黙ってayuを聞け

浜崎あゆみさんの歌 とりわけ歌詞の魅力を語るブログ

38thシングル『Bold & Delicious/Pride』

両A面シングル。ヨーロッパで活躍するドイツ出身のグループ・SWEETBOXの、GEOさんから楽曲を提供された。ジャケットは、紫と緑の入り混じるシースルーの衣装をまとったあゆで、占い師のように妖しい魅力を放つ。DVD付属盤のDVDには、両曲のPVを収録。

 

 

Bold & Delicious

作曲:GEO of SWEETBOX

編曲:CMJK

 

出だしから迫力のあるコーラスが度肝を抜く。前作で感動のバラードと、「CREA」名義での作曲に区切りをつける歌とを発表したばかりなのに、一息つかせる暇もない。エネルギッシュなゴスペル調の楽曲は、あゆ作品に新風をもたらした。PVは、ゴージャスな衣装でまさしくスター然としたあゆが、車の荷台に立ち、都会を駆け巡るという内容。歌にある勢いや思い切りの良さを感じる。

「大胆すぎるかなって位がちょうどいい」。序盤の歌詞がこの歌を端的に表している。描かれたメッセージだけでなく、あゆの書いた歌詞としてもまさしく「大胆」な仕上がりだ。「正直面倒クサイ」「踏み込めないのが一番さむい」「心配なんて意味不明」といった表現が並ぶことを、誰が予想していただろうか? ズバリ言い切る鋭い言葉の並ぶ歌詞は、もはやあゆ作品において珍しいものではなくなったが、この歌の歌詞は鋭いというより、ざっくばらんで不敵、豪快なイメージを持っている。

もう一つ大きな特徴は、サビのメインがコーラス隊であることだ。あゆのアドリブのようなヴォーカルは合いの手に回っているのである。「叫んで」「怖気付かないで」「自由になって」「もっと声を上げて」という歌詞の大合唱は、聞き手を有無を言わさず巻き込んでいく。「私を動かしてあなたの全てで」。誰も彼も皆自分を解放し、高らかに叫ぶことを、まるであゆが促しているかのようだ。

2つ前のシングルに収録された『alterna』では「変化を恐れるなら 離れたとこで見ててよ」と突き放すように歌われていたが、今作の大胆な試みこそ、我々に突き付けられたあゆの「変化」かもしれない。あゆはきっと、「離れたとこで見る」人を責めはしないし、いちいち構わないだろう。なればこそ、恐れない道を選び、これからもあゆの作り出す世界を見てゆきたいものだ。「大胆さ」を受け入れれば、「美味しい」体験も出来るのである。

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ Bold & Delicious 歌詞 - 歌ネット

 

 

Pride

作曲:GEO of SWEETBOX

編曲:CMJK

 

こちらも重厚なコーラスの響くゴスペル調だが、『Bold & Delicious』と違ってスローテンポである。ピアノやストリングスがドラマティックな、威風堂々としたバラードとなった。

歌詞は主人公と「少女」の対話が描写されており、これもあゆ作品の中では珍しい演出だ。この「少女」が誰なのかで解釈は変わるだろう。あゆに憧れを抱く人なのか、あゆ自身の過去なのか……。少女が主人公の持つ「自由」を「眩し過ぎる」と言うのに対し、主人公は「ないものばかりをねだる」人間の性を思い、「僕達が本当に欲しい物は一体何だろう」と聞き手に問う。少女にはその後、様々な葛藤が訪れたようだが、やがて「新たな発見」に辿り着いた。

歌詞の最後の2行、とりわけ「共に行こう」という呼びかけは胸を打つ。確かな物のない世界でも、他人から笑われることがあっても、自分の道を模索し続け、耳を傾ける者とは繋がろうとする。「諦めるよりも恐い事などない」と言える主人公の姿はまさしく誇り高い。ある意味では、『Bold & Delicious』で示した「大胆さ」やあゆ自身の新しい挑戦の、裏にあった覚悟や真意を綴ったようにも聞こえる。

