黙ってayuを聞け

浜崎あゆみさんの歌 とりわけ歌詞の魅力を語るブログ

3rdアルバム『Duty』(前編)

陰の色が濃いアルバム。『A Song for ××』は陰の部分のインパクトが強いものの、実は明るい曲やほのぼのした曲もあったし、『LOVEppears』は歌詞が暗くても曲のノリが良く、高揚感と組み合わさっていることも多かった。この『Duty』は、「絶望三部作」を含んでいることもあって、全体を通して陰が付きまとい、あゆの持つダークさがくっきりと輪郭を持って、そのまま1枚のアルバムになったような雰囲気だ。タイトルは「義務」の意。スターとなったあゆが、歌う義務を自らに課しているように思える。時代の覇者として放ったのがこの作品であることを深く噛み締めたい。

妖艶なヒョウと化したあゆは、ゴールドのラグジュアリーな部屋の中で、しかし囚われの身である。あゆの葛藤が何となく見えそう。17thシングル『SURREAL』と同時発売。

 

〔『Duty』の記事 【前編】 【後編】

 

starting over

作曲・編曲:原田憲

 

インストゥルメンタル異世界へとトリップするような音と共に、謎めいたセリフとあゆのヴォーカルが流れる。

 

 

Duty

作曲:原田憲

編曲:鈴木直人原田憲

 

アルバムタイトルを冠した曲。お経のようにもレクイエムのようにも聞こえる出だしからして、不穏な空気が漂っている。

誰もが未来にあると思っている「それ」。あゆが言うには、本当は過去にこそあるのだそうだ。「それ」とは何か? 一部では「永遠」のことではないか、とも聞いた。既に過ぎてしまって変わりようのない過去が永遠なのだと。何であれ、皆が本当は「それ」を手にしていることに気付かず、必死になって未来にばかり求めているというのは、とても不気味な描写だ。

一つの時代が終われば、次は自分の番――。次の曲に据えられた『vogue』にも通じる内容で、頂点を極めた頃にこういう歌詞を書いてしまうあゆの感性は、やはり凄まじいものがある。未来は常に見えず、過去となっていく現在を見送るしかない。それも含めて自らの「義務」なのだ。明るい希望を未来に見ているだけではない、この重苦しい歌が、アルバムを代表している。

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ Duty 歌詞 - 歌ネット

 

 

vogue

14thシングル。当該記事を参照。

 

 

End of the World

作曲:星野靖彦

編曲:鈴木直人

 

痛い所を突く歌詞が並ぶ。曲は淡々としたところからサビで唐突に激しいロックに転じ、主人公の二面性や、抑えきれない心の叫びを象徴している。多くの人に「もてはやされ」「羨まれ」る立場にいると、かえって自分の闇が浮き彫りになり、ギャップに苦しむのだろう。何を失っても、人々が思い描く理想を演じることになるのか。とはいえあゆのような立場でなくとも、聞き手は多かれ少なかれ歌詞に思い当たる節があるはずだ。

まるで世界の終わりかのような状況で、主人公は「君」に微かな望みを見出している。こんな自分の事を解ってくれる「君」。君だけでも解ってくれるということが、主人公の救いとなるのを願うばかりだ。

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ End of the World 歌詞 - 歌ネット

 

 

SCAR

作曲:多胡邦夫

編曲:鈴木直人

 

三拍子系の楽曲が初めて登場。いかにも物語めいた曲に乗せ、あゆが哀しいお話を語ってくれる。

ぽつりぽつりと現れるのは、別れた「あなた」との思い出のかけら。解り合えた者達が別れる時は、どちらも同じ傷を負う。世の中のありふれた悲しみだと主人公が思いを馳せるのは、だから大したことないと言い聞かせるためか、それとも、どれほどありふれていようと自分だけの悲しみは癒えないという実感からか。「それとも…」と余韻を残して終わるサビが強い印象を残す。

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ SCAR 歌詞 - 歌ネット

 

 

Far away

15thシングル。当該記事を参照。

 

 

再考:『Duty』(前編)