Over
作曲:CMJK
そぼ降る雨のように物悲しい、ミディアムテンポの作品。サビ部分は強めにリズムを刻んでいるが、全体としてはピアノを切なく響かせながら幻想的な音が交じり合うサウンド。急上昇して始まり、すっきりしない終わりを迎えるサビのメロディーラインが特徴的。
大切な人と別れてしまったことを綴る歌詞は、ひたひたと悲しみが押し寄せるようだ。相手が言いかけたことを最後まで聞いてあげられなかった。涙を隠して、いつものように別れてしまった。繋いだ手をほどくのは簡単、もう一度繋ぐのは難しい、という実感を、「繋いだ手をほど」いた後で噛み締める。「私だけ寒いわけじゃ ない事もわかったの だけど遅すぎたみたい」という部分に、相手の心の深いところまで思い至らなかったことへの、どうしようもない後悔が溢れている。戻れない過去を振り返っては、どれほどその人が大切だったかを思い知るのだ。
最後には「サヨナラ」という言葉も出てくる。けれどその「サヨナラ」さえ伝えきれない。ただただ、二人の関係は終わってしまったのである。
歌詞リンク:浜崎あゆみ Over 歌詞 - 歌ネット
27thシングル。当該記事を参照。
taskinillusion
作曲・編曲:tasuku
インストゥルメンタル。遠くからやってくるように始まり、どことなく緊張感を持ちつつも、あゆの漂うようなヴォーカルと重なる。
everywhere nowhere
作曲:pop
編曲:CMJK
冒頭、近未来から聞こえてくるかのように謎めいた英語のナレーションが響く。そこからダンサブルな曲調へと発展。AメロとBメロは不穏なメロディーと低音のヴォーカルで聞き手を引き込み、サビで一気に開放感を演出している。
「物は溢れてくばかり 情報は混乱する」と、文明の早過ぎる発展に警鐘を鳴らすかのような歌詞が印象的。これは今でも、いや、人類が文明を持つ限りは必要な視点だろう。真実をいかに見極め、誰と人生を分け合うか――。「便利すぎる物達と 不便になってく心 人間(ヒト)もやがていつの日か 記号化するのかな」という、SFのテーマのような歌詞にはぎくりとさせられる。
サビで歌われる、自由で何処へでも行けるから何処へも行けない、という逆説も、全くその通りで唸らされる。『Heartplace』でもヘヴィーに歌い上げられていたが、自由を手に入れても結局人は悩んでしまう。選択肢がないのは困る。しかし選択肢があるなら、自分で選ばなくてはならない。
それでも、この歌は明るい希望へと向かう。「虹の終わり探しに行こう」と、このアルバムにぴったりな言い回しで、前向きな気持ちにさせてくれる。そして最後、「何処へも行けずにいた」と、歌詞もメロディーもびしっと過去形にして終わる。この終わり方で、複雑で目まぐるしい世界の中でも何か確かな道筋を見つけようとする、主人公の姿が思い浮かぶだろう。
歌詞リンク:浜崎あゆみ everywhere nowhere 歌詞 - 歌ネット
July 1st
27thシングル。当該記事を参照。