PVは、『Bold & Delicious』のPV撮影の合間のようにも見え、気怠い空気が漂う。都会の喧騒と華やかさの影にある、美しいだけではない景色。歌詞に続いて、こちらも『Bold & Delicious』の世界観とは対を成すかのようだ。それでも最後に、あゆは背筋を伸ばして去ってゆく。

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ Pride 歌詞 - 歌ネット

37thシングル『HEAVEN』

HEAVEN

作曲:菊池一仁

編曲:中野雄太 + KZB

 

ever free』『Memorial address』に続く、死別の歌である。前の2曲が歌詞を公表せず、カップリングやボーナストラックとしての扱いだったので、このテーマでシングルタイトルになるのは初めてだ。

静かな出だしから、「Lalala」で感傷的な展開を見せて徐々に音量を上げ、サビを感動的に表現するバラード。サビは終盤に繰り返し出てくるのみという構成である。

これまでの死別の曲と一線を画しているのは、悲しみや苦しさが前面に出ていないことだろう。もちろん悲しいことなのだが、主人公の「私」はその出来事を「あの日きっとふたりは愛に触れた」と、愛を再確認する言い方で表現しているのだ。「どんな結末が待っていても 運命と呼ぶ以外他にはない」という歌詞からも、死に抗えない諦観よりは、ふたりで過ごした時間を肯定する意思が伝わってくる。「君」の死が「運命」なのではない。ふたりが出会い、愛し合ったことが「運命」なのだ。

極めつきはサビの「ふたりまだ見ぬ未来」という歌詞である。「君」の死をもって「決して見ることのない未来」になった、とは、主人公は言わないのだ。死別を受け止める悲しいまでの覚悟と、死に別れてなお愛し続ける矜持とが、聞き手の心に刻まれる。「サヨナラなんて言わない」という決意は、「サヨナラね」と悲嘆に暮れていた『Memorial address』とはやはり違う心境だろう。主人公の強く深い愛を、「天国」に捧げる歌である。

ジャケットは白を背景に、ほとんどシルエットのようなあゆの横顔を映している。PVはあゆの顔の正面をアップで映すスタートから、ワンカットのまま徐々にカメラが引いていく構成となっており、シンプルであると同時に挑戦的である。モノクロの画面と人影、電車の往来が、曲の世界を表現している。

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ HEAVEN 歌詞 - 歌ネット

 

 

Will

作曲:CREA + D・A・I

編曲:tasuku

 

ミディアムテンポのロックナンバー。Bメロとサビ、間奏の一部が4拍子で、後は3拍子という独特のリズムを持つ。『HEAVEN』はサウンドに和の要素があったが、このカップリングは和声音階に流麗なストリングスを乗せて、凜とした「意志」を感じる楽曲となった。

歌詞も和風の曲調に相応しく、「訪る岐路」「悲しき事」といった古語の言い回しが登場する。端整かつ簡潔な言葉遣いも多く、「誇り高くあれと」「光放て」と迷いなく言い切る様が清々しい。その上で、サビにある「ひらひら」や「きらきら」といった擬態語が絶妙な彩りを加えている。

人生の上で分かれ道はいくつもある。その分かれ道に気付けるか? 自分の「心の声」を聴いて道を選べるか? 自分のためと言いながら自分を見失わないか? 誰も知らないその先を拓いてくのは自分の「意志」である。「明日という闇」に対し「光放て」と言えるのが主人公の強さだろう。何があるか分からない明日は「闇」。だから自ら光を照らし歩んでいくのである。

なお、2019年現在、あゆは今作を最後に「CREA」名義での作曲をしていない。初めて作曲した『M』が代表作となり、『I am...』の頃には“ロックなあゆ”を確立させるに至った活動が区切りを迎えた。今後は一切「CREA」の名前を使うことがないのか、それともまた作曲を手掛けることがあるのかは分からないが、ひとまずは作曲家としてのあゆと、その挑戦を支えてきた方々に感謝を捧げよう。

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ Will 歌詞 - 歌ネット

36thシングル『fairyland』

fairyland

作曲:tasuku

編曲:HΛL

 

タイトルは「夢の国、おとぎの国」などの意味を持つ。キャッチーでノリのいいポップスがシングルを飾るのは久しぶりで、高揚感と爽快感に満ち、太陽のきらめきをおもわせるサウンドの“夏歌”となった。

