20周年を記念したミニアルバム。
このリリースの何作も前から、あゆは先行シングルをあまり出さずにアルバムをじっくり作る形に変わっている。20周年の節目も、長年変わらない感性と、進化してきた表現とで、5曲の中にあゆの現在地がぎゅっと凝縮されたものとなった。華々しく記念を飾るような言葉や文ではない、「トラブル」という単語をタイトルに選んだ事をも深読みしたくなる。
CDのみ盤のタイプAとタイプBの2形態でリリース。ジャケット写真はタイプAがあゆの顔のアップの左半分、タイプBが顔に手を添えるポーズ。タイプAとタイプBは曲順が逆で、この記事はタイプAの曲順で記載している。
またAとBそれぞれにDVDもしくはBlu-rayと様々なグッズをセットにした計4形態の限定盤もある。DVD及びBlu-rayには、ライブツアー「ayumi hamasaki Just the beginning -20- TOUR 2017」より大阪公演をAに、沖縄公演をBに収録。ジャケットは4形態共通で、誰かと腕を絡めているあゆ。
We are the QUEENS
7thデジタル・ダウンロードシングル。当該記事を参照。
æternal
作曲:渡辺徹
タイトルは「エターナル」と読む。あゆ曰く、何故このような表記になっているのか考えてみてほしいとの事。
本来の綴りである「eternal」は「永遠の」と言う意味である。しかしこれまで何度も述べた通り、あゆ作品は基本的に永遠なるものを否定している。この作品も例に漏れず、「永遠」になれなかった二人についての歌だ。
「くりかえしくりかえし 呟いてる君の名を」「最後に見た寂しげな君の 横顔が焼きついている」「ねえどうしてバカだねって 笑い合えなかったんだろう」……別れを描いた数々の作品でそうであったように、今回もまた、相手への変わらぬ想いや、消える事のない後悔が、胸に迫る表現で綴られている。「君との毎日それだけが全てだったよ」という思いを、「どれだけ時間が経っても」持ち続けている主人公。「君との思い出なんて消えてしまえばいい」と思ったことは「一度もない」とまで言い切っている。それだけに、「まだ子どもすぎて 傷つけて それさえ全て 仕方ないと諦めたね」という過去をどれほど悔やんでいるか、想像するに余りあるだろう。
しかし「戻ることない日々だと」分かってはいるし、「思い出に変わっていく 僕たちは大人になる」とも歌われる。どうしようもない事実と、どうしようもないとは割り切れない想いで行き来する複雑な様子。その表現がリアルだ。
「君といたあの夏の日々を 夢に見て目覚めて泣いた」と、ここでも「夏」が特別な季節として使われている。20年を記念する作品が「別れ」であり、「永遠」の否定なのが何とも感慨深い。
歌詞リンク:浜崎あゆみ aeternal 歌詞 - 歌ネット
WORDS
作曲:丸山真由子
かつてはツアーの来場者に配られていた楽曲。
繊細で感傷的なバラードに乗せて歌われるのは、切々とした孤独感と、「あなた」との複雑な関係だ。「ねぇあなたに言わずにいたけれど 理想通りのようなあの部屋が 大嫌いだったよ」と、衝撃的な告白から始まっている。「理想通りの部屋」を与えられているはずなのに、主人公の「私」は「どこにも居場所なんてなくて」「支配された世界」と感じていたのだと言う。ここでの「理想」とは、あくまで「あなた」が描いたものでしかなかったのだろうか。「私」は本心を口にしないまま、「でも笑ってれば もう誰も哀しませることなく なんとかやり過ごせる」という方法を取ってきたが、ある時「泣きながら逃げ出し」てしまう。「ひとり雨にうたれ」、「これからどころか今さえ わからないまま」という状況でありながら、それでも「私」は「明日の来ない世界」を望んでいた。
しかし2番に入ると、「穏やかな夜とか 転がるくらい笑う夜だとか」が頭に浮かぶ。その上、「繋いでた手の温もりだとか 眼差しの優しさとか」を「君が精一杯 差し出してた」という事まで思いかえしているのが興味深い。大嫌いな部屋から逃げ出して思い出す、優しい記憶。主人公は「もう明日に怯える 私じゃなくなったよと いつかは言える日がくると信じたい」という心境に至る。これは逃げ出してからどのくらい経ってからの事だろうか?その後「あなた」とはどうしているのか?伝えたい事があるうちは、完全に拒絶している訳でもないとも取れる。
