黙ってayuを聞け

浜崎あゆみさんの歌 とりわけ歌詞の魅力を語るブログ

再考:『Duty』(後編)

参照:3rdアルバム『Duty』(後編)

   17thシングル『SURREAL』

 

 

SURREAL

 

「背負う覚悟の分だけ可能性を手にしてる」と言い切り、同情心は「まるで役にも立たないね」と突き返す。「大事なモノ」に伴う痛みを自覚し、「感覚だけは閉ざしちゃいけない」と心に決める。それは裏を返せば、時に引き受けざるを得ない痛みも、自分にとっての大事なモノを実感させる証拠の一つということかもしれない。例えば直前の『絶望三部作』で綴られた深い悲しみも、それだけ大事なモノがあったと教えているのだろうか? あゆは想いを歌詞に綴る「感覚」を携え、歌い手としての「可能性」をこれからも広げていくことに決めた。そこに下手な同情は要らないのだ。

アルバム『Duty』とシングル『SURREAL』、どちらのジャケットも檻に閉じ込められた“ヒョウあゆ”だ。しかし『SURREAL』のPVの“ヒョウあゆ”は、ジャングルの奥に潜んでいる。当時のあゆにとっては、どちらが現実で、どちらが理想だったのか。現実とは思えない「どこにもない場所」で、「私は私のままで立ってるよ ねえ君は君のままでいてね」と、シンプルで切実な想いを叫ぶ。言いたくとも言えない「あの人」への想いを抱え、その場所に立ち続けることはどれほどの痛みを伴うだろう? しかしあゆは既に、「背負う覚悟」を決めているのである。

 

 

AUDIENCE

 

Duty』や『SURREAL』を聞くと、何やら悲愴な気持ちにならなくもないが、もちろんあゆは義務感だけで歌っているわけではない。聞き手を巻き込みながら手を叩いて高らかに歌い、「君達が僕の誇り」とはっきり示してくれる。「加速度ばかりが増してる」(『too late』)と目まぐるしい環境に戸惑ったり、『vogue』や『Duty』で移ろう時の無常さを見つめていたりするからこそ、「ウマイこと負けてみよう」という境地になり、先を歩くのでも後ろをついていくのでもない、「君達」と肩を並べたいという気持ちになるのかもしれない。

「皆で分かち合えるように作られている」という「幸せのトリック」の存在を教えてくれるが、あゆも一緒にそれを探してくれるはずだ。「両手を広げて一緒に手を叩いて歩く」という開放的なイメージ、「もうひとりぼっちじゃない」という歌詞の明るさには、このアルバムを聞いてきて初めてほっとする気持ちを抱く。

 

 

teddy bear

 

「~ました」という丁寧語で、物語のように綴られているのは『SCAR』と共通する。こちらの方がより静かで、シンプルな中に深い悲しみが滲み出るような味わいだ。

小さく頼りない背中をしていたという「あなた」と、私との間には何があったのか。「笑い合えていた」という良い思い出の次には、「人はどうして 同じような過ち あと何度繰り返したら~」と、普遍的な言い回しでぼかした表現が続く。そして「期待に弾む胸」「心待ちにして」と楽しみにする気持ちを詳しく描写した後で、翌朝テディーベアを見つけたところは淡々と見た景色を書くのみである。その言葉に現れないものこそが、聞き手に迫り胸を締め付けるのだ。

「昔」と言うくらいには、時間の経った過去なのだろう。それでもこうして思い出してしまうらしい。どんな経験から生まれた作品なのか、テディーベアという可愛らしいアイテムも、あゆの歌の中では哀切を演出するものとなる。

 

 

Key ~eternal tie ver.~

 

「他には何も出来なくて」が歌う理由になっているところが、いかにもあゆらしい。違う言い方をすれば、絵筆であれ、手紙であれ、まず初めに伝えたい想いが心の中にあるということだろう。この作品で、「あなた」への温かな愛を感じると共に、あゆが歌という表現の手段を得た僥倖を思わずにはいられない。「器用には伝えられないけれど」とあるが、それでもなお伝えようとするとき、あゆには歌がある。『AUDIENCE』のように「君達」に向けて高らかに歌うこともあれば、こうして「あなた」に「鍵をかけ」て贈ることもある。他の手段ではない、歌という伝え方。絶望を経て覚悟を決め、歌い手であり続ける中で、歌うことそのものを描いたあゆ作品が幾度となく登場する理由が、何となく分かるような気がする。

 

 

えー……大変久しぶりになってしまいました。8月に入ってから色々とバタバタしておりましたが、幸いにも体調を崩すようなことはなかったのでご安心下さい。

さて、「7月いっぱい」としていた「M 愛すべき人がいて」のタグですが、ずっと付けっぱなしになっております。というのも、前回「再考:『Duty』(前編)」を上げた際に、タグを付けるべき範囲の作品のうち、何故か元記事の『Duty』前編後編にだけタグが付いていないという大失態に気付いてしまったのです。なんてことでしょう……💦

その時点で7月も終わりかけていたので、再考の後編もあるし、『Duty』だけたった数日しか付けないのはあんまりだと思い、付け続けることにしました。

しかしその後編もかなり時間が経ってからの投稿になってしまいました。取り敢えず再考記事はこれで終了し、次にリリース順の続きから記事を上げるので、そのときまでタグを続行します。

何だかかなりグダグダですがこんな感じで……😊