一見明るい作品だが、歌詞には愁いや切なさが描かれる。「あのコやあいつ」は今、どうしているんだろう。待ち受ける未来も知らず、無邪気だった夏はもう、遠くなってしまった。「風の匂いが変わったよ」という歌詞は、夏の訪れだけでなく、大人になるにつれて変わっていく感性をも表しているのかもしれない。かつて『A Song for ××』では「いつから大人になる いつまで子供でいいの」と問い掛け、『Heartplace』では大人になることへの戸惑いが描かれた。ある日急に大人になるわけではないからこそ、もう子供じゃないと実感したとき、戻れない過去と変わってしまった自分に愕然とするのである。

しかし、この歌は切ないだけでは終わらない。今までに何かを残してきたはずだ、という確信を「偶然なんかじゃないよ」「宇宙の意思があるとしたなら 確かに働いたんだろう」と、ロマンティックに、壮大に描写する。「ここにある笑顔」は、無邪気だった頃の笑顔とは違うのだろう。それでもその笑顔は、「僕達は今最も永遠に 近い場所にいる」と教えてくれるのだ。

この「最も永遠に近い」という言い方が絶妙で、例えば『LOVE ~Destiny~』には「永遠なんてない」とあったし、『Duty』での「未来ではなく過去にある“それ”」の正体は“永遠”ではないかと噂された。『fairyland』においては、過去に縛られる様子はない。大人になった「僕達」が「最も永遠に近い場所」と呼んでいるのは何処だろう?大人にも「夢の国」はあるのだろうか?

PVでは、彩り鮮やかな南の島の海辺や森で、あゆが仲間達と楽しげに踊っている。楽園のような空気は一転、後半では火事が起きてしまう。このとき、一人だけ逃げずに炎を見つめるあゆが何故か恍惚としており、更に「最も永遠に近い場所にいる」と歌われるので、何とも意味深だ。ジャケットが全体的に金色に輝いているのは、朝焼けか夕暮れか、それともこの炎なのか?

 

 

歌詞リンク: 浜崎あゆみ fairyland 歌詞 - 歌ネット

 

 

alterna

作曲:萩原慎太郎、佐々木聡作

編曲:CMJK

 

現実の中でも夢を見せてくれるのが『fairyland』なら、まごうことなき現実を鋭く突きつけるのがカップリングの『alterna』だ。ソリッドなロックに、ストリングスやデジタル音が迫るように絡む。あゆのヴォーカルには時折フィルターがかかり、割れたような音を演出する。

「変化を恐れるのなら 離れたとこで見ててよ」と、出だしからいきなり突き放す。鎧のようにまとっていたものは飾りに過ぎず、「必要なモノなんて ほんのちょっとだけ」と気付いた主人公。必要以上のモノは、かえって喪失感をもたらしてしまう。自分が欲しいものは何か、取捨選択して生きてゆく中で何かが変わるなら、それは必要な変化なのだ。『fairyland』で、無邪気なままではいられないことに一抹の哀しさを描いたと思えば、こちらでは変化を全くもって肯定し、迷いを跳ねのけるかのようである。

「こわいモノならもうじゅうぶん 見尽くして来たんだから」という歌詞には畏怖の念さえ抱くだろう。初期の頼りない孤独感から、立場が変わっていく中での絶望を経て、あゆはこんな境地に至った。「何かしたってしなくったって 結局指さされるなら あるがままに」という言葉には、スターのような立場でなくても共感できる。

我々聞き手も、あゆが進む道を覚悟しなければならないだろう。あゆは歌い続け、変わり続けていく。それを恐れるなら「離れたとこで見る」しかない。

PVはグロテスクでショッキングな内容で、『ourselves』のPVを思い出させる。操り人形と化したあゆが演じるのは、スターを夢見る女の子。彼女にチャンスが舞い込むが、恐ろしい結末が待っていた。ひととき愛でられた後、あっさりと捨てられるその様は、スターである自分への皮肉だろうか? 歌詞をPVに当てはめると、「私に飽きたらどうぞ捨てて構わない」というメッセージとも、「誰にも操られず自分の意思で生きたい」というアンチテーゼとも取れるかもしれない。様々な解釈をしたくなる。

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ alterna 歌詞 - 歌ネット

 

 

 

 

新時代の幕開けを挟んだ10連休が終わってしまいましたね。皆さん、どのように過ごしましたか?

