「夏歌」を3曲集めた豪華なシングル。「H」はロゴ表記(「A」のロゴに似ている)。ジャケットは限定盤、通常盤、ミリオンヒット盤を合わせて4種類の写真がある。いずれもあゆがバイクに乗っかっているが、ジャケットによっては男性が一緒に写っている。PVは作られていない。
ちなみに、後に“あゆらしさ”として世間に浸透する、幅の大きい独特なビブラートは、今作品から顕著になる。
independent
作曲:CREA + D・A・I
編曲:tasuku
クラップ音から始まり、ギターが入り、明るく楽しくノリの良いサウンドへと突き進んでいく。ロックナンバーだがポップ色が強く、『I am...』収録の作品群のようなヘヴィーさやハードさはない。
タイトルは「独立した、自主的な」という意味である。歌われているのは「僕」と「君」のお互いにお互いを必要とする関係で、一見タイトルと矛盾しているように感じるかも知れない。しかし歌詞をよく読めば、この二人が相手を必要としても決して依存はしておらず、腐れ縁のようなドロドロした間柄ではない、どこまでも爽快な愛情で結ばれていることが分かる。
また、ささいな事で怯えては強がる「僕」を「君」は何とか励ます……という描写もある。世間がどうあれ、この二人だけの「独立」した、確かな世界があるとも取れるだろう。
無理のないペースで進んでゆくことを思い描き、「そんな感じで 準備はいいかい?」と肩に力を入れず問いかける主人公。実は直接「夏」を表す言葉は出てこないが、とにかく元気な曲調で手拍子や笑い声が楽し気に響くこの作品はまさしく夏に似合う。
歌詞リンク:浜崎あゆみ independent 歌詞 - 歌ネット
July 1st
作曲:CREA + D・A・I
編曲:tasuku
ウミネコの鳴き声のような音と、優しく話しかけるようなギターが響く出だしは、夏の夕暮れによく似合う。バラードが始まったのかと思いきや、Bメロでスクラッチ音の鳴る軽快な曲調へと変わり、ダンサブルなサビへとつながる。終わっていく今日を見守りながらも、楽しい明日を期待するかのようだ。
歌詞は、空の情景描写が美しい。一番は「オレンジ色に傾いて」「街を深く染めていく」と、夕空が思い浮かぶ。二番では「雲の切れ間光射し」と晴れてゆく様子が描かれており、こちらは昼間の風景と考えられる。いきなり「明日」が来たというよりは、いつとはなく夏の景色であるか、こんな「明日」であってほしいという願望かもしれない。
「ボク」はもし「明日晴れたら」、いや「雨だったとしても」、君を海へと誘いたい。「涙の痛みを優しさに変え」、明日だけでなく「ずっと一緒にいよう」と想いを抱いている。明るさの中にもきゅんとした切なさを感じる、絶妙な作品となった。
歌詞リンク:浜崎あゆみ July 1st 歌詞 - 歌ネット
作曲:CREA + D・A・I
編曲:CMJK
明るく元気をくれる曲だけでなく、しんみりと哀しい曲も合わせてくるのがあゆらしい。
今は側にいない人を想い綴った歌詞は、繊細で、詩情に溢れている。悲しい事があっても、つい「大丈夫だよ」と言ってしまう自分。「泣けない」のは弱さで、「泣かない」のは強さ、そんなのどちらも本当はいらない。流れ星に願おうにも夜明けは早く、そもそも今の自分には星など見えない……。
何と言っても、サビの「君の事思い出す日 なんてないのは 君の事忘れた 時がないから」はあまりにも秀逸だ。わざわざ思い出さなくたって、その人を忘れられたことなどない。その切々とした表現が、思いがけず胸を衝く。
曲調はオルゴールのような音から始まり、全体が幻想的で、空に上がった後ゆっくりと散り広がって消えてゆく花火のように悲しげである。同時に、終わってゆく夏への感傷にも重なる作品ではないだろうか。
歌詞リンク:浜崎あゆみ HANABI 歌詞 - 歌ネット