:CMJK

 

5thシングルをリアレンジ、ヴォーカルを新録。

原曲のシンセサウンドはやや抑えられ、アグレッシヴなギターを強調したバンドサウンドに寄っている。

再考:『LOVEppears』(後編)

 参照:2ndアルバム『LOVEppears』(後編)、及び各シングル(リンクは各タイトルから)

 

 

WHATEVER

全体としてノリの良い曲調で、特にVersion Mの方は早いテンポと突き刺すようなサウンドが特徴的だが、描かれる主人公の姿は心が痛むほど健気だ。「長かったよ もう少しで 凍えそうで目を閉じてた」と、長く耐えてきた日々を振り返る。気持ちを届けられる保障がなくても「揺るぎなく信じる力がここにはある」と言い切り、「平気になったら 笑えばいい」と自らを奮い立たせる。「凍えそう」な状態から「温かい日陽し浴びれる」という期待は、厳しい冬の中で春を待ち侘びるかのよう。「日陽し」を浴びながら、二人の絆が温かく結ばれることを祈りたい。

 

 

appears

「appear」という単語には、「現れる」「姿を見せる」という意味と、「……のように見える」という意味がある。後者で使う場合、「実際のところ、見えている通りであるとは限らない」というニュアンスが含まれる。日本語を母語とするあゆが多くの作品で英語のタイトルを付けていることで、聞き手には含みを類推する余地が生まれるが、『appears』というタイトルには唸るしかない。幸せそうな恋人達はうまくいっている「ように見える」。しかしよく目を凝らせば、決して綺麗事ではないふたりの真実が「現れる」。鋭く現実を突き付けてくる歌詞をこの上なく表した一言なのだ。

PVでは、様々に姿を変えながら街を歩くあゆが登場する。どんな姿をしてもあゆはあゆだ、と言いたいところだが、果たしてあゆは「真実(ホントウ)」をどれほど見せているのか?

 

 

LOVE ~Destiny ~

LOVE ~refrain~

~Destiny~』では、「ただ出会えたこと」「ただ愛したこと」を「忘れない」と心に決め、『~refrain~』では「ありがとう」とまで言う。破局は悲しいことだが、「あなた」を誇りに思う気持ちが自然と生まれる状況で別れを受け入れたのだろう。

そして『~Destiny~』で新たな自分に気付いた更にその先、『~refrain~』では誰もが「悲しく美しい孤独」を描いたり、「何かを犠牲にしては 新しい何かを手に入れてきた」りしたのではないか、と普遍的に考える。永遠なんてなくても、上手くはいかなくても、恋はこうして何かを残していく。

~Destiny~』のPVでは、スターとしての生活の合間に、独りで思いに耽るあゆを映す。世間から見えないところでどんな想いを抱き、どんな経験をして、それを作品へと昇華するのだろうか。シングルで初めてチャート1位を獲得したことを考えると、これまでのPVが断片的に映っているのは素晴らしい演出である。

 

 

Who...

特に印象深いのは、「ふたり離れて過ごした夜」や「ひとりつぶやいていたよ」という歌詞ではないだろうか。辛い時にそばにいたり、本当の強さを教えてくれたりと、たくさんの場面での「誰か」を思い出しているのに、「ひとり」という対比がある。もしかしたら「ふたり」は離れたきりで、もう一緒ではないのかもしれない。それでも、様々な瞬間のその人を思い出しながら、「あなたに届く様にと」歌う。そして「あなた」への想いがそのまま、アーティストとして聞き手に歌を届ける姿勢に重なる。だからファンは、この歌を愛さずにいられないのだ。

再考:『LOVEppears』(前編)

参照:2ndアルバム『LOVEppears』(前編)、及び各シングル(リンクはタイトルから)

 

 

話題になった「白あゆ」「黒あゆ」は、いずれも長い髪を胸元に流し肌を晒すインパクトの強いジャケットだが、このアルバムのコンセプトは「目に見えるものと真実のギャップ」である。曝け出しているのか、そうと見せかけて何かを隠しているのか。我々はただ、あゆの綴った言葉を読み込んでいく外はない。