五月病」というものがありますが、あまりお休みが長いと、かえって日常を取り戻すのが大変かもしれません。

焦らず無理せず参りましょう。あゆの歌を味方にして🎶

35thシングル『STEP you/is this LOVE?』

両A面シングル。DVD付盤のDVDには、この2曲と、6thアルバム『MY STORY』収録曲の『my name’s WOMEN』のPVが収録されている。ジャケット及び歌詞カードはバイクにまたがるクールなあゆ。黒とピンクのコントラストがキュートだ。

 

 

STEP you

作曲:原一博

編曲:CMJK

 

ロックをあゆ作品の一つの路線としてから、楽曲の発表を重ねるうちに、ロックの中だけでも様々なテイストの作品が生まれている。この『STEP you』はエレクトロニックの要素が強く、適度な重心を保ちつつもスタイリッシュな印象だ。

歌詞の内容は、場面を限定しすぎない「愛」を描いてきたあゆには珍しく、片想いのときめきに焦点を当てたものとなっている。「あたし」というこれも珍しい一人称や、「君の事を知って行きたいの」「ほんのちょっとでいいから あたしの事を想い出して」「笑顔独り占めしたくなるかな」という率直な言葉が、この上なくキュート。

サビの「1.2.3.4」「1.2 STEP you」という部分は、「君」への想いを募らせていく様子を表すと同時に、楽曲の上では絶妙なリズム感をもたらしている。あゆの歌詞は言葉そのものの重さや言い回しが印象的だが、この作品ではこうしてリズムの良さをもたらす表現が見られるのだ。「wow wow」や「yeah yeah」という感嘆詞の多用もリズムを引き立てる。

恋は上手くいくことばかりではない。「あたし」は「このへんで諦める? それともがんばっちゃう?」と悩むこともあるようだ。そこは是非とも「がんばっちゃう」方を取ってほしい。

PVは、退廃的な景色の中、5人のあゆが登場する。見た目もキャラクターもそれぞれ違うあゆが面白い。

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ STEP you 歌詞 - 歌ネット

 

 

is this LOVE?

作曲:渡辺未来

編曲:HΛL

 

片想いを楽しむ『STEP you』と打って変わって、こちらは苦しい恋だ。緊迫した様子の出だしから、ハードなロックへと突入。イントロとアウトロの張り上げるヴォーカルは、やるせない思いをぶつけるかのようにも聞こえる。

「あなた」の視線の先にいる、幸せそうな「彼女」。あまりのことに「私」は、その衝撃を受け止め切れず、「ただ立ち尽くして」しまう。今まで見た事もないような様子の「あなた」を、遠い存在に感じた瞬間だった。一方「あなた」は、時々「悲しい瞳(め)」を見せるらしい。「彼女」との仲が必ずしも上手くいっていないのか、それとも別の問題か、その点は聞き手の想像次第だが、いずれにせよ、「私」が「あなた」に出来ることはないようだ。

直接口に出さずに飲み込む「どうして私じゃないの」という問い掛け、「あなた」に惹かれる気持ちを何とか誤魔化そうとして感じた虚しさ。主人公はあまりにも切ない形で、「恋」というものを知ってしまう。「感じたの」「呼ぶのかな」「恋だって言うのね」という言い回しは、本音をこぼす様子が伝わってきて、ヒリヒリさせられる。

PVは、部屋に一人でいるあゆを映している。あゆは悲しげに歌っているだけだが、内に秘めた激情を表すかのように、部屋がひとりでに崩壊していく。

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ is this LOVE? 歌詞 - 歌ネット

 

 

my name's WOMEN(PV)

 

出だしは自信のなさそうな、冴えない様子で登場したあゆが、突如変身。セクシーな衣装で鞭を振り回しながら踊り出す。刺激的でカッコいいパフォーマンスに、観客はだんだんと魅せられていく。“女性”の持つ強さや意志を表現した楽曲に相応しい内容だ。

やはり“女性”がテーマだった『Real me』のPVと同じく、TRFのCHIHARUさんとETSUさんが参加している。

 

 

 

 

今日から「令和」の時代が始まりました!

