黙ってayuを聞け

浜崎あゆみさんの歌 とりわけ歌詞の魅力を語るブログ

8thアルバム『Secret』(前編)

前のアルバム『(miss)understood』のイレギュラーな作りを思えば、あゆ作品としてなじみ深い路線ではあるだろう。キャッチーで美しいメロディーや、カッコいいハードロック、繊細な言葉……我々がよく知るあゆの魅力である。だが、それは “あゆっぽい”仕上がりだった2つ前の『MY STORY』に「戻った」ということを、決して意味しない。『(miss)understood』あってこその『Secret』であり、『MY STORY』から『Secret』に直接繋がることはあり得なかった。「戻った」のではなく、「進んだ」のである。『Secret』に収められた楽曲を聴いてゆけば、そのことがきっと分かるはずだ。

「Secret」というタイトルであるからには、このアルバムには「秘密」が込められているのだろう。1曲1曲、隠されたメッセージを読み解くように聴きたい1枚である。

ジャケットは黒をバックに、きらめきをまとうあゆ。CDのみ盤では全身が映っているが、DVD付属盤ではほぼ横向きのバストアップで、髪を豪奢にそよがせる姿が肩に描かれたユニコーンとイメージを重ねている。歌詞カードもジャケットから一貫した雰囲気で、闇の中で光が差すように、「秘密」が浮かび上がってくる期待が持てるだろう。DVDにはシングルで発表した作品を含む7曲分のPVとメイキングを収録。

 

〔『Secret』の記事 【前編】 【中編】 【後編】

 

Not yet

作曲・編曲:CMJK

 

ワンコーラス分の長さで、歌詞カードには載せられていないが、歌詞のある作品。「秘密を教えよう」と囁くところから、解放されたようにダンサブルな曲調となる。さてこの先、あゆはどんな秘密を打ち明けるのだろうか?

 

 

until that Day...

作曲・編曲:CMJK

 

前曲からつなぎ、更に次の『Startin’』へとつながる、エレクトロニックの強いロック。サビのメロディーはあまり音が動かず直線的で、きっぱりとした言葉を息つく間もなく畳みかけてくる。時折入る気怠く渋いギターがアクセントだ。

「まだまだ終われない 止まってられない」で始まるこの歌は、聞き手に対する力強いメッセージと取れる。体は切り売りしてかまわないが、「心だけは 他の誰にも 明け渡さない」という意志、「自分のためだけに生きるなんてつまらない」という信条。迷いが生じたとしても「あなたが見ててくれるから」進み続ける。こんなことを言われたら、ファンは喜んであゆについて行く外はない。

一方で、「まるで全て わかったような気になってるそこの人」に対する、はねつけるような言葉も並べられている。「伝わってるわけない」「伝えたいとも思わない」。あゆ作品にこれまで綴られてきた、伝わらないもどかしさ、理解し合えない哀しさ、孤独感といったものを思えば、この割り切りは新鮮だ。「ある人だけ理解してくれればいい」という描写が登場する作品もあったが、「伝えたいとも思わない」まで今回は踏み込んでいる。

そして何より衝撃的なのは、「私がこの場所を飛び出してった時」に言及したことだろう。アルバム序盤にして既に、秘めた想いが炸裂したらしい。ファンにとっては仮定ですら考えたくない話だが、その時は「満足そうな顔」をしているはずだとあゆは歌う。逆に言えば、失望や絶望を理由にその時を迎えることはない、とも取れる。「あなたは見守っていてね いつかの その日まで...」。2019年現在、まだその日は訪れていない。

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ until that Day… 歌詞 - 歌ネット

 

  

Startin’

39thシングル。当該記事を参照。

 

 

1 LOVE

作曲:野井洋児

編曲:HΛL

 

ヘヴィーなハードロック。ここまで重心を低くして鳴り響くロックナンバーは、久しぶりかもしれない。

「あたし」の元にある「花」を見て、それが何の苦労もなく美しく咲き続けるものだと思う人がいる。いちいち構ったり反論したりせずに、「あたし」はただ「JUST 1 LOVE(ただ一つの愛)」を追い求めていく。「花」とは何の例えで、「愛」がどんな愛なのかを考えてみれば、これもスターの立場と覚悟が垣間見える歌と言えるだろう。

