黙ってayuを聞け

浜崎あゆみさんの歌 とりわけ歌詞の魅力を語るブログ

38thシングル『Bold & Delicious/Pride』

両A面シングル。ヨーロッパで活躍するドイツ出身のグループ・SWEETBOXの、GEOさんから楽曲を提供された。ジャケットは、紫と緑の入り混じるシースルーの衣装をまとったあゆで、占い師のように妖しい魅力を放つ。DVD付属盤のDVDには、両曲のPVを収録。

 

 

Bold & Delicious

作曲:GEO of SWEETBOX

編曲:CMJK

 

出だしから迫力のあるコーラスが度肝を抜く。前作で感動のバラードと、「CREA」名義での作曲に区切りをつける歌とを発表したばかりなのに、一息つかせる暇もない。エネルギッシュなゴスペル調の楽曲は、あゆ作品に新風をもたらした。PVは、ゴージャスな衣装でまさしくスター然としたあゆが、車の荷台に立ち、都会を駆け巡るという内容。歌にある勢いや思い切りの良さを感じる。

「大胆すぎるかなって位がちょうどいい」。序盤の歌詞がこの歌を端的に表している。描かれたメッセージだけでなく、あゆの書いた歌詞としてもまさしく「大胆」な仕上がりだ。「正直面倒クサイ」「踏み込めないのが一番さむい」「心配なんて意味不明」といった表現が並ぶことを、誰が予想していただろうか? ズバリ言い切る鋭い言葉の並ぶ歌詞は、もはやあゆ作品において珍しいものではなくなったが、この歌の歌詞は鋭いというより、ざっくばらんで不敵、豪快なイメージを持っている。

もう一つ大きな特徴は、サビのメインがコーラス隊であることだ。あゆのアドリブのようなヴォーカルは合いの手に回っているのである。「叫んで」「怖気付かないで」「自由になって」「もっと声を上げて」という歌詞の大合唱は、聞き手を有無を言わさず巻き込んでいく。「私を動かしてあなたの全てで」。誰も彼も皆自分を解放し、高らかに叫ぶことを、まるであゆが促しているかのようだ。

2つ前のシングルに収録された『alterna』では「変化を恐れるなら 離れたとこで見ててよ」と突き放すように歌われていたが、今作の大胆な試みこそ、我々に突き付けられたあゆの「変化」かもしれない。あゆはきっと、「離れたとこで見る」人を責めはしないし、いちいち構わないだろう。なればこそ、恐れない道を選び、これからもあゆの作り出す世界を見てゆきたいものだ。「大胆さ」を受け入れれば、「美味しい」体験も出来るのである。

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ Bold & Delicious 歌詞 - 歌ネット

 

 

Pride

作曲:GEO of SWEETBOX

編曲:CMJK

 

こちらも重厚なコーラスの響くゴスペル調だが、『Bold & Delicious』と違ってスローテンポである。ピアノやストリングスがドラマティックな、威風堂々としたバラードとなった。

歌詞は主人公と「少女」の対話が描写されており、これもあゆ作品の中では珍しい演出だ。この「少女」が誰なのかで解釈は変わるだろう。あゆに憧れを抱く人なのか、あゆ自身の過去なのか……。少女が主人公の持つ「自由」を「眩し過ぎる」と言うのに対し、主人公は「ないものばかりをねだる」人間の性を思い、「僕達が本当に欲しい物は一体何だろう」と聞き手に問う。少女にはその後、様々な葛藤が訪れたようだが、やがて「新たな発見」に辿り着いた。

歌詞の最後の2行、とりわけ「共に行こう」という呼びかけは胸を打つ。確かな物のない世界でも、他人から笑われることがあっても、自分の道を模索し続け、耳を傾ける者とは繋がろうとする。「諦めるよりも恐い事などない」と言える主人公の姿はまさしく誇り高い。ある意味では、『Bold & Delicious』で示した「大胆さ」やあゆ自身の新しい挑戦の、裏にあった覚悟や真意を綴ったようにも聞こえる。

PVは、『Bold & Delicious』のPV撮影の合間のようにも見え、気怠い空気が漂う。都会の喧騒と華やかさの影にある、美しいだけではない景色。歌詞に続いて、こちらも『Bold & Delicious』の世界観とは対を成すかのようだ。それでも最後に、あゆは背筋を伸ばして去ってゆく。

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ Pride 歌詞 - 歌ネット