新しい時代も、あゆの作品を楽しみ、応援していきましょう💝

リミックス・アルバム『MY STORY Classical』

6thアルバム『MY STORY』の収録曲を抜粋し、クラシックにアレンジしたアルバム。世界的な指揮者である佐渡裕さんが指揮・監修を担当し、パリ・ラムルー管弦楽団が演奏した。オーケストラアレンジにより、楽曲の持つ新たな魅力が引き出されている。

なお、原曲のヴォーカルが入っていない楽曲があるが、歌詞カードには原曲の歌詞が掲載されている。

 

 

WONDERLAND

編曲:奥慶一

 

編曲に際して演奏時間が長くなっている。原曲の持つ可愛らしさはより優雅に、恐ろしさはより迫力を伴ったアレンジ。

 

 

Moments

編曲:渡辺俊幸

 

全体的にはしっとりと静かだが、反面、サビは劇的で迫力がある。

 

 

HAPPY ENDING

編曲:村山達哉

 

おしゃれな雰囲気の中に憂いが漂うアレンジ。原曲で特徴的な、細かく刻むフレーズは中盤を過ぎてから登場する。

 

 

GAME

編曲:島健

 

チャイコフスキーなどの要素を感じるアレンジで、マッシュアップのようにも聞こえる。原曲は攻撃的なロックだったが、激しさはそのままで、悲愴感や哀切が強調されたイメージ。

 

 

HOPE or PAIN

編曲:斎藤ネコ

 

メロディーやフレーズは原曲のものをほぼそのまま使っている。リズムを刻むストリングスが切々と胸に迫る。

 

 

Kaleidoscope

編曲:三宅一徳

 

編曲に際して演奏時間が長くなっている。「万華鏡」の世界が新たな模様を見せたかのように、ドラマティックな展開である。

 

 

CAROLS

編曲:武沢豊

 

哀愁漂うギターの音色が印象的で、全体のロマンティックな雰囲気と絶妙に絡み合う。曲が進むにつれて盛り上がっていく構成となっている。

 

 

walking proud

編曲:大島ミチル

 

原曲の空気を保ちながら、サビののびやかさがより大きなスケールで引き立つアレンジ。

 

 

Catcher In The Light

編曲:大谷幸

 

MY STORY』ではワンコーラス分の長さだったが、フルコーラス相当に延びている。ヴォーカルは入れておらず、歌詞のあった部分はメロディーだけで演奏される。長くなった分、様々な展開が現れるドラマティックで冒険あるアレンジとなり、ヴォーカルがないとは言っても、原曲にあった短い歌詞のメッセージ性が確かに感じられる。

 

 

HONEY

編曲:村山達哉

 

軽快なアレンジで、原曲のキュートなイメージが表現されている。

 

 

winding road

編曲:Hiroyoshi Nagayama

 

原曲のゆったりした感覚が、より壮大で力強く、広がりを持ったものとなるアレンジ。

 

 

A Song is born

編曲:渡辺俊幸

 

ボーナストラックであり、本来は『I am...』の収録曲。ヴォーカルは入れていない。歌の部分をかなりアレンジしたようなメロディーも聞こえるが、この曲をバックに元の歌を歌うこともできそうだ。原曲の持つメッセージ性はオーケストラアレンジにぴったりだが、劇的になりすぎず、語りかけるような優しさも残した作品となった。

『MY STORY Classical』について

当ブログでは原則リミックスを扱わないのですが、リミックス・アルバム『MY STORY Classical』は例外的に記事にします

 

 

そもそもなぜリミックスを記事にしないか?

