黙ってayuを聞け

浜崎あゆみさんの歌 とりわけ歌詞の魅力を語るブログ

再考:『poker face』

参照:1stシングル『poker face』

 

poker face

 

「いつだって泣く位簡単だけど 笑っていたい」「あなたの愛が欲しいよ」ストレートで切実なメッセージ、しかしタイトルは「無表情」。この世界観が、そのままずっとあゆ作品に連なっているように見えるのは気のせいだろうか。あまり時を置かずして『For My Dear...』では「いちばんに言いたい言葉だけ言えない」ことが歌う理由として語られ、もっと後で人気のバラード『Key ~eternal tie ver.~』では歌うことが自分にとって伝える術だと綴られている。元を辿れば「ポーカーフェイス」とは駆け引きから生まれた言葉だが、ここにはそんな策略は描かれていない。上手く伝えられない不器用さを抱えながら、なおも伝えようとすること。伝えたいという想いが歌になること。あゆが繰り返し歌にしてきたその懸命な姿勢は、デビュー曲にして既にあったものなのだろう。

「ウソや言い訳 上手になる程 むなしさに恐くなるよ」という歌詞からは、「ホントの自分の姿」を何とか見失わないようにしている印象を受ける。それだけに、「信じてる心がある」という小さな確信は説得力を持ち、「あなたの愛が欲しいよ」に偽りのない本音を感じられるのだ。

PVでは、春夏秋冬を思い起こさせる景色と、木の枝に載せられたたくさんのテレビ画面にあゆが登場する。あゆが年中メディアに映るようになるのは、もう少し先のこと。

 

 

FRIEND

 

この歌の「君」は、遠く離れているだけでなく、ともすれば連絡もあまり取り合えないような相手なのだろうか。「私」が語っているのは思い出であり、折に触れて「くり返しくり返し」しているのは自分に何かを言い聞かせることなどで、『Ladies Night』のように直接相手とつながりを持つことではない。二人の間に何があって、今はどんな距離感なのか。

仲違いをして疎遠になる、とは限らない。仲良しのまま、何となしに遠ざかってしまうこともある。この歌では「細くてでも強いその手 離したの私だから」という歌詞に、ほんの少しだけほろ苦さがあるが、あまり悲劇的な様子は描かれていない。率直な飾らない言葉で、「離れてても胸の奥で友達だよ」「君との日々 思い出して 支えにして」と語る。

「今よりキズつきやすくて でもきっと輝いてた」という若さを振り返るような歌詞や、季節や天気に触れる表現に、瑞々しさが溢れる。そして「夏」という単語も登場する。デビューシングルの収録曲で既に「夏」を要素の一つに選んだあゆは、その後数々の“夏歌”を生み出した。夏にどんな思い入れがあるのだろうか。多くの作品で描かれた夏、そして様々な季節を楽しみたい。

 

 

 

 

以前、再考記事はアルバム単位で、と書いたのですが、『A Song for ××』くらいまでの作品は元々の記事の文章が短く、その分分量が多くなりそうなので、シングルはシングルで分けてみます。

また、期間限定で「M 愛すべき人がいて」をカテゴリに追加します。このブログは歌以外のことに触れない方針ですが、せっかくなのでカテゴリだけ……。シングルはもちろん『M』まで、アルバムは『A BEST』までの作品がここに入ります。