黙ってayuを聞け

浜崎あゆみさんの歌 とりわけ歌詞の魅力を語るブログ

8thアルバム『Secret』(前編)

前のアルバム『(miss)understood』のイレギュラーな作りを思えば、あゆ作品としてなじみ深い路線ではあるだろう。キャッチーで美しいメロディーや、カッコいいハードロック、繊細な言葉……我々がよく知るあゆの魅力である。だが、それは “あゆっぽい”仕上がりだった2つ前の『MY STORY』に「戻った」ということを、決して意味しない。『(miss)understood』あってこその『Secret』であり、『MY STORY』から『Secret』に直接繋がることはあり得なかった。「戻った」のではなく、「進んだ」のである。『Secret』に収められた楽曲を聴いてゆけば、そのことがきっと分かるはずだ。

「Secret」というタイトルであるからには、このアルバムには「秘密」が込められているのだろう。1曲1曲、隠されたメッセージを読み解くように聴きたい1枚である。

ジャケットは黒をバックに、きらめきをまとうあゆ。CDのみ盤では全身が映っているが、DVD付属盤ではほぼ横向きのバストアップで、髪を豪奢にそよがせる姿が肩に描かれたユニコーンとイメージを重ねている。歌詞カードもジャケットから一貫した雰囲気で、闇の中で光が差すように、「秘密」が浮かび上がってくる期待が持てるだろう。DVDにはシングルで発表した作品を含む7曲分のPVとメイキングを収録。

 

〔『Secret』の記事 【前編】 【中編】 【後編】

 

Not yet

作曲・編曲:CMJK

 

ワンコーラス分の長さで、歌詞カードには載せられていないが、歌詞のある作品。「秘密を教えよう」と囁くところから、解放されたようにダンサブルな曲調となる。さてこの先、あゆはどんな秘密を打ち明けるのだろうか?

 

 

until that Day...

作曲・編曲:CMJK

 

前曲からつなぎ、更に次の『Startin’』へとつながる、エレクトロニックの強いロック。サビのメロディーはあまり音が動かず直線的で、きっぱりとした言葉を息つく間もなく畳みかけてくる。時折入る気怠く渋いギターがアクセントだ。

「まだまだ終われない 止まってられない」で始まるこの歌は、聞き手に対する力強いメッセージと取れる。体は切り売りしてかまわないが、「心だけは 他の誰にも 明け渡さない」という意志、「自分のためだけに生きるなんてつまらない」という信条。迷いが生じたとしても「あなたが見ててくれるから」進み続ける。こんなことを言われたら、ファンは喜んであゆについて行く外はない。

一方で、「まるで全て わかったような気になってるそこの人」に対する、はねつけるような言葉も並べられている。「伝わってるわけない」「伝えたいとも思わない」。あゆ作品にこれまで綴られてきた、伝わらないもどかしさ、理解し合えない哀しさ、孤独感といったものを思えば、この割り切りは新鮮だ。「ある人だけ理解してくれればいい」という描写が登場する作品もあったが、「伝えたいとも思わない」まで今回は踏み込んでいる。

そして何より衝撃的なのは、「私がこの場所を飛び出してった時」に言及したことだろう。アルバム序盤にして既に、秘めた想いが炸裂したらしい。ファンにとっては仮定ですら考えたくない話だが、その時は「満足そうな顔」をしているはずだとあゆは歌う。逆に言えば、失望や絶望を理由にその時を迎えることはない、とも取れる。「あなたは見守っていてね いつかの その日まで...」。2019年現在、まだその日は訪れていない。

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ until that Day… 歌詞 - 歌ネット

 

  

Startin’

39thシングル。当該記事を参照。

 

 

1 LOVE

作曲:野井洋児

編曲:HΛL

 

ヘヴィーなハードロック。ここまで重心を低くして鳴り響くロックナンバーは、久しぶりかもしれない。

「あたし」の元にある「花」を見て、それが何の苦労もなく美しく咲き続けるものだと思う人がいる。いちいち構ったり反論したりせずに、「あたし」はただ「JUST 1 LOVE(ただ一つの愛)」を追い求めていく。「花」とは何の例えで、「愛」がどんな愛なのかを考えてみれば、これもスターの立場と覚悟が垣間見える歌と言えるだろう。

この作品もサビのメロディーが直線的だが、『until that Day...』のような早口の畳み掛けではなく、ゆっくりはっきり噛み締めるように突き付ける。「生きるってのは常に自分の手で選択をし続ける事」と言い切り、「列からはみ出しちゃう」自分の性分を貫く主人公。誰かがとがった言葉でさすことも、口をはさむことも「ご自由に」と気にしない。こうして並々ならぬ信念を持ち、何を言われても乗り越えてきたからこそ、「花」は咲いているのである。

PVは、お金の飛び交う舞台で様々な「見世物」が繰り広げられるという内容。退廃的かつ露悪的な世界観とストーリーはなかなか刺激が強い。その内容から、やはりスターが抱える心境を思わずにはいられないが、同時にあゆがいかに強い矜持を持って信じる道を歩んできたかも伝わってくる。あゆが披露するポールダンスは迫力満点で目が離せない。

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ 1 LOVE 歌詞 - 歌ネット