歌詞カードにあゆの一日を追った写真が載せられているのは1stアルバム『A Song for ××』以来だが、『A Song for ××』がプライベートなイメージの静かなものだったのに対し、今作はスターの華やかな一日といった趣である。ジャケットは一日の最後に出てきたキュートなランジェリー姿のあゆ。DVD付属盤のうち初回盤には4種類のジャケットが存在する。DVDでは7曲のPVと、そのうちシングル収録分だった4曲のPVのメイキングが見られる。
語弊があるかもしれないが、とても“あゆっぽい”アルバムと言える。『A Song for ××』を原点とし、『LOVEppears』のキャッチーさ、『Duty』のダークさ、『I am...』のハードロック路線、『RAINBOW』の新境地、濃厚な『Memorial address』を全て踏まえた上で、振り子を上手いこと真ん中に戻したようなまとまりがある。その“あゆっぽさ”を、比較的新しく参加した作曲家の方々も一緒に手掛けているのは興味深い。鍵の意匠が施された『MY STORY』というタイトルロゴを深読みするなら、一日の流れに沿ってあゆが自分の「物語」を打ち明けようとしているのだろうか。今作はアルバム曲の割合が多いが、一方でアルバムタイトルを冠した曲が収録されていないのはフル・ミニを通して初めてである(『LOVEppears』と『RAINBOW』はちょっと訳アリだが)。
また、歌詞カードのクレジットを見ると、あゆがコーラス部分も歌っている作品が多いことが分かる。これまでもあゆ自身のコーラスと思われる作品はあったが、きちんと分かるように記したところに、あゆの何らかのアプローチがあるのかもしれない。
〔『MY STORY』の記事 【前編】 【中編】 【後編】〕
Catcher In The Light
作曲・編曲:CMJK
ワクワクするような出だしから、カッコいいロックサウンドを響かせる。短いが歌詞のある曲。スターからのありがたい格言なので、特に大きな夢がある人はしっかり聴くように。
歌詞リンク: 浜崎あゆみ Catcher In The Light 歌詞 - 歌ネット
About You
作曲:菊池一仁
編曲:tasuku
『MY STORY』もロックナンバーの多いアルバムだが、それらは『I am...』の頃から続いてきたハードロック路線に比べると、ハードさやヘヴィーさにおいては幾分角が取れ、キュートさや華やかさが絶妙に加わっている印象がある。前曲の短い序章に続いて放つこの『About You』は、その一つであり、このアルバムをリードする存在だろう。
人は誰もが心に闇を持っているゆえに、時々、思うように生きられない。痛みを誰かと分け合うことだって難しい。それでも「向き合いたいと思える人」に出会うこともある。主人公の「私」にとっては、それが「あなた」だったのだ。初めの歌詞に沿えば、「あなた」もまた闇を持つ人間であろう。「私」は「目には映らない 形のないもの」を信じられる素晴らしさを感じ、「あなた」が投げやりにならないことを願う。飾らない「あなた」自身を、「私に響かせて」と呼びかける。
「何も犠牲にせず 欲しいものだけを全て 手に入れる事が出来た人だなんて どこにいるって言うの」というフレーズは、スーパースターの教訓かもしれない。「私」は「あなた」の中に、自分が失ったものを見いだし、眩しさを感じている。「私」が得たものと失ったもの、「あなた」の持つ眩しさが何であるかは聞き手の想像に委ねられているが、ともかく、人は相手について深く知りたいと思ったとき、自分の深みにあるものとも向き合うことになるのだろう。
歌詞の内容はそれなりにダークだが、曲調のスタイリッシュな雰囲気もあいまって、深みに引きずり込まれることはない。むしろ、闇を抱えながらも凜と生きて行こうとする主人公の姿が見て取れるようだ。
PVでは、薄暗い洞窟のようなところで、怪しげな雰囲気の中、あゆがパフォーマンスをしている。透明な箱に閉じ込められているシーンが意味深。
歌詞リンク:浜崎あゆみ About You 歌詞 - 歌ネット
GAME
作曲:BOUNCEBACK
編曲:HΛL
ミラーボールのようにきらびやかな、ミディアムテンポのシンセロック。
歌詞は『Real me』でも描かれたような、強い女性像を前面に出した内容となった。「我が名は“女性”」というちょっと不思議なタイトルも、中身を見れば納得である。「光るモノとかわいいモノ」が好きであると同時に、「よりクールでタフなものも この頃じゃ大切」であると、はっきりと自分の主張を打ち出す。「胸が痛む夜」もあるが、優しさ、そして強さを得る糧としていく。「涙が武器だなんてねぇいつの話」と言い放つ様は痛快だ。「私達」は人形じゃない、「都合よく存在してる訳じゃない」し、「そんなにも単純な生き物じゃない」。鋭いメッセージが次々と刺さる。
『Real me』は初の英語詞、珍しいR&B路線、PVでの本格的なダンスと、あゆの挑戦が光った。「(強い)女性」を歌ったこともその一つである。今作は英語詞はなく、曲調もあゆとしてはなじみ深い路線だが、そこでまた「女性」というテーマを持ってきたことがおもしろい。実際、これ以降も「女性」をテーマに打ち出した作品はいくつも発表されていくことになる。
なお、後にPVが制作され、35thシングル『STEP you/is this LOVE?』のDVDに収録された。PVについては『STEP you/is this LOVE?』の記事で述べる。
歌詞リンク:浜崎あゆみ my name's WOMEN 歌詞 - 歌ネット
WONDERLAND
作曲・編曲:CREA
「CREA」名義で作曲活動もしてきたあゆが、初めて手掛けたインスト曲。3拍子で、可愛らしい音、可愛らしいメロディーがファンタジックな世界を作り、本当に遊園地にいるかのようなイメージだ。楽しそうな歓声まで響いているのだが、後半に入るとだんだんと不穏な空気が漂い始め、魔王のような恐ろしい笑い声が聞こえてくる。怖い部分も含めてアトラクションの一つなのか、それとも光と闇が表裏一体であるという比喩なのだろうか?
皆さん、今日は一か月後から始まる新しい元号が発表されましたね。
「令和」になるそうです😊
平成の歌姫あゆは、令和をどんな風に歩んでいくのでしょうか。とても楽しみです。
今日、このブログを開いて半年だという通知が来て、自分のことながら驚きました😲
もうそんなに経っていたとは……。
まだ6枚目のフルアルバムの記事に入った状況ですが、焦らず続けていきたいと思います。
(※この記事は嘘ではありません)