この作品もサビのメロディーが直線的だが、『until that Day...』のような早口の畳み掛けではなく、ゆっくりはっきり噛み締めるように突き付ける。「生きるってのは常に自分の手で選択をし続ける事」と言い切り、「列からはみ出しちゃう」自分の性分を貫く主人公。誰かがとがった言葉でさすことも、口をはさむことも「ご自由に」と気にしない。こうして並々ならぬ信念を持ち、何を言われても乗り越えてきたからこそ、「花」は咲いているのである。

PVは、お金の飛び交う舞台で様々な「見世物」が繰り広げられるという内容。退廃的かつ露悪的な世界観とストーリーはなかなか刺激が強い。その内容から、やはりスターが抱える心境を思わずにはいられないが、同時にあゆがいかに強い矜持を持って信じる道を歩んできたかも伝わってくる。あゆが披露するポールダンスは迫力満点で目が離せない。

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ 1 LOVE 歌詞 - 歌ネット

40thシングル『BLUE BIRD』

BLUE BIRD

作曲:D・A・I

編曲:HΛL

 

爽やかさ、明るさ、そして一抹の切なさを込めた、“夏歌”の名作である。ダンサブルなポップスの曲調は同じく夏を歌った『fairyland』にも通じるが、『fairyland』が過去と現在の歌なら、『BLUE BIRD』は行く先をより見据えた歌だ。

「グレーな雲が流れたら この空が泣き止んだら」という冒頭の歌詞は、恐らく言葉通りの意味に留まらない。「ちょっと長めの眠り」から目を覚まし、「君」が見守ってくれた「翼」を広げようとしている「僕」は、ようやく何かを乗り越えたのだろう。「居場所はいつもここにあった」という一文は、例えば「居場所がなかった」と歌った『A Song for ××』や、数々の作品に漂っていた孤独感を思うと感慨深いものがある。

「君」は「僕」に「君が笑ってくれればいい」と言い、「僕」が傷を負えば自分の翼をあげるつもりでいる。翼を差し出す描写は『Endless sorrow』や『Moments』にもあったが、この2曲のような悲劇性はあまり感じられない。「青い空を共に行こうよ」と歌う胸躍るサビは、「君」が「僕」に語った言葉で出来ている。

笑う描写と泣く描写があるが、どちらかと言えば泣く方の比重が大きい。主人公本人に関しては泣く場面しかなく、中盤でこらえていた涙を最後には流してしまう。そうして「僕」も「君」も泣いてしまったところで歌が終わる。ほとんど影のない曲調に乗せて描かれた涙は、簡単に言い表せるものではない、お互いを想う感情が溢れたものなのだろう。「青い鳥」は言うまでもなく幸せの象徴である。二人の行く先には幸福な未来が待っているに違いない。

なお、 “僕”という一人称の使用は既にあゆ作品に定着した特徴だが、この歌は実は「君」も“僕”と使っており、二人とも「僕」という初めてのパターンである。

PVでは、船の上や海辺で仲間と楽しむあゆと、対照的に砂浜でひとり佇むあゆが入り混じる。後者は潮の満ち引きでわずかな時間しか現れないという島で撮影され、「青い空」と「白い砂浜」、そして青い海という絶景が広がる。歌の爽快感をそのまま体感しているかのようだ。

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ BLUE BIRD 歌詞 - 歌ネット

 

 

Beautiful Fighters

作曲:菊池一仁

編曲:CMJK

 

チアリーディングの元気いっぱいな掛け声と足音、ホイッスルが鳴り響く、「乙女達」への応援歌。“女性”を描いたあゆ作品も、テーマは多様化しているようだ。

「おとぎ話はおとぎ話でしかない」「白い馬に乗ってなんかないあなた」というように、おとぎ話をモチーフにした表現は『monochrome』でも見られた。『monochrome』では悲しい現実を噛み締めていたが、今回は現実の中で頑張ろうとする意志が見られる。「ガラスの靴はきっと繊細すぎて この時代を駆け抜けるには ちょっと向いてない気がする」というウィットに富んだ言い回しも、おとぎ話の中で生きられないことを嘆くのではなく、強く生きていくためのヒントを示しているのだろう。

「癒されない傷口」や「欲望達は完全には満たされない」という、一見繊細な言葉も、この歌においては影や悲しみなどをそれほど感じない。「やってられないって日」があっても諦めない、「ほんの少し泣いたり」しても戦い続ける、自分を含めたそんな「乙女達」を、「we are Beautiful Fighters」とこの歌は讃えるのだ。