基本的にリミックスは原曲から大きく形が変わり、同じ歌詞を繰り返したり、歌詞と歌詞の間が引き延ばされたりと、実験的な内容です。故にリミックス用の歌詞カードも付けられていません。そしてユーロビートやトランスのような楽曲は、もっぱらダンス・フロアを意識したものでしょう。

もちろんそれも一つの作品ではありますが、「この歌詞が繰り返され、この部分が引き延ばされた踊れる楽曲です」という紹介では、「あゆの綴った言葉を中心に作品世界に迫る」というこのブログのコンセプトからは、どうしても外れてしまいます。

 

ただ、例えばベストアルバムはほぼそれまでに紹介した曲なので、やはり新しく紹介できることはほとんどありませんが、オリジナル楽曲を扱った作品集ではあるため、そのベストがリリースされた意味合いの考察なども含めて記事にしてきました。

また、シングル曲がアルバム収録の際にアレンジされていたり、逆にアルバム曲がシングルカットされたりしたときも、アレンジの違いなどに触れてその都度記事を書きました。

バラードを集めたベストアルバム『A BALLADS』は、かなり多くの曲が新しいアレンジだったので、それも紹介しました。

 

MY STORY Classical』は、一貫してオーケストラが参加するという規模の大きい企画であり、CDには歌詞カードも付いていました。楽曲は概ねオリジナルと同じ構成・展開のまま、オーケストラ版にしたものでした。

よって、リミックスと言うよりは、アレンジの範疇になると判断し、記事にすることにしたのです。

 

あゆはこれ以降もクラシカルアレンジのアルバムを発表していますが、それらも同様に扱い記事にしていく予定です。

 

 

ところで、リミックスの中にも「Acoustic」とか「Orchestra」と付いているものが多くありますが、『MY STORY Classical』の収録曲のように、オリジナル楽曲の形をほぼそのままクラシカルアレンジにしたような形になっていますね。『Dearest』の「“Acoustic Piano Version”」はシングルではボーナストラックの扱いで、テレビなどでも盛んに披露されました。

「Acoustic」や「Orchestra」と名前の付くリミックスがコンスタントに作られてきたことが、もしかしたら『MY STORY Classical』の基盤になったのかもしれませんね。

6thアルバム『MY STORY』(後編)

〔『MY STORY』の記事 【前編】 【中編】 【後編】

 

Kaleidoscope

作曲・編曲:HΛL

 

サラサラと小さなカケラたちが流れるような音と、鏡のようにキラキラした音が重なり合うインストゥルメンタルHΛLさんの透明感ある演出で、次々と表情を変える幻想的な世界が現れる。

ゆっくりめの楽曲が続き、絶望から希望が見えてきたところで、このインストゥルメンタルを挟み、次からはアップテンポの曲が続く。

 

 

INSPIRE

33rd シングル。当該記事を参照。

 

 

HONEY

作曲:湯汲哲也

編曲:HΛL

 

「愛しい人」への気持ちを素直に可愛らしく表現した、明るいポップス。歌い上げるあゆの声も「ハチミツ」のように甘い。

うまく行かないときに、傷つけてしまっているかもしれない人。うまく行っているときには、その人が「一緒に泣いてくれた」ことを思い出す。日常の中で、当たり前のように側にいる人の大切さを、改めて「私」は感じているようだ。「私よりもずっと私の事知ってる」と言えるのは、「誰よりも側にいる」その人が「私」を受け止め、前向きに導いているからだろう。そんな私もまた、「君の事なら君よりずっと知ってる」と言う。二人の親密さが伝わる表現だ。サビの「my HONEY」という呼びかけにも、真っすぐな愛しさが溢れている。

思わず微笑んでしまうような、素敵な「私」と「君」の関係。その甘い甘い日々が続いていくことを願おう。

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ HONEY 歌詞 - 歌ネット

 

 

Replace

作曲:菊池一仁

編曲:HΛL

 

明るくも切なく、そして清々しい感動に溢れた、ミディアムテンポのポップス。ライブの終盤に相応しいのは言うまでもないが、歌詞の内容と曲調は、卒業などの旅立ちを彩る歌としてもピッタリだ。

「君に届くようにと こうして歌い続けているよ」と、爽やかなサビから始まる。それぞれの道に進もうとする「僕達」。それはずっと想いを馳せていた未来で、いざ目の前にすると「シュール」な感じがしてしまうほど。旅立ちに際して「僕」は、「君」に「諦めないで歩いていてね」と呼びかける。「君が笑っているといい」と願う。

この作品に希望が満ちているのは、「また逢える時」を見通しているからだろう。別々の道を歩んだその先で、笑顔の再会が待っている。決して悲しいだけの別れではない。ライブで歌われる際には、次のライブも楽しみにしていてほしいというあゆの真心が感じられるはずだ。「これからもこの道は続いて行く」と、歩みを止めないことも宣言している。

そして、会えない時間があっても「ひとりじゃない」というメッセージを、「僕」は「君」に伝えるだけでなく、「君」から「誰か」へと伝わっていくことを願っている。自分の道を進む上で、別れもあれば、新たな出会いもあるだろう。再会する頃、見える世界は今よりももっと広がっているはずだ。

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ Replace 歌詞 - 歌ネット

 

 

winding road

作曲:CREA

編曲:HIKARI

 

ゆったりと静かな感動を揺り起こすバラード。マラソンの終わり、やっとゴールが見えてきたような達成感がある。もっとも歌詞においては、どこかに留まるわけではなく、「これからも胸を張ってこの道を行くさ」という決意表明までつながる内容となった。

過ぎてきた道のりを振り返る「僕」。ずっと走り続けてきたのは「歩き方を忘れた」からで、それを「飛び方忘れた鳥」に例えている。足跡は「いびつで泥だらけ」、しかしそれを悔やむことはなく、「心から誇りに思ってる」と言う。

あゆが置かれた目まぐるしい状況や、その心境が伺える楽曲はこれまでにもあった。しかしこの『winding road』に描かれているのは、『too late』の戸惑いでも、『vogue』の無常観でも、『I am...』や『Naturally』の悲壮感でもない。「誇りに思う」という、この上のない肯定の言葉である。そして「これからもこの道を行く」とまで言い切る。「ねぇ」の呼びかけや、「足跡はさ」「悔やんでなんかないよ」「思ってるんだ」という言葉はやわらかく、親しみやすい。印象としては、はっきり誰かに向かって歌っている『Replace』に比べると、自分自身に語っているとも取れる余地がある。

最後、歩き出せた「僕」は、「飛び方忘れた鳥」のことをもう一度歌う。冒頭で自分を鳥に例え、終わりにその構図を逆転させる表現が見事で、晴れやかな印象を残すだろう。

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ winding road 歌詞 - 歌ネット

 

 

Humming 7/4

作曲:CREA

編曲:久保田光太郎

 

タイトルの「7/4」は、4分の7拍子になる部分があることを表している。意表をつくリズムに、アルバム一と言ってもいいほどヘヴィーなサウンドを合わせたロックナンバーだが、サビは快活に「everybody GO! everybody JUMP!」と聴衆を煽る。PVでも、ジャングルジムのように入り組んだ舞台の上で、思い切りパフォーマンスをするあゆが見られる。

ポジティヴな空気に包まれた歌ではあるが、一見さっぱりとした歌詞はなかなか意味深だ。「そこから見える景色はどんなか」と尋ねられた主人公の「僕」は、多くを語らない。「説明するだけムダさ」とある種、達観している。「期待された答え」を察しても、それを口にするわけでもない。デビュー間もないときも、スターダムに駆け上がってからも、あゆの歌詞にはその時その時の苦悩や孤独が描かれてきた。あゆはどんな景色を見てきたのか? 「誰にわかってもらえなくたって」「否定しないでよ」にはうっすらと悲哀も漂う。

とは言え、「泣いても笑っても 同じなら笑っとこう」「もっと高く飛べる だって翼がある」と、突き抜けていくようなサビにためらいはない。「鼻歌」のような軽やかささえ感じられる。

アルバムとして、『Replace』で清々しく終わるのも、『winding road』でゆったり終わるのもおかしくないが、実際はこの曲で思い切り弾けて終わる。クールな出だしから、ダークな楽曲を経て希望を見出し、興奮を最高潮にしての終幕。描かれてきた「物語」の完結である。……もちろん、あゆの歌がこれっきり、というわけではない。一つの物語が終われば、また新しい物語が始まるのだ。

 

 

歌詞リンク:浜崎あゆみ Humming 7/4 歌詞 - 歌ネット