周りの様子を伺って本音を押し込めてしまう孤独感は、何となく1stアルバムのタイトル曲『A Song for ××』を思い出す。孤独を表現する言葉の数々も、20年で幾度となく登場してきた。
歌詞リンク:浜崎あゆみ WORDS 歌詞 - 歌ネット
W
作曲:原一博
編曲:tasuku
タイトルは二面性を表しているのか。はたまた「woman」の「W」か。低音を響かせる激しいサウンドのヘヴィーメタルに乗せて、相手を翻弄する強かな女性が描かれる。
「念入りにブローして 巻いた髪」「リップを オーバーライン気味に引いて」と、美しく着飾る様子がありありと分かる言葉が並ぶ。しかし主人公は、それを「武装」と呼ぶ。目の前の相手に仕掛けているのは「勝負」だからだ。
「意思を持って意思のない オンナ演じるのも駆け引き」「気持ち良くさせてあげてるだけよ?」という歌詞は、『Sexy little things』で描かれた女性像とも重なる。「可愛いあなた♡」という揶揄を含んだハートマークの使い方は『Lady Dynamite』を思い出させる。とにかくこの主人公は、表面上相手を喜ばせるほどに尽くしていても、心から相手に付き従う気などさらさらない。全ては「駆け引き」に過ぎないのだ。うっかりそれに気付かず、主人公を手に入れたようなつもりになれば、それこそが実は負けなのである。
「本気にしたのはそっちのせいよ?」と、あくまで主人公は余裕の態度。更に恐ろしいのは、「悪いけどこんなのほんの一面よ?」だ。見せている部分より、見せていない部分の方がよほど多く、駆け引きに使う人格は「意思のないオンナ」だけではないのかもしれない。
20年を振り返ると、孤独や絶望と向き合う姿勢を初期から一貫している一方で、ある時から強さやたくましさを描く作品も出てきた事に思い当たる。まして、これほどまでに自信たっぷりに振る舞う人物像が描かれるようになったのは感慨深い。
歌詞リンク:浜崎あゆみ W 歌詞 - 歌ネット
The way I am
作曲:湯汲哲也
編曲:中野雄太
タイトルは「ありのまま」という意味であろう。あゆ作品で描かれている「ありのまま」とは、悲しみや苦悩と向き合う事だったり、過ちや挫折さえ曝け出す事だったり、とにかく綺麗事ではない、赤裸々なものが多い。この歌もまた、温かい感情の合い間に厳しい言葉が見え隠れしている。
「ひとつずつ返したい たくさんのありがとう達を」「ひとつずつ叶えたい 祈っては隠した夢達を」という歌詞を見るに、この作品もファンや様々な人に向けたメッセージなのだろうか。「それでも最後の小指外せなかった」という表現から、順調ではなかった道程と、相手を近しい者として大切に思う心とが同時に伝わってくる。一方で、「この腐敗の中に」「残酷な現実が頬を 叩きに来るね」と、依然として険しい状況にいるらしい。
あるいは、それは敢えて進む茨の道なのかも知れない。「それでも未来は 明るいものだって 君が信じていたいと言う限り 僕はここに居て 叶え続けるから」と、半ば使命のような決意を見せる。しかし何より衝撃的なのは、「必要なくなった時にはどうか きっぱり捨てて」と語っている事だ。最後には「同情しないで」とまで念を押している。思えばあゆは、あなたのお陰で頑張れた、これからもあなたの為に歩んでいく、という姿勢を何度も示していたが、いつまでも応援し続けてほしいと自ら乞うた事は無かった。相手が望めば「腐敗の中」さえ進む覚悟は、望まれなくなった時はそれもまた受け入れるという覚悟と表裏一体なのである。かつて『vogue』ではいずれ散っていく自分を達観したように描いていたが、『FLOWER』や今作では捨てられるという行為をより積極的に受け入れているようにも見える。絶大な支持の元で20年を走り続けても尚、このような意思を明らかにする姿に、どうして敬服せずにいられるだろうか。
歌詞リンク:浜崎あゆみ The way I am 歌詞 - 歌ネット
さて、お久しぶりのあゆりあです。
前回、「更新頻度を上げた」「リリース分に追い着けそう」と言っておきながら、この体たらくですみませんでした。
このブランクの一因には、いつぞやのスランプもどきではない割と切実な事情もあったのですが、皆様にとっては何を説明しても言い訳になってしまうので、書かない事にします。
出だしが不安な1年となってしまいましたが、あゆの素晴らしい活躍を糧に、ここから巻き返せるよう頑張ります!