taskinst
作曲・編曲:tasuku
tasukuさんによるインストゥルメンタル。オルゴールのような音から始まり、カッコいいロックサウンドを重ねて展開し、またオルゴールの音で締める。しんみりとしていたアルバムの雰囲気は、次の曲からまた表情を変える。
Born To Be...
39thシングル。当該記事を参照。
Beautiful Fighters
BLUE BIRD
40thシングル。当該記事を参照。
kiss o’ kill
作曲:湯汲哲也
編曲:田辺恵二
前曲で明るく爽やかな気分になったのだが、そのままで終わらないのがこの『Secret』というアルバムである。ここで登場するのは激情を露わにしたハードロック。出だしの子供達の歌声は無邪気さがかえって不気味であり、何処か儀式めいて聞こえる。パイプオルガンの荘厳な音も不安を煽るように響く。
歌に描かれた「私」と「あなた」の関係は、痛々しく、どこか危うい。「あなた」の人物像自体がとても不安定なのだ。「まるで笑うように涙を流して まるで泣くように笑うあなた」という、サビの描写がそれを端的に表している。
タイトルの「o’」は何を省略したものか?それによって、タイトルの意味も変わるだろう。例えば『(miss)understood』のような歌を思い出すと、あゆに「キスする(=好意的である)」ふりをして、「殺す(=攻撃する、害を与える)」ような人もたくさんいたはずだ。この歌の「あなた」がその一人かどうかは分からないが、あまり穏やかでない場面が描かれているのは確かである。ただ、この歌での「私」は「あなた」を批判しないし、無視するわけでもない。むしろ「あなた」の強がる態度に弱さを見て、「受け止めてくから」「分かっているから」と理解を示す。「結局寄り添ってる」という姿はあまりにも献身的で、かえって空恐ろしいものすら感じる。
歌詞リンク:浜崎あゆみ kiss o'kill 歌詞 - 歌ネット
Secret
作曲:湯汲哲也
編曲:HIKARI
最後を飾るのはアルバムタイトル曲だ。美しいロックバラードだが、物悲しく、うら寂しい印象を与える。あゆのヴォーカルも全体として抑制的で、掠れたように歌っている。
「すれ違う少女達」の「自由な羽」の眩しさから、「私」は目をそらしてしまう。「私」の翼はひとつしか残っておらず、「真実にだけ届かない」のに、かと言って「羽下ろす勇気もない」。あゆの“翼”や“飛ぶ”という表現は、『Depend on you』『Endless sorrow』『Moments』など、何処か余裕のなさを感じることの方が多い。この歌では、こんな不自由な飛び方しかできないこともあるのだと気付かされる。
繰り返すが、これはアルバムタイトルを冠した曲である。そのタイトルは「秘密」を意味する。アルバムを通して辿り着く最後の「秘密」がこの歌に込められているとするなら、何と胸を締め付ける告白なのだろう。序盤で「いつかのその日まで」は「まだまだ終われない」と意気込んでいたのに、この歌では「いっそここから連れ出して」と願う。2曲前では「居場所はいつもここにあった」と歌っていたのに、この歌では「私は変わらず 居場所をずっと探しています」と孤独に立ち戻ってしまう。「答えなんてない」中、「自分の手で選択」してきたはずなのに、「いつわりだらけの日々」とまで言ってしまう……。
この歌で呼びかけている相手は、我々聞き手だろうか?だとすれば、「まだまだ終われない」と歌うあゆも、「いっそここから連れ出して」と歌うあゆも、両方を心に刻もう。相反して見えても、どちらも歌として綴りたい本心であり、伝えたい「秘密」であるはずだから。
後に41stシングル『glitter/fated』に再録。
歌詞リンク:浜崎あゆみ Secret 歌詞 - 歌ネット