 

 

Fly high

タイトルや楽曲の高揚感とは裏腹に、飛び立つどころか躊躇してきた過去を振り返っている。「離れられずにいたよ ずっと」というサビもそうだし、「どこかの誰かのこと ふり返ってながめてはうらやんだり」という描写には聞き手にも思い当たる節があるのではないか。「踏み出せずにいる一歩」が「長く長い道」に相当するほど、そのツケは大きかったようだ。けれど「君に出会えたから」何かが変わり、「全てはきっとこの手にある」という確信へと繋がって行く。「飛ぶ」や「翼」のような言葉が歌詞本編に出てこないのに、主人公はタイトル通り高く飛べたのだろうと思い浮かぶから不思議である。

 

 

Trauma

残酷な時間を重ねて今がある。だから「やがて訪れる恐怖」の存在は分かっているけれど、それでも人を求めてしまう。人の悩みは大概が人間関係についてである、と言われるが、この歌で歌われる「傷」もやはり、人と人との心の間で生まれたものだろうか。傷付いてなお誰かを必要とし続けるのは、なるほど「狂気」と呼べるかもしれない。けれど「正気」も「狂気」も「どちらも否定せずに」と主人公の「私」は言う。相反する自分自身を受けとめ、簡単に癒されはしない「傷」を「あの人」に見せたいのだと気付く。苦しみを伴いながらもトラウマと向き合う「私」の姿勢は、愚直そのものだ。

 

 

And Then

淡々とシビアな空気が作品を貫く。「悲しみも苦しみも何もかも分け合えばいいんじゃないなんて カンタンに言うけどねそんなこと出来るならやってる」というもどかしさは、前曲で深い傷でさえ「あの人に見せたい」と言っていたのとは対照的な心情である。この歌は「ふたり」について語られているが、関係性の固まっていないような印象だ。「いつか完全な ものとなるために なんて言いながら」という結論を出さない言い方や、「分け合うことは簡単ではない」という実感から察するに、ふたりはまだまだこれからなのだろうか。「この街を出て」それから始まるのかもしれない。

 

 

immature

この歌は、どうしてこうも切実に響くのだろうか。「そんなにも多くのことなど 望んだりはしていないよ」「もう何も見たくなかったんだ」「守られなかった約束にいちいち 傷ついてみたりしてたんだ」……脆く繊細な心を抱えた「僕ら」の姿が思い浮かぶ。「幸せになりたい」と言わず、「幸せになるために 生まれてきたんだって 思う日があってもいいんだよね」と控えめに過ぎる願いが痛みを伴って突き刺さる。けれど「目の前の悲劇にさえ対応できずに 遠くの悲劇になど 手が届くはずもなく」という歌詞は、裏を返せば、様々な悲劇が起きる世界を前に、何かできないかと考えているようにも見える。主人公は傷ついたまま無力に打ちひしがれているわけではない。だから最後のフレーズが、メジャーに変わるメロディーと共に光をもたらすのだ。

 

 

Boys & Girls

TO BE』、『Boys & Girls』、『A』、そしてこの『LOVEppears』は、歌詞カードのアートワークが一本の糸で繋がるような演出がなされている。何らかの意図があるのか、ちょっとした遊びなのか。この4枚は、加速度をつけてあゆを頂点に押し上げた。いずれも代表曲となった『TO BE』や『Boys & Girls』にはまだあの「A」のロゴマークがあしらわれていないなんて、今やどれくらいの人が知っているだろうか?