PVでは、あゆを含む女性達がそれぞれの仕事で奮闘する様子を描いている。上手く行くばかりではない現実を乗り切る彼女達は、夜、レーシングカーの華やかなショーで自らを解放させる。迷惑をかけてしまった相手との関係も微笑ましい。

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ Beautiful Fighters 歌詞 - 歌ネット

39thシングル『Startin’/Born To Be...』

両A面シングル。ジャケットは黒をバックに座り込むあゆで、脚線美を強調するポーズ。DVD付属盤のDVDには両曲のPVを収録。

 

Startin’

作曲:原一博

編曲:CMJK

 

クラッチ音やサイレンのように唸る音が飛び交う、エレクトロニックを強調したロック。鋭いリズムが聞き手の心をアグレッシヴに刺激する。

歌詞に綴られているのは、主人公の「僕」から「君」への激励だ。「まっすぐすぎてすぐにぶつかる」という「君」の歩き方を「とても好き」と言い、「君の代わりはいない」と存在価値を認めている。だからこそ、「答えなんてない 誰も教えてくれない」と、厳しい言葉も放つ。始めるも終わるも「君次第」、二度と戻らないこの瞬間にどんな決断をするか? もちろん「理想と違う答え」が待っているかもしれない。けれどこの世にひとりしかいない自分が決めたことなら、「思いきり胸張って 顔を上げ」ればいいのだ。突き放すと言うよりは強く背を押すような言葉に、自然と背筋が伸びる。

この歌の歌詞を見るに、やはり1つ前のシングル『Bold & Delicious/Pride』や、直近のアルバム『(miss)understood』での挑戦は大きな転換点だったのかもしれない。始める前に悩んでも「答えなんてない」し、その挑戦への反応は様々で、「理想と違う答えも 受け止める事」が必要になる。それでも自分で選んだことだから、「思いきり胸張って 顔を上げる」。「僕」から「君」へ呼びかける構図そのままに、あゆはいつもこうして自分を奮い立たせているのだろうか。

PVでは、踊りまくったりバイクを飛ばしたり、とにかく攻めの姿勢を貫くあゆがどこかコミカルに描かれる。

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ Startin' 歌詞 - 歌ネット

 

 

Born To Be...

作曲:原一博

編曲:原一博+CMJK

 

『Startin’』とはアプローチが違うが、こちらも聞き手を励まし応援する歌だ。力強いリズムと華やかな曲調、そして高らかな鐘の音が、歓喜に湧くスタジアムを思い起こさせる。

旅立った頃、「君や僕」はまだあどけなく、無防備な笑顔だった。もう今は無邪気ではいられない。だが「今ならわかる事がある」と主人公は言う。多くの失敗があっても、「後悔だけはないように やってきた」。「いつかは 許せる事がある」と、未来を見据えている。無邪気でなくなったから夢も忘れてしまうのではなく、様々な出来事を経た今の自分が夢を追うのだ。「簡単には諦めない」という、「君」との約束を思い出しながら。『fairyland』のテーマとも似ている内容だが、こちらは懐かしさや切なさよりも、夢に向かう希望に重きを置いている。

「あの頃の僕らに もしもどこかで出会ったら」という想像は、これまでの「僕ら」の道程を肯定し自らを勇気づけているだけでなく、「僕ら」と同じように夢を追いかける人への呼びかけとも取れるだろう。まだまだ無邪気な人もいれば、既に失敗を味わった人も、諦めかけている人もいるかもしれない。「人知れず膝を抱えながら 涙していた夜を 乗り越えた小さな背中が 教えてる」という健気な歌詞が、夢を持つ者の胸に迫る。

歌の中では「Born To Be free」と歌われるが、タイトルを見て分かるように、「どうなるために生まれたのか」という問いへの答えは一人一人違うはずだ。PVでは、黄金の光に溢れたまばゆいステージの場面の他、それぞれ自分の夢を抱いた子供達が登場する。その中にあゆも混じっている。「今日がもし 夢に遠くても」で終わる歌詞は、輝かしい未来に向かって道が続いて行くことを示すかのようだ。

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ Born To Be... 歌詞 - 歌ネット

 

 

teens “Acoustic Version”

