黙ってayuを聞け

浜崎あゆみさんの歌 とりわけ歌詞の魅力を語るブログ

29thシングル『&』

3曲A面とカップリングで構成されたシングル。夏を意識した作品で、ジャケットでは小麦色の肌をしたあゆが日差しを浴びている。A面曲全てでPVが制作されたが、これはあゆの複数面シングルとしては初めて。この頃から、よりアーティスティックで複雑なストーリーのPVが作られるようになった。

 

 

ourselves

作曲:BOUNCEBACK

編曲:CMJK

 

「夏歌」シングルの1曲目ながら、唯一夏にこだわらなかった作品である。R&B調のトラックは重々しくはないが、妖しく漂うアラビアンなメロディーが適度に重心を低くしている。PVはいつになく狂気じみた内容で、あゆの乗った車が不気味な集団に破壊されたり、これまであゆ作品を飾ってきたジャケットがぐしゃぐしゃにされたりと、なかなか攻撃的。悪魔と化したかのような格好のあゆまで登場する。あゆの歌う「世界中の誰も知らない私」には、こんな一面も含まれているのだろうか。

サビは2つあって、1つは冒頭と最後に出てくる「ぎゅっとしてみたり じんとしたり~」という部分。オノマトペを駆使した表現は主人公の「私」の様々な面を表しながら、想像を広げてくれる。もう1つのサビは「世界中の誰も知らないけれど」や「世界中の誰も知らなくていい」で始まる部分。かつて『End of the World』では君だけが分かってくれると歌い、理解者はたった一人でいいという割り切りを『SIGNAL』で描いたように、誰も彼もに求めはしない、ただ大切な人には分かっていてほしい、とたびたびあゆは歌詞に綴っている。『ourselves』はそのスタンスを強く打ち出した作品と言えるだろう。「あなただってまだ知らない私」まで隠し持っているらしく、描かれた主人公の姿は実に魅力的である。

「だって本当に 価値があるものなんて 愛だけでしょう」そうきっぱりと言い切る歌詞も登場する。様々な「私」を見せ、まだ見せていない「私」を匂わせながら、何処か一本通った芯を感じさせる主人公。聞き手は主人公に魅せられながら、では自分の中にはいくつの自分がいるのかと考えることだろう。

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ ourselves 歌詞 - 歌ネット

 

 

Greatful days

作曲:BOUNCEBACK

編曲:HΛL

 

「Greatful」は造語。夏に胸を躍らせる、どこまでも明るく楽しいダンスナンバーとなった。PVでも大勢の人とあゆが集まって楽し気に踊っていて、時々空想の世界が交差する内容だ。

思えば、ここまで徹底的に「夏を楽しむ」ことに特化したあゆの「夏歌」も初めてかもしれない。『Boys & Girls』や『UNITE!』では夏に向けての意気込みを、『independent』や『July 1st』では誰かとの関係についてを歌っていたし、『monochrome』『Far away』『HANABI』は悲しい夏だった。今作の「短い夏が始まって行く 君といくつの思い出つくろう」「なんて事ない毎日こそが 何よりも素敵だって知ってるから」という歌詞に現れる、期待感や幸福感は夏そのものに向けられており、とにかく季節を楽しく演出する空気に満ちている。

ところどころ、「胸を痛める話」や「いびつに尖る空」、「心に雲が覆う日」についても歌われている。あゆは決して、それらを見ないふりしているわけではない。「楽しむ事 置き去りにしないでいて」と前向きに語り、「穏やかな微笑みくれる」という人に感謝することで乗り越えていく。晴れ渡る空と美しい海を思い浮かべながら、素晴らしい夏を過ごそう。

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ Greatful days 歌詞 - 歌ネット

 

 

HANABI ~episode II~

作曲:CREA + D・A・I

編曲:tasuku

 

27thシングル『H』収録の『HANABI』の続編と思われる。幻想的なサウンドを敢えて引っ掻いていくようなひずんだ響きのギター、重厚な美しいコーラスが悲しみを描き出すバラードで、メロディーは三連符のリズム。虫の声や風の音のような演出もあり、夏の夜にしんみりと聞きたい作品だ。PVは色味が暗く、曇り空の下の波打ち際や雨の滴るガラス張りの部屋が映され、あゆが哀切を滲ませながら歌う。終盤では眩い火花が降り注ぎ、想いを爆発させるようにあゆがギターをかき鳴らす。

HANABI』では「君の事思い出す日 なんてないのは 君の事忘れた 時がないから」と綴っていたが、今作では「忘れたいのに 忘れたくない」とある。記憶があることで苦痛から逃れられないのに、それでも忘れたくないという心境は、「夏は 何度も 巡っているのに」、未だ消えることがない。苦しい別れが、間違いではなかったかどうかすら分からない。「幸せだよ」と「君」から聞きたい……。

主人公は思い出を「美しいまま」「しまって」おくことにする。自身が抱えてきた想いに、最後は「空へ打ち上がり 花火のように 美しく散れ」と呼びかけた。どうかここで未練を、あっと言う間に燃え尽きるように終わらせたい。

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ HANABI~episode II~ 歌詞 - 歌ネット

 

 

theme of a-nation '03

作曲:CREA + D・A・I

編曲:D・A・I + Hiroki Mizukami

 

カップリングという位置付けで収録された作品。「a-nation(エー・ネーション)」とはエイベックスの夏の野外ライブであり、「2003年のa-nationのテーマ」を意味するタイトルではあるものの、そのことに囚われなくても楽しめる歌。メイン曲の『ourselves』は夏についての歌ではなかったが、こちらは「夏歌」だ。

和楽器の音をふんだんに使ったサウンドで、夕風がふっと吹き抜けるかのごとく、優しくノスタルジックな作品である。歌詞も、「昔によく行った 夏祭りを覚えてる」「美しい夢だけを 追っていたあの頃」と、昔をしみじみと思い出す描写がある。きっと、昔と今とでは変わってしまったこともたくさんあるのだろう。様々な感慨は涙となって頬を伝う。

今、かけがえのない人がいるということ。「二度と帰らない」今この時を大切に、愛する人と共に生きよう。そんなメッセージを感じる。

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ theme of a-nation'03 歌詞 - 歌ネット

 

 

 

 

皆さん、今日はヴァレンタインですね💘

(またも冬のイベントに夏歌の記事でしたが……)

大好きな人、大切な人、そして我らがあゆに、想いを届けましょう💝