「“シアワセになりたい”」と言った回数は数知れず、「一体どこへ向かうの」という問いへの答えは「持ち合わせてない」。「少し戸惑ってた」こともある。それでも「この夏こそはと 交わした約束」を胸に、誰にも止められない勢いで輝き出す。唸るようなギターが支えるシンセサウンド、特にサビの前の4拍のカウントが興奮を煽る。聞き手の熱を高めるこの作品は、あゆ自身をも鼓舞したのだろう。PVで様々な光をまとうあゆも、「輝きだした」という表現に相応しい。

 

 

TO BE

あゆの初期作品において、自分が姿を消したら探してくれる人はいるだろうかと考えてしまう『Hana』や、「詞でも書いたかのような気になって」と自嘲気味の『And Then』のように、自分の価値に確信を持てない描写は、孤独感と相まって切ない痛々しさを響かせる。

TO BE』での「ガラクタ」という物言いも、恐らくはあゆ自身に向けられていて、だからこそ「宝物」だと言って抱え続けてくれた「君」に、「君がいなきゃ何もなかった」という感情を湧き起こすのだろう。「君」に自分の存在そのものを支えられ、「決してキレイな人間(マル)にはなれないけれどね いびつに輝くよ」と自分なりのスタンスを見つける。ピアノとギターを感傷的に奏でながらも優しい光のように満ちてゆくこのバラードが、代表作の一つになったのは必然の流れだ。

もちろん、聞き手は自分にとっての「君」を思い浮かべていい。それが「あゆ」であってもいい。

 

 

 

 

元記事の『LOVEppears』と、『appears』の記事に、『LOVEppears / appears -20th Anniversary Edition-』について書き加えました。

 

再考記事ではアルバムの全ての曲を再考する訳ではありません。逆に、アルバム未収録の楽曲でもまとめて再考することもあります。

自分にとって、最初の記事で書き足りない部分があったかどうかで再考を判断しています。

「書き足りない」というのは内容であって、必ずしも分量ではありません。最初に再考した『絶望三部作』は、元の記事もそれほど短い訳ではないのですが、もう少し書きたいことがあったので記事にしました。

9thアルバム『GUILTY』(後編)

〔『GUILTY』の記事 【前編】 【中編】 【後編】

 

The Judgement Day

作曲・編曲:CMJK

 

インストゥルメンタル。オルガンの音と荘厳な鐘の低い音が重々しい空気を醸し出し、あゆの「ラララ……」というヴォーカルが緊張感を伴って現れる。運命の時を前に鼓動が早まるかのようにテンポが上がるが、その後一気に解放されたような曲調となる。審判の日、罪人にどんな裁きが下ったのか想像してみよう。この辺りから、暗鬱だったアルバムに光が差す。

 

 

glitter

41stシングル。当該記事を参照。

 

 

MY ALL

作曲:湯汲哲也

編曲:HΛL

 

ファンの胸を熱くさせる歌がまた一つ誕生した。ライブの終盤を飾る楽曲として定着していく今作は、真っすぐ胸へと入り込む王道ポップスと言うべきメロディーに、あゆの想い溢れる歌詞が載せられている。

主人公の「僕」は、「どれ位の時間」「どれ位の距離」を「あなた」と共に来たのか、と振り返る。楽しいことばかりではなかったし、つらい夜もあった。けれど悔やんではいない。「完璧じゃなくともキラキラした 結晶」とその日々を誇る。「いつでも ひとりじゃなかったから」と。アルバムの中での過去の見つめ方としては、『GUILTY』で逃れられないという恐れを抱き、『Marionette』ではそれでも進んできたと奮い立ち、そしてこの歌で誇りに思う境地に辿り着いたとも言える。

一番のサビでは「あなたに夢を見せたい」「あなたを守って行きたい」と「僕」の抱く想いを、二番では「あなたの笑顔が見える」「あなたの愛を感じる」と「あなた」から受け取ったものを歌い上げている。いずれも「僕」の「あなた」に対する感謝と愛おしさで満ちた表現だ。「あなた」とは、愛する人や、支えてくれる人々かもしれないし、ライブの盛り上がる場面で歌うとあれば、聞き手一人一人の事だと受け取って良いだろう。特に「あなたに夢を見せたい」や「その笑顔が見たくて 今日も僕は生きてます」などの歌詞は、ファンの涙腺を緩ませるに違いない。

MY STORY』収録の、同じくファンに呼びかけていると取れる楽曲『Replace』のように、新たな道へと旅立つ場面もイメージできそうだ。

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ MY ALL 歌詞 - 歌ネット

 

 

 

reBiRTH

作曲・編曲:HΛL

 

インストゥルメンタル。透明な光が満ちてゆくような、解放感のあるゆったりとした楽曲。審判を経た罪人が、「生まれ変わる」機会を得たのだろうか。

 

 

untiltled ~for her~

作曲:多胡邦夫

編曲:小林信吾

 

歌詞カードの最後には、英語で「このアルバムを大切な人に捧げる」という旨のメッセージが書かれている。この歌はその想いを込めた1曲であろう。

まさに天国から聞こえてくるような、優しく穏やかな楽曲に載せ、「私」は「君」との思い出を語る。「些細な事に泣いたり笑ったり」したこと、「くだらない喧嘩」もしたこと……。そんな「君」は、「あの雲を越えて空へと続く 果てなき道のり」を一人で行ってしまった。叶うならもう一度会いたい。話したい事がたくさんある。主人公の願いは落ち着いた口調ながら、切々と胸の張り裂けそうな心境が伝わってくる。

「君」の死を示す「あの雲を越えて~」という表現からは、悲愴なイメージよりも、遥かな道を行く清らかで悠々とした景色が思い浮かぶ。それは「私」が「君」にそうあってほしいという気持ちの表れだろう。なぜならその道は「いつかは誰もが辿る」のであり、いずれ自分にもその時が来たら「君」と再会したいと願うからだ。自分にもいつか死が訪れるという自覚と、きっとまた逢えるという希望、これは今までの死別がテーマの作品にはなかった視点である。色褪せない日々を抱え、主人公は空の向こうの「君」を想い続ける。

自らの内面と深く向き合う『GUILTY』というアルバムは、こうして最後に誰かの想いを湧き起こすようにして幕を閉じるのだ。

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ untitled~for her~ 歌詞 - 歌ネット

 

 

 

 

『GUILTY』前編の記事に、初回盤付属のフォトブックについて書き加えました。

 

9thアルバム『GUILTY』(中編)

〔『GUILTY』の記事 【前編】 【中編】 【後編】

 

GUILTY

作曲:湯汲哲也

編曲:CMJK

 

アルバムタイトルを冠したのは、不安と焦燥を煽るようなメロディーの、ミディアムテンポのロック。ずんとした重さと、鳴り響く鐘の音が罪悪感を際立たせる。

「いくら逃げても 逃れられない どこまで過去は 追いかけてくる」と、竦み上がるような告白から始まる。主人公の「あたし」は、その過去を「君」にまだ言えない。「君」が何もかも解った上で微笑んでいることを察していながら……。「聞かないで」「言わないで」という懇願、「もう少し あと少し」と縋るかのような必死さ。言葉の一つ一つにのしかかるような苦しさがある。

「過去」とは罪のことだろうか? 犯した罪はその人そのものであるかのように、いつまでもついて回るものである。もちろんこの“罪”なるものが、法律上の罪とは限らない。あるいは、「君」に「過去」を言わないことそれ自体も、「あたし」にとっては罪悪感の元なのかもしれない。

もし「あたし」が「君」に「過去」を打ち明けたとしたら、「君」はどんな反応をするのだろう? もう解ってはいるらしいその「過去」を受け止められるのか、許せるのか。曲調も歌詞も、暗鬱な引っ掛かりを残していく。

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ GUILTY 歌詞 - 歌ネット

 

 

fated

41stシングル。当該記事を参照。

 

 

Together When...

1stデジタル・ダウンロードシングル。当該記事を参照。

 

 

Marionette -prelude-

作曲・編曲:中野雄太

 

タイトルの通り、次の『Marionette』につながるインストゥルメンタル。オルゴールのような音や、ねじを巻く音、鐘時計の音が入り混じり、可愛らしくも何処か不安を煽る、ちょっと怖い童話のような雰囲気である。

 

 

Marionette

作曲・編曲:原一博

 

先ほどまでのインストゥルメンタルが織り成した空気に、更にドラマ性を加えたような、童話的なメロディーと力強いロックが入り混じる作品。三拍子のリズムを刻む。

美しく見えてしまう想い出、けれど「僕達」は「それだけではない」と本当は知っている。通り過ぎたからこそ振り返られる「過去」というものへの冷静な視点が伺える。「立ち止まってはまた進んだ」主人公達は、実際には美しいばかりではなかった過去を見つめながら、それでも引きずられまいと、どれほどの苦悩を重ねたのだろうか。これはアルバムタイトル曲『GUILTY』において逃れられない過去を恐れ、逡巡している様子とは、全く逆の姿勢と言えるかもしれない。

サビではゆっくりと噛み締めるように、そして力強く、「死んだような 顔を隠して生きる為 生まれて来た訳じゃない」と歌われる。自分を人形のごとく操ろうとする存在を断ち切ろうと、奮い立つかのようだ。生きる目的を自分で模索する、強い決意が表れた作品である。

PVでは、影が落ちた部屋の中であゆがうたた寝をしており、オルゴールの上のマリオネットとしてもうひとりのあゆとダンサーの男性達が踊っている。時折テレビの画面にまた別のあゆの幻影も映る。歌の内容の通り、マリオネットが徐々にその意思を露わにしていくストーリーだ。

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ Marionette 歌詞 - 歌ネット

9thアルバム『GUILTY』(前編)

ヒョウ柄をあしらっているということで、3rdアルバム『Duty』以来の“ヒョウあゆ”である。ただ、『Duty』が一貫してヒョウそのものに扮したあゆだったのに対し、今回のあゆはジャケットでヒョウ柄のドレスをまとっており、歌詞カードではそれ以外にも多彩な衣装で登場している。CDのみ盤のジャケットは全身、DVD付属盤はバストアップで、長いトゲのついたネイルが目を引く。DVDには、シングル含む5曲分のPV及び『glitter/fated』のショートフィルムとそれぞれのメイキングを収録。CDのみ盤とDVD付属盤のどちらにも、初回限定でフォトブックが付く(内容は同じである)。

全体的な雰囲気は、やはり『Duty』のように色濃い影をまとい、あゆ独特の自省的でダークな作品が並ぶ。「義務」もなかなか厳しい言葉だが、「有罪」は更に重苦しい。一体あゆにどんな罪があったと言うのか? どんな罰が待っていたのか? 許しは与えられるのか? その答えを見届けよう。

 

〔『GUILTY』の記事 【前編】 【中編】 【後編】

 

Mirror

作曲・編曲:中野雄太

 

緊迫したリズムを刻むロック。ワンコーラス分の長さの楽曲だが、目まぐるしい展開の数々が心を掴んで離さない。「始まりなのかって? 終焉なのかって?」といった、相反するものを並べる鋭い問いかけの数々は「君」と「僕」に向けられているが、「鏡」というタイトルから察するに、やはりこれも自問自答だろうか。

後に43rdシングル『Mirrorcle World』としてフルコーラス版へと生まれ変わる。

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ Mirror 歌詞 - 歌ネット

 

 

(don’t)Leave me alone

作曲:湯汲哲也

編曲:HΛL

 

LOVEppears』であったり『(miss)understood』であったりと、二律背反から微細な心情をすくい取るあゆの感性が、この作品でも光っている。「ひとりでいさせて」もしくは「ひとりにしないで」。攻撃的なロックナンバーでありながら、奥底の心情を丁寧に読み取りたくなる。

「いい人ぶりたいんなら 他でやったら?」「哀れんだ眼差しに 吐き気がするわ」と、主人公は「あなた」を手厳しくなじっている。あゆ作品の歌詞で、ここまでキツい言い方で相手を批判しているのも珍しい。だが、ただ責め立てるだけの歌かと思いきや、「受け止めたりしないで だってその手は冷たい」「優しくなんてしないで」というサビ、2番の「笑ってない笑顔が 一番こたえるの」という部分に、主人公の弱みが見え隠れする。表面的には、「あなた」は優しく笑みを湛えているような人物であり、こんなふうに責められるべきではないように見える。「いい人ぶる」どころか、ある意味では本当にいい人なのかもしれない。しかし主人公にとっては、そんな「あなた」の態度こそがつらいものなのである。

最後の一行は、これまでの全てを覆すかのような強烈な印象だが、その実主人公の言いたいことは一貫しているのだ。本当は「あなた」に、自分をひとりにさせない存在であってほしい。だからこそ、ただ優しさを与えられるくらいなら「いっそ罵ってよ」「いっそ突き放して」、そして「ひとりでいさせて」と願ってしまう。散々並べたキツい言葉が、かえって主人公の繊細な本音を浮き彫りにする、その構造が鮮やかだ。

PVでは、迷路のような道をあゆが歩いていくうちに、女性ダンサー達と出会っていく。あゆが締めているネクタイの色に注目してほしい。

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ (don't)Leave me alone 歌詞 - 歌ネット

 

 

talkin’ 2 myself

42ndシングル。当該記事を参照。

 

 

decision

42ndシングルのカップリング。当該記事を参照。

1stデジタル・ダウンロードシングル『Together When...』

Together When...

作曲:多胡邦夫

編曲:CMJK

 

初めてデジタルダウンロードのみでリリースした楽曲。愛する人との離別を歌った哀しく美しいバラードは、ピアノがしんしんと鳴り響き、冬を切ない色で染める。“ジャケット写真”は白い敷物の上に横たわる、白い衣装のあゆ。

「背を向けたまま振り返らずに」歩き出したふたり。「変わらないひとつのものを 見つけたと信じていた」はずだったのに……。「僕」はそうしてひとり、新しい道を選ぶ。吹き抜ける風に「君」のような優しさを感じたとき、「僕」は何を思ったのだろうか? その優しさに背を押されたかもしれないし、優しい「君」がいなくとも進むしかない悲しみを噛み締めたかもしれない。

サビの歌詞には、「僕」が言いたくても言えなかった言葉が二つ登場する。「ありがとう」と「愛してる」。「ありがとう」は、「永遠のサヨナラ」のようで言えなかった。一方「愛してる」を言えなかったことは、「最大の嘘であり真実だった様な気がする」と振り返る。愛しているはずなのに離れてしまう、そのどうしようもない哀切が、一見相反するこの表現に溢れているのだ。

「僕」は、いずれまた「僕」に生まれ変わって「君」を探す、と言う。この未練の残し方が印象的だ。つまりは、現世で再び結び合うことは諦めているのである。しかも、「君を探」したとして、そのときこそ愛を貫けるのか、そもそも現世と同じく「君」に出会い、想いが通じ合うのか、そこまでは断言できない。歌の最後には「もしも別の誰かに生まれ変わっても」とまで言っているが、その強い想いとは裏腹に、「君を探す旅」の行く末は不確かだ。『fated』では「運命の出会い」の先にすら待ち構える悲劇を描いていたが、この作品にも似たような前提があるのだろうか。来世での確証はなくても、その時こそは共に歩みたいとささやかに願い、「君」を探すだろう……そんな「僕」の姿は、ひどく健気で痛ましいと言う外ない。

PVでは、街角で行われる人形劇をあゆが眺めており、やがて劇中のマリオネットとあゆの記憶がシンクロしていく。雨のシーンでのマリオネットは本当に可哀想で、胸が締め付けられる。

 

 

歌詞リンク: 浜崎あゆみ Together When... 歌詞 - 歌ネット

 

 

10月2日、あゆの誕生日です。おめでとうございます🎂💐

そして当ブログは昨日、1周年を迎えました🎊

あっと言う間の1年でした。投稿のペースが早いのか遅いのか分かりませんが、こうしてあゆ作品について考えていると、改めてあゆの綴った言葉が持つ魅力に気付かされます。

これからの1年もまた、あゆにとって幸せで、クリエイティヴな年でありますように🎶!