作詞:前田たかひろ

作曲:小室哲哉&久保こーじ

編曲:中野雄太

 

TRFさんの楽曲をカバーしカップリングとして収録した。A面2曲とは打って変わって、静かでやわらかいイメージ。たゆたう夜風のようなストリングスが印象的である。あゆのヴォーカルも、そっと聞き手に寄り添うかのようだ。

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ teens(acoustic version) 歌詞 - 歌ネット

7thアルバム『(miss)understood』(後編)

〔『(miss)understood』の記事 【前編】 【中編】 【後編】

 

Will

37thシングルのカップリング。当該記事を参照。

 

 

 

HEAVEN

37thシングル。当該記事を参照。

 

 

Are You Wake Up?

作曲・編曲:CMJK

 

インストゥルメンタル。ギターのクールな音が印象的で、更に電子音が軽快さを与えている。爽やかな「目覚め」を演出した後、アルバムは明るい曲が続く。

 

 

fairyland

36thシングル。当該記事を参照。

 

 

Beautiful Day

作曲:GEO of SWEETBOX

編曲:tasuku

 

明るく清々しいポップス。サウンドが可愛らしく、軽やかな気分にさせてくれる。

わかれ道で選ばなかった方は、いつも輝いて見える。だから選択は悩ましい。明日は見えないから不安である。けれど「わかりきった明日」は「つまらない」はずだ。内容は『Will』にも通じるが、こちらはもう少し肩の力を抜いて、より前向きになれる描写である。「選びたいその答えを 選ぶのに躊躇しているだけ」「美しいことだけでは 美しいものは手に出来ない」という歌詞は、聞き手の心を掴む見事な表現だ。選んだことで、選ばなかった方を思い胸を痛めるとしても、それも目標へと向かい進んでいくには必要なこと。汚い真似をしろという話ではなく、美しいものは何の苦労もなしに手には入らないと教えている。

「It’s a Beautiful Day(これが美しい日)」という肯定と、「恐れる事などない」という呼びかけ。人生の教訓とも言うべき、悩める人の背中をそっと押すような励ましに満ちた歌だ。

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ Beautiful Day 歌詞 - 歌ネット

 

 

rainy day

作曲:GEO of SWEETBOX

編曲:中野雄太

 

アルバムの最後を飾るのは、ほっと心を緩めるバラードだ。時計の針の音やオルゴールの音、ねじを巻く音などが織り交ぜられた、童話のように優しいサウンドは、凍える雨と、その中で感じる人の温もりとを両方思い起こさせる。ふわりと漂うコーラスがあゆのヴォーカルをそっと包む。

ある寒い日、強い雨に濡れることもいとわず、「僕」は「君」を待っていた。終わりだとしてもかまわないとさえ思い、微笑みながら。やがて現れた「君」を見て、泣き出しそうになる「僕」。二人を「一瞬の光が照らした」という場面で歌は終わるが、このとき流れるサウンドは「一瞬の光」に留まらず、雨上がりの虹までも予感させるほどに輝かしい。

この雨の日は、二人にとってどんな出来事だったのだろう? たまたま傘もなく雨に降られた待ち合わせ、その不運の中でふと互いの大切さに気付いたのかもしれない。しかし例えば、これが駆け落ちの約束だったとしたら? 冷たい雨は二人の障害になってきたものの比喩かもしれないし、「幸せに笑い合う人々」の描写や、泣き出しそうになったのをわざわざ「悲しみのせいじゃない」と断っていることは俄然、深い意味を持つだろう。

確かなのは、この雨の日が思い出として語られていることであり、「これからの行く道を祝うかの様」だと感じる光があったことだ。二人が描くドラマを想像しながら、雨の日にそっと聴きたい。

PVでも雨の降る日を舞台にしており、昔のハリウッド女優のようなあゆが街並みに映える。

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ rainy day 歌詞 - 歌ネット

7thアルバム『(miss)understood』(中編)

〔『(miss)understood』の記事 【前編】 【中編】 【後編】

 

alterna

36thシングルのカップリング。当該記事を参照。

 

 

 

In The Corner

作曲:GEO of SWEETBOX

編曲:tasuku

 

ストリングスの音が軋むように、スリリングに響くR&B。「こわがらないで」と始まるのだが、どうにも不穏な空気は拭えない。

「あなた」をひとりにはしないと言う「私」。けれど綺麗すぎる「あなた」を恐ろしくも思っている。自らの愛の言葉を疑い、表に出した感情も「心の奥底と 繋がってるとは限らない」と言う主人公の態度は意味深だ。「私」は自分の本心が分からないのか、それとも気付いていながらつい隠してしまうのか。「綺麗すぎる」という「あなた」とはどのような関係なのか。「覚悟ならもう既に決めたわ」という歌詞の、「覚悟」は何を表すのか?

あゆ作品は「心の奥底」にある想いを丁寧に描き出すものが多く、例え“全て分かり合えるわけではない”とか“誰にでも伝わるわけではない”というスタンスがあっても、届く人には届くようにと言葉を尽くしてきた。この歌では「心の奥底と 繋がってるとは限らない」とだけ断って多くを語らないため、ひたすら不安を煽るような印象だ。

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ In The Corner 歌詞 - 歌ネット

 

 

tasking

作曲・編曲:tasuku

 

恒例のtasukuさんによるインストゥルメンタル。前曲からの流れを受け継ぐようなR&B調で、焦燥感を煽るストリングスが鳴り響き、やがてギターの音などと絡み合う。

 

 

criminal

作曲・編曲:原一博

 

何か事件が起きそうなほど、張り詰めた空気が重くのしかかるバラード。ピアノのシンプルな響きが恐怖感を煽り、サビではストリングスも取り入れた悲壮なハードロックとなる。ヴォーカルも、低く抑制的なところから、サビで一気に叫びへと変わる。

沈黙している「君」。「私」はその沈黙に「声にならない叫び」を聞いている。「君」が涙、そして「何か」を「私だけの為に」隠したことも感じ取っている。主人公の「君」に対する罪の意識は、何処から来ているのか?「繋いだはずの手さえも守る事が出来ない」という無力さや愚かさ?「君」がひとり戦ったり、「強くありたい」と願ってしまったりするのもそのせい?「許して欲しいとは言わない」と語るところを見るに、主人公は取り返しのつかないことをしたと感じているようだ。

だからこそ、想いは「未来へ」向けるしかない。「私」は「君にとびきりの景色見せたい」と願っている。果たしてそれは叶うのか。二人を待つのは明るい未来だろうか?

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ criminal 歌詞 - 歌ネット

 

 

Pride

38thシングル。当該記事を参照。

7thアルバム『(miss)understood』(前編)

あゆの持つ“あゆらしさ”は、それが世に広く知られるものであれ、あるいは熱心なファンこそ知っているものであれ、作品を重ね、変化や進化、挑戦を繰り返すうちに研ぎ澄まされたものである。例えばハードロック路線という一つの軸にしても、初めから前面に出していた訳ではない。だから新しい要素が見えたときには、“あゆらしい”かどうか、なんてあまり考えすぎない方がいいだろう。

その上での話だが、この『(miss)understood』は、あゆの歴史上、はっきりと異質であり、奇抜である。『RAINBOW』で初めて英語詞が出てきたことすら吹き飛ばすほどのインパクトだ。“あゆっぽい”仕上がりだった前のアルバム『MY STORY』と比べると、その奇抜さは更に際立つ。

作曲家は38thシングルの『Bold & Delicious』『Pride』を提供したGEO of SWEETBOXが中心であり、ジャケットや歌詞カードの写真がこの2曲のPV撮影時のものであるらしいことや、1曲目に『Bold & Delicious』を持ってきたことを見るに、やはりこのシングルが当時のあゆに何かヒントを与えたのかもしれない。J-popとは雰囲気を異にする洋楽の趣や、歌詞にもメロディーにも難解さを含む楽曲群は、それまでのあゆの作風とは一線を画す。ずっとあゆ作品を追ってきた聞き手ほど戸惑うかもしれないが、あゆが新しいアイディアを捕まえたのなら、共に楽しまない手はないはずだ。

「誤解」と「理解した女性」の二つの意味を込めたというアルバムタイトルは、『LOVEppears』を思い出させる。歌詞カードのあゆの写真には、白地に赤いハートマークがあしらわれている。DVD付属盤のDVDには、9曲分のPVとメイキング映像などを収録。初回特典には写真集が付き、DVD付属盤は『on my way』、CDのみ盤は『off my day』と、それぞれ内容が違う。

 

〔『(miss)understood』の記事 【前編】 【中編】 【後編】

 

Bold & Delicious

38thシングル。当該記事を参照。

DVDにはPVの他、『Bold & Delicious -SIDE STORY- (album ver.)』という映像を収録。元のPVとメイキングやオフショットの映像を織り込んだと思われる構成で、もう一つのPVと言える内容だ。

 

 

STEP you

35thシングル。当該記事を参照。

 

 

Ladies Night

作曲:GEO of SWEETBOX

編曲:CMJK

 

シンセの音が軽快に、しかしどこかミステリアスに響く。Aメロが丸ごとラップ調で畳みかけてくる構成は珍しい。

主人公の「私」にかかってきた電話。向こうの「彼女」は、「彼」とのことを打ち明けると泣き出してしまった。「私」は「彼女」をすぐさま迎えに行く。何とも心強い友情だ。友情とは言っても、『FRIEND』や『FRIEND Ⅱ』に比べれば何処かコミカルな作品である。そう言えば『FRIEND Ⅱ』では「君の辛さを知らずにごめんね」と歌われていた。今回は友達に寄り添えたようで何よりである。

「私」曰く、彼女の身の上は「他人事に思えない」のだそうだ。本当は「彼との戦い」ではなく「自分との戦い」だということも分かっている。夜が明けるまで、いや夜が明けても、ひたすら騒いでしまおう。『girlish』は女子会のような描写だったが、こちらは二人きりで盛り上がるらしい。

場面設定もさることながら、「付き合うわ」「思えないわ」という極端な女性言葉が、新しい個性を放つ。「女性」を歌った『Real me』や『my name’s WOMEN』にも、こういう言葉遣いは登場しなかった。ただ、冗談めかしているとは言え「私達は清くて 美しくて賢い」と大胆な肯定を表現し、現実を共に乗り切って行こうとする二人の姿からは、それら2曲とアプローチは違っていても、「女性」のパワーを強く感じる。

PVは、クレイジーな人々が潜むホテルの廊下を歩くあゆと、独裁者のごとく演説をするあゆとが交錯する構成。根源的な恐怖を呼び起こす描写の数々は、トラウマになること間違いなし。

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ Ladies Night 歌詞 - 歌ネット

 

 

is this LOVE?

35thシングル。当該記事を参照。

 

 

(miss)understood

作曲:湯汲哲也

編曲:tasuku

 

アップテンポの楽曲が続いた後で初めて登場するバラード。ロックナンバーで、サビはヘヴィーな印象もあるが、全体的には淡々としている。曲調も歌詞もどこか気怠く、やるせない。アルバムはここからシリアスさを増していく。

開き直ったように作り笑いをする主人公。しかし「同情がさむすぎる」と言い、中途半端な温もりよりは「見ないフリ」の方を望んでいる。「痛みは増える一方だろう ならば受け止めて行くまでさ」という歌詞は、表面的には力強くもある言葉に、虚しさや諦観、悲しみが潜んでいるようだ。

「親切そうなあの人々は 本当は何を知りたいのだろう」という部分は、やはりスターの孤独を思わずにはいられない。「好奇という名のナイフ」で、あゆは一体何度切り刻まれてきたのだろう。

ただ、歌の後半では「君は一体何が欲しいの」など質問を重ね、たった一度の人生で「君だけの道を描けばいい」と背中を押す。この「君」は誰だろう?仮に我々聞き手だとすれば、この歌の主人公は、自分のような道はお勧めしないと言っているのか?それとも、開き直るのと誇るのと半々で、これもまた一つの生き方だと言っているのか?「誤解」と「理解した女性」を同時に表すアルバムタイトルを冠したその意味も含め、考えてみたい。

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ (miss)understood 歌詞 - 歌ネット

カテゴリーについて

ブログのカテゴリー分けについてですが、若干仕様を変えました。

画面の表示は、もしかしたら以前より見づらいものになってしまったかもしれませんが、個人的なやむを得ない事情によるものですので、どうかご了承下さい。

 

 

最近、『UNITE!』、『Dearest』、『MY STORY(前編)』の記事に訂正を入れました。『UNITE!』と『Dearest』はリミックスの編曲者名を加えました。『MY STORY』については間違い探しレベルの手直しです。どちらにしても、大筋は変わらないのでご安心下さい。

 

 

これからもブログをよろしくお願いします。