黙ってayuを聞け

浜崎あゆみさんの歌 とりわけ歌詞の魅力を語るブログ

9thアルバム『GUILTY』(後編)

〔『GUILTY』の記事 【前編】 【中編】 【後編】

 

The Judgement Day

作曲・編曲:CMJK

 

インストゥルメンタル。オルガンの音と荘厳な鐘の低い音が重々しい空気を醸し出し、あゆの「ラララ……」というヴォーカルが緊張感を伴って現れる。運命の時を前に鼓動が早まるかのようにテンポが上がるが、その後一気に解放されたような曲調となる。審判の日、罪人にどんな裁きが下ったのか想像してみよう。この辺りから、暗鬱だったアルバムに光が差す。

 

 

glitter

41stシングル。当該記事を参照。

 

 

MY ALL

作曲:湯汲哲也

編曲:HΛL

 

ファンの胸を熱くさせる歌がまた一つ誕生した。ライブの終盤を飾る楽曲として定着していく今作は、真っすぐ胸へと入り込む王道ポップスと言うべきメロディーに、あゆの想い溢れる歌詞が載せられている。

主人公の「僕」は、「どれ位の時間」「どれ位の距離」を「あなた」と共に来たのか、と振り返る。楽しいことばかりではなかったし、つらい夜もあった。けれど悔やんではいない。「完璧じゃなくともキラキラした 結晶」とその日々を誇る。「いつでも ひとりじゃなかったから」と。アルバムの中での過去の見つめ方としては、『GUILTY』で逃れられないという恐れを抱き、『Marionette』ではそれでも進んできたと奮い立ち、そしてこの歌で誇りに思う境地に辿り着いたとも言える。

一番のサビでは「あなたに夢を見せたい」「あなたを守って行きたい」と「僕」の抱く想いを、二番では「あなたの笑顔が見える」「あなたの愛を感じる」と「あなた」から受け取ったものを歌い上げている。いずれも「僕」の「あなた」に対する感謝と愛おしさで満ちた表現だ。「あなた」とは、愛する人や、支えてくれる人々かもしれないし、ライブの盛り上がる場面で歌うとあれば、聞き手一人一人の事だと受け取って良いだろう。特に「あなたに夢を見せたい」や「その笑顔が見たくて 今日も僕は生きてます」などの歌詞は、ファンの涙腺を緩ませるに違いない。

MY STORY』収録の、同じくファンに呼びかけていると取れる楽曲『Replace』のように、新たな道へと旅立つ場面もイメージできそうだ。

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ MY ALL 歌詞 - 歌ネット

 

 

 

reBiRTH

作曲・編曲:HΛL

 

インストゥルメンタル。透明な光が満ちてゆくような、解放感のあるゆったりとした楽曲。審判を経た罪人が、「生まれ変わる」機会を得たのだろうか。

 

 

untiltled ~for her~

作曲:多胡邦夫

編曲:小林信吾

 

歌詞カードの最後には、英語で「このアルバムを大切な人に捧げる」という旨のメッセージが書かれている。この歌はその想いを込めた1曲であろう。

まさに天国から聞こえてくるような、優しく穏やかな楽曲に載せ、「私」は「君」との思い出を語る。「些細な事に泣いたり笑ったり」したこと、「くだらない喧嘩」もしたこと……。そんな「君」は、「あの雲を越えて空へと続く 果てなき道のり」を一人で行ってしまった。叶うならもう一度会いたい。話したい事がたくさんある。主人公の願いは落ち着いた口調ながら、切々と胸の張り裂けそうな心境が伝わってくる。

「君」の死を示す「あの雲を越えて~」という表現からは、悲愴なイメージよりも、遥かな道を行く清らかで悠々とした景色が思い浮かぶ。それは「私」が「君」にそうあってほしいという気持ちの表れだろう。なぜならその道は「いつかは誰もが辿る」のであり、いずれ自分にもその時が来たら「君」と再会したいと願うからだ。自分にもいつか死が訪れるという自覚と、きっとまた逢えるという希望、これは今までの死別がテーマの作品にはなかった視点である。色褪せない日々を抱え、主人公は空の向こうの「君」を想い続ける。

自らの内面と深く向き合う『GUILTY』というアルバムは、こうして最後に誰かの想いを湧き起こすようにして幕を閉じるのだ。

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ untitled~for her~ 歌詞 - 歌ネット

 

 

 

 

『GUILTY』前編の記事に、初回盤付属のフォトブックについて書き加えました。