黙ってayuを聞け

浜崎あゆみさんの歌 とりわけ歌詞の魅力を語るブログ

15thアルバム『Colours』(後編)

〔『Colours』の記事 【前編】 【後編】

 

Terminal

作曲・編曲:Armin van Buuren、Benno de Goeij

 

恐らくだが、あゆ作品の中でもかなりの癖の強さを持つ楽曲であろう。フルコーラス分の長さがありながら、歌詞は少なく、謎めいている。ややもすればトランス調のインストとして踊って終わってしまいそうだが、その短くも衝撃的な言葉は無視できないものだ。

主人公は「君」の様子にひどく心を痛めている。「深い傷を残し」、「絶望見たような顔」の君。そこで主人公は重苦しい決意をする。「もしもキミが望むなら悪魔にもなれるさ」「天使などいらない」と。

「terminal」とは「終末の」「破滅的な」という意味である。そんな時には救いの天使を求めたくなるが、主人公は「君」のためにさえなるのだったら、破滅を決定づけ全てを終わらせる悪魔にもなろうとする。曲自体の短い『everlasting dream』や『Catcher In The Light』もそうだったように、あゆの歌詞は少しの言葉でも強烈な世界を形作っている。

後に52ndシングルとして発売。

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ Terminal 歌詞 - 歌ネット

 

 

Angel

作曲:Rodney Jerkins、Andy Kautz、Ardita Satka

編曲:Rodney Jerkins、Andy Kautz

 

「君が望むなら悪魔にもなれるさ」「天使などいらない」と言い切った次には、「あなたのために天使になりたい」と願う今作が配置されている。全く違うメッセージのようでいて、相手のためなら何をも叶えうる存在になりたいという想いは同じなのかもしれない。EDM調ではあるが、ゆったりとしたバラードだ。

この歌において、「僕」は寄る辺なく彷徨っているらしい。「同じ質問を繰り返している」「またどこで間違ったのか」と呟くような歌詞から、自分の現在の立ち位置に自信がなさそうな事が伺える。自分の願いを「どうかあの子に届けてよ」というところから、今は独りでいるらしい。「僕」には、ここにはいない「君」にとって自分が「悲しませる原因でいる」という自覚がある。

サビでは「I wanna be an angel for you(あなたのために天使になりたい)」というシンプルなフレーズが、朗々と歌い上げられる。「君」は「翼」をくれた人だと言うが、「僕」の今の有り様は、「君」に誇れるものとは言い切れないのかもしれない。理想から遠い願いであるほど、「天使になりたい」という想いは一層切なるものになるだろう。『ANGEL’S SONG』では天使のような「君」に救われ、『Last angel』では重要な局面を「天使が笑った」ように感じ、そして今作では、自らが天使になりたいと願っている。

PVでは、人気のない通りを黒いドレスのあゆが歌いながら進み、サビの部分で白いドレスのダンサーが登場する。終盤では天使が降りてきてあゆと共にエアリアルのパフォーマンスを披露する。

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ Angel 歌詞 - 歌ネット

 

 

Merry-go-round

 

51stシングル。歌詞については当該記事を参照。

Blu-ray及びDVDには、「Appearance by VERBAL ver.」として、VERBALさんがラップパートで登場するPVが収録されている。あゆの屋上での歌唱シーンは日が出ているのに対して、VERBALさんのシーンは夜のパーティーといった様子である。

 

 

Lelio

作曲:Fedde Le Grand、Robin Morssink

編曲:Fedde Le Grand

 

「lelio lelio leli lelio dj」という繰り返しが耳から離れなくなるEDM。

踊って楽しむ事をひたすら促すような雰囲気は『XOXO』にも似ているが、『XOXO』が現実に立ち向かう前の現実逃避なのに対して、こちらは「今、やりたいことをやればいい」というメッセージを感じられる。「叩くヒマとかあるなら渡っちゃうわ」「てかいつかのための犠牲って そのいつかっていつ来る予定」と、鋭い言い方で聞き手のやる気を煽り立てる。

「今のために今を生きる事で手いっぱい」というのは、ある種余裕のない様子にも見えるが、「委ねてみて何もかも」「You know what you want(自分の欲しいものは知ってるでしょ)」と迫る辺りは、「身体で感じて 心のままに」「ただビートに 身を任せればいい」と歌う『Sparkle』にも近いかも知れない。なるようにしかならないのなら、自分に正直になって結果を待つ。裏を返せば、自分に正直になれば、なるようになるという事だろうか。「lelio lelio......」を聞きながらトリップしていくうち、自らの本音が見えてきそうな気分だ。

PVでは、あゆとダンサー達のダンスパフォーマンスに、ヴィヴィッドでカラフルなアニメーションの模様が重なる。ターンテーブルこそないが、さながらあゆが人々を乗せるDJに思えてくる。

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ Lelio 歌詞 - 歌ネット

 

 

NOW & 4EVA

作曲:原一博

編曲:中野雄太

 

EDM中心でまとめられたアルバムの最後は、アルバム曲では唯一EDMではない、なじみ深い路線のバラードである。Bメロがないが、終盤に大サビがある構成である。

「私」が距離のある「君」に想いを寄せ続けるのは『Pray』にも似ているが、『Pray』のように「君」の幸せをひたすら祈り、自分の事を忘れていいとさえ言うのではなく、自分にとっていかに「君」がいかに必要な存在だったか、生々しい叫びとして綴られている。「君の夢を見て目が覚めたら泣いてた」「繋いだ手の温もりを忘れそうだった」と、「君」がここにいる実体ではない事の苦しみが伝わってくるようだ。「一秒だけでも多く 側に居たくて帰れない帰らない」とさえ思った「君」は、夢を共有していた人。変わらない想い出と、変わり続ける今の狭間で、それでも「同じ夢だけを今もまだ見てる」と、「私」は泣いたまま叫んでいる。

しかし歌の終盤になると、「君にもう夢でしか会えないと思ってた」という言い回しで、「君」との間に再びのつながりをそこはかとなく匂わせる。そこもまた、二度とは会えない覚悟をした『Pray』とは違うところだ。「叫んだ」が「叫ぶよ」に変わり、「同じ夢を君と見続けたい」とやや前向きな言い方にもなる。ただし、「君」との関係が元に戻ったのかどうかははっきりしない。以前とは違う向き合い方なのかもしれないし、そもそもどの程度近付いたのかも曖昧である。この辺り、絶妙にぼかす言葉選びがなされている。

大サビで「Let me love you forever(君を永遠に愛させてほしい)」と切に歌われる。永遠を信じないあゆ作品において、それでも永遠と出てくるのは、「君」を想う心をこのまま持ち続けたいという願いなのかもしれない。

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ NOW & 4EVA 歌詞 - 歌ネット

 

 

 

 

遅れましたが、あけましておめでとうございます。

日本は大変な幕開けとなってしまいましたが……皆さんはご無事でしょうか。

私は悲しい時にあゆの歌を聞くと、あゆが傷に寄り添ってくれているような気持ちになります。

今年もあゆの歌で、悲しみも喜びも分